蕎麦がきが食べたくなって泣きそうな未来が右上にぼんやりと
「Okay, it's ok .」赤ちゃんをあやす声なら淡いむらさき
とうさんとかあさんそしていもうととちいさいいもうと、今なにしてる?
行列に並んですり足に進むまぶたが泥のように重たい
早朝に摘む花殻の湿り気を受け入れられぬ日の葉影かな
剃りすぎた眉毛の中に染みひとつなんだか少しうれしそうです
薄雲に影を失くせば肌寒き京都御所にて『篝火』を読む
水仙が咲かないままに枯れてゆく下腹の肉をもにゅもにゅつまむ
エキストラごときといえど繋がりに明日もベージュのジャケットを着る
ちくたくと大きなのっぽの古時計逝ってしまった子を追いかける
別れゆく線路の間にたんぽぽの幸せはあり綿毛を飛ばす
ジャスミンが一斉に咲きウエディングドレスに腕がするりと通る
明治時代の暗殺事件の人相書きに〈眼丸キ方〉とあり、捕まる
母となり一生母であることの瞬間地面を獣は蹴った 母となり一生母であることの爪先地上を永遠に離れて
小樽から帰りのフェリーに乗る前のお弁当屋が何度も浮かぶ
眠るまで水槽に浮く練習を明日の午後には止むはずだから