夜明ユリ

Xアカウント(@yorugaowaru1218)夜明ユリ Xアカウント(marble1…

夜明ユリ

Xアカウント(@yorugaowaru1218)夜明ユリ Xアカウント(marble1218)ユリイカ のふたつです。

マガジン

  • 炭酸ソーダの水荘|交換日記

    • 22本

    世界の終りと平成ノート・ワンダーランド|平成最後の五月雨が降る日、僕らは遺書みたいに濡れて空を見る。これは、僕らが書く交換日記だ。|ツイッターの文章書き達がnoteで描く珠玉のエッセイ集|#交換エッセイ集

最近の記事

10月のサンタクロース

どこかさみしいところへ行きたい 10月のサンタクロース そこはかとなくエヴァーグリーンの草原の匂い 枯れ葉のあたたかな温もり 紅茶の眠る音 空を悠々飛ぶ飛行船 真夜中に聞くとおくとおくの列車の音 パズルピースひとつなくした そんな気分でトナカイの毛並みを撫でている 冷えた夕風ゆらゆら吹いて 真っ赤な落陽が心臓のようで 10月のサンタクロースの涙の粒がひとつぶ パンジーの花びらに落ちていった ウイスキーこぼしながら昔の恋人を思い浮かべる 10月のサンタクロースの悲しい気配が 古

    • ありったけのこれっぽっち

      しずかにひとをあやめて 見渡す星空は 砕けた鏡みたいに 星がぜんぶ落ちてきそうな そんな あたたかな 光だったか なみだにうつる ヘッドライトが 強い眩暈のように ぐるぐる回転している 僕の 体温は 青い熱だったか ラベンダーの匂いがする なんだか懐かしかったんだ 悲しいくらい 優しい匂いで こじんまりとした駐車場に野良猫 僕はありったけの これっぽっちしかない優しさで その野良猫を撫でてやった 最後くらい 優しい日でいよう 最後くらい 優しい人でいよう

      • 野良猫の足音

        野良猫が走っていく足音は 宇宙のメロディとおんなじなんだ 月の匂いに誘われて走ってゆく とぐろをまいた雲がぐるぐる流れて 野良猫は澄んだ目でそれを見上げた 野良猫には終わらない野心があって 白い牙と果てしない嗅覚で辿り着いた 銀色の森深くにある湖で水を飲むんだ その先にある向日葵畑で眠る為に 虹色の光を帯びたコガネムシを食べて 毛並みに夜明けの風を染み込ませる 耳をよおく欹てて朝焼けの中 鳥の囀りを記憶する ずっとずっと途方もないままだった ただそれがとても居心地いいんだ

        • キッチンと月夜

          真夜中、家族が寝静まり返った頃。君と私は、遠くの月を違う場所から眺めていた。私はキッチンの窓から。君は忍び込んだ学校のジャングルジムのてっぺんから、同じ月を見上げていた。無言のままなのは、月を見あげている証だった。 すると君はぽつり、と小さな声でこう言った。 「ムーンリバーって曲、好きなんだ。」私は聞き返した。 「オードリーヘップバーンが歌っていた曲?」 「そうさ。」とまた小さな声で君は言った。 それからというと、私たちはお互いムーンリバーの曲を着信音にした。君から電話がかか

        10月のサンタクロース

        マガジン

        • 炭酸ソーダの水荘|交換日記
          22本

        記事

          ぴかぴか新緑一年生

          野生のスミレが居眠りしている ハ長調の陽気な曲に包まれて 学校はゴールデンウィークで休みだから 木洩れ日もうんと伸びやかにしている 無数のひかりの泡 キーンと透き通るひかりの音が鳴り響く ぴかぴかの新緑一年生 勉強も宿題も初めてなんだ 苦手な科目は嵐の日の過ごし方 強風から身を守る勉強かなぁ 4つ葉のクローバー‪になれなかったって 3つ葉のクローバーは悲しげにしている モンシロチョウはそっと励ます 足りないことはすてきなことよって あたまのなかの花畑 わあわあはしゃいでちょい

          ぴかぴか新緑一年生

          てんとう虫と青いアネモネ

          駅のホームでぽつん、と花が咲いている 母の姿は、青いアネモネ 澄みきったかなしみが身体中に染み込んでいる 帰郷した日にはいつもあたたかな炊き込みご飯 ずっと変わらない味を噛みしめる こころのぶらんこをやさしく揺すってくれる お見送りをしてくれる青いアネモネの ちいさな肩に風が吹いていた わたしの目は視界が震えていて またいつでも来なねと微笑む目尻の 皺は桜色をしていて また春になったらねと精一杯微笑む わたし達の頭上は今にも雨が降り出しそうだった 発車時刻三分前の光と影を胸に

          てんとう虫と青いアネモネ

          よおく見てごらん

          水平線をやさしく結って 国境を飛ぶ空色の手紙 みんな水飛沫みたいに 空中で遊んでいる 夕刻の浅い波間で 海を渡ろうやさしい歌で 海底の魚も踊るくらいにさ まあるいびーどろ そんな星に生まれたよ よおく見てごらん 海の色は何色 お絵描きした指は何色 争いのなか手を洗う水は何色 握手した手は何色 今日の空は何色 道端の花は何色 食べた料理は何色 涙は何色 眠りにつく時の部屋は何色 夜明けの空は何色 恋人の瞳の色は何色 昨日のこころは何色 今日のこころは何色 へいわって何色?

          よおく見てごらん

          swing fish

          薄べったい風が吹いている汗っかきの五月 ジグザグ運転で転げ落ちた夢見がちな魔法使い アイボリーの雲も色褪せず祈っていた あの木陰のシロツメクサが待ちぼうけしている はるか彼方の夢を編んだよ 固結びの悲しみも一緒にね 疲れ顔の君の泪のエンドロールを探していた 同じ名前が流れてきたらきっと叶うはず 届きそうで届かない引っかかった風船 よじ登って取ろうとしたら 飛んでいってしまうみたいに 何処までも 広がってゆく 何処までも 澄んでゆく 彩る青を内側に秘めた この胸に泳ぐ魚を見て

          見ず知らずの人に怒り散らすくらいの 傷口が痛みさらす人間のはけ口を 嘲笑する人間の目は虚空で空虚に飛ぶ鳥を 見逃して 鳥の羽ばたきに夢見がちな 少年の硝子玉みたいな眼差しは割れかかって 今にも羽根が生えそうで ちいさな風でも吹っ飛ぶ種子のような春の息には 泪さえも零れないが 爆発ばかりが起こる世界の映像には 泪と赤い血液が流れている人間が 心を攫う春の夜風に追い越されて 桜吹雪の中を歩いて遠くに行きたがる さようならするにはあまりにも暑過ぎる春で 窓からしか眺められない桜の

          カエルのお留守番

          時も忘れてしまいそうなくらい 長い長い雨が降り注いでいます 一匹のちいさなカエルは 睡蓮の葉っぱを雨傘にして お留守番をしていました 辺りは一面睡蓮の花々が しとやかに咲いていて 仄甘い香りがカエルの鼻先に ほんわり漂いました おなかのすいたちいさなカエルは ぐうぐう鳴るおなかの音が恥ずかしくて ケロケロと鳴いて おなかの音をごまかしたりしました とおくへご飯を探しに行った 父さんカエルと母さんカエルは まだまだ帰って来ませんでした 雨雲に覆われた だだっ広い灰色の空

          カエルのお留守番

          糸雨とチェリー

          静かな糸雨 雨音がとおく優しい真夜中へ ようこそいらっしゃい 頭のなかを冷静にさせてくれる ちいさくてやわな魔力に 思わず目をとじる 洗いざらしの夜の町が鈍く光っている 息を潜めて雨音を鼓膜に焼きつける者の 冷めやらぬ深く青い熱情が降っている 首すじから垂れ流れるちいさな海 かなしくってくるしくって チェリー色の目でとおくとおくを見ていた あたしの夢路の果て 静かな糸雨 ささやかな約束は待ちぼうけ 両手をそっと差しだした 指切りげんまんをした小指がそぼ濡れる もうじき夜が

          糸雨とチェリー

          クオンの実

          白い墓の傍らでひっそり クオンの実を食べた 互いの心臓を明け渡すように ふたりきり分け合って食べた ヒカリの鳩たちが そぞろに誘われて飛んでやって来たので 星の破片ほどの クオンの実をあげた ヒカリの鳩たちは 羽根を脱ぎ捨てて 人の形になったり 鱗が生えて魚になったりした ふたりは長い長い間冷えきった唇を重ね合った ずっとずっとはなればなれだったから しだいにふたりのからだは ひとつの木となり クオンの実をたわわに実らせた とおい昔に繋がっていたであろう星座が消えた 星の

          クオンの実

          草原

          過去に書いた自作の詩を朗読しています。 よかったら聞いてください。

          WEEK END

          自作の詩を朗読しました。 よかったら聞いてください。

          孤島のピアノ

          孤島に忘れ去られたピアノがある 音色はバラ色で些かやわな棘があった 黒鍵に乗った鴎が一羽 羽のないおはなしをする やっと見つけてくれたから ピアノは嬉しがって鳴いた 悲しいことにわたしは ピアノがうまく弾けない ただ指を静かに置いて ひとつひとつの鍵盤を順番に奏でた ピアノはずっとわたしの指を見ていた ピアノはからだで感じていたのだ わたしの指の感触を 息をしている ピアノもわたしも それから一緒に眠ったり 落陽を眺めたり 夜明けの空の下でたくさん ピアノのからだを触

          孤島のピアノ

          One

          夕暮れ近く 誰もいない遊園地 観覧車とメリーゴーランドだけ 廻っている ここに住もうよって 君は笑っている よろこんでと 手を握る アンティークローズの花束かざして 真夜中の彗星の尾っぽ追いかけた ラム酒のチョコレート食べたあと キスをした夜明けの雷音 アロワナ雲泳いでいた 渇いた喉で何処まで走ろう からっ風に吹かれながら 絡まない赤い毛糸転がしながら クモの巣が踊っている嵐の日に ブレーカーの落ちた部屋で 抱きしめ合う透明なからだ 愛してるも言えないくらいの力強さで