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100の綴り:ベッド
広い、広いベッドには洗いたての、お日様の匂いがする白いシーツが敷いてある。私はそのシーツの上に寝そべり、太陽の光を浴びていた。開け放った大きな窓から吹き込む風が皮膚の上の温かさを優しく奪っていく。私はなんとなくぼんやりと、大切な考え事をしていたのはずなのに、気付けばいつの間にか違う別の事を思い出していた。きっと、私が吸血鬼だったらとっくの昔に灰になって風に飛ばされてしまっていたに違いない。なんて
もっとみる100の綴り:包丁※ちょっと残酷
まぁ、その私という奴はどこにでもいる、どこにでもいない少女だった。最早少女と呼べる年齢だと断言できないあたりも悲しい。およそまあ、普通より少し裕福な家庭に、まあ普通より少し美しい両親のもとに産まれ落ちた私はなんというかまあ、普通より少し可愛かった。少しだけ。それは蝶よ花よと育てていた両親もわかっていて、だからこそ可愛いといいながらもその反面あれができない、これができないということでバランスをとって
もっとみる100の綴り:燃える
「あなたは、臆病者だわ。これっぽっちも救われたいと思ってないのに、そうやっていつまでも被害者面でいるのよ。」
彼女のその言葉にかっとなり、白く細い腕を掴んでベッドに引き倒す。おびえるでもなく、怒るわけでもなくただ真っ直ぐな射抜くような目にこちらがひるんでしまうほどだった。それでも、力をこめて腕を掴み彼女の表情を無理矢理に歪ませる。
「あんたに何がわかる。」
「わからないわ。だって、あなた何
100の綴り。:星座
私は数学がとても苦手だ。コサインやタンジェントそんなものわからないし、公式なんてちっとも頭に入らない。なぜなら、私はずっと先生を見ていたから。
「今日から数学の担当になる小林です。」
ものすごくかっこいいとか、スタイルがいいとかそういうのではなく、きっとこの人は私が一生かけても理解ができない人だと思ったのだ。窓を開けて心地よい風が入り暖かい日向の教室。春。その季節に私は先生と出会ったのだ