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映画感想2023

78
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記事一覧

映画感想『PERFECT DAYS』

最高に素敵だった! 登場人物同様、市井を生きる者としてこんな風に日々を描けるヴェンダース監督の才能を改めて感じて嬉しかったなぁ。 同じ様に繰り返されるだけに見える毎日はどの日も必ず過去とは違う。 人生は振り返る事も多いけど新しい今日を見つめる大事さが誰にもきっとある。 この作品を観て来たラスト、平山の車内に流れるニーナ・シモンの 『Feeling Good』にやはり感動はあった。 全編通して選曲は個人的にドンズバ! パティ・スミス、ルー・リード、ヴェルヴェット・アンダー

映画感想『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』

原題「WONKA」 美術や色彩の綺麗さ、ミュージカルだがそれを感じさせないテンポとキレ、ファンタジー溢れる世界感・・・。 単体で観れば楽しくてわくわくしてチョコレート好きなら絶対にどれも食べてみたくなる誘惑がある。 それにティモシー・シャラメ自身が歌って踊ってるしね!₍₍٩(ˊᗜˋ*)و⁾⁾ꕤ しか~し!なにせ“あの”ダークで一筋縄じゃ行かないキャラの前作があるのだ。 今作の監督がティム・バートンじゃない時点でまぁ別物だろうと思ってはいたけれどもさ。 私が観たかったの

映画感想『Winter boy』

原題「仏 LE LYCEEN / 英 WINTER BOY」 クリストフ・オノレ監督の実体験を元に作られた作品らしいが思春期の恋愛や父の死による喪失と再生が不安定な年代の心情に寄り添うように描かれていた。 劇中では一度だけリュカの口から触れられたがこの作品のカギは主人公のリュカだけが父親の死の真相に疑問を持つ体験をしていると言う事。 そのシーンをプロローグに持って来たのが素晴らしいしその体験の有無にこそ彼と家族との【父(夫)の死】への感情や向き合い方の違いが見て取れる。

映画感想『ナポレオン』

原題「NAPOLEON」 ただの軍人がフランス皇帝にまで上り詰めたと謳われるナポレオンの英雄譚を想像していくとちょっと「??」ってなるかも。 一方で戦略的カリスマ性を描きながらも妻ジョセフィーヌへの溺愛ぶりに焦点を当て、不甲斐ない彼の二面性を浮き彫りにするネガティヴキャンペーン開催中だったww そういう側面を知れる機会として観に行って良かったとは思うが・・・ 淡々と描かれるナポレオンと言う人物像に個人的にはちょいキモで好きになれない部分もあったがそこはリドリー・スコッ

映画感想『首』

北野武が書きビートたけしが演じる“裏から見た戦国時代” 「これが俺の解釈だ!」と叩きつける様な出来栄えだった。 面白かったのは監督が「いつもとは違う側面が見たい」と配した加瀬亮演じる織田信長の狂気に相対し自ら演じる秀吉と側近である弟の秀長と黒田官兵衛3人のシーンが全編通してアドリブ有りのコント仕立てな真逆さで描かれていた事。 この緩急が無ければ結構一般的にはハード感が倍だったかもしれない。 秀長を演じた大森南朋なんて結構笑いそうになってた感あるよ。 でも黒田官兵衛を演じた浅

映画感想『シチリア・サマー』

原題「伊 STRANIZZA D'AMURI / 英 FIREWORKS」 ジュゼッペ・フィオレッロ監督の初長編作なだけに荒削りな部分はあるが監督が”理解を見せないあまりに不寛容なこの世界”にぶつけたいメッセージは強く伝わった。 80年代のシチリア、2人の青年が出会い、惹かれ合い、幸福な時を過ごせば過ごす程…それが親密になればなる程彼等の運命は過酷な方向へ向かう。 身近に潜むフォビアの存在は命の危機をも招くのだ。 しかし物語は世間には予測しない援護や救済もある事を描く。

映画感想『Summer of 85』

原題「仏ETE 85 / 英SUMMER OF 85」 新聞で目にした或る記事から着想を得て執筆されたエイダン・チェンバーズの小説『Dance on My Grave(おれの墓で踊れ)』が原作。 まさかあのシーンが映像で観られるとは! そして私の中ではかなり名シーンの中に入るものだった。 ロッド・スチュアートの『セイリング』があれ程熱を帯びるなんて想像出来るか? 中盤のディスコ(今ならクラブだね)で流れるのと同じ曲なのに全く違う風に聴こえるのは主人公アレックスの心情の異

映画感想『ボーンズ アンド オール』

原題「BONES AND ALL」 人肉を喰らうカニバリズムを描きながらここまでピュアに描けるのか⁈ 異形と言う何処にも属せないマレンとリーのラブストーリーだがロードムービーの要素も加味してまるで青春映画の様でもある。 主人公の少女マレンをテイラー・ラッセルが演じてるのだが、彼女『WAVES/ウェイブス』の時に凄く良かったのを覚えてる。今作でも父親に見捨てられ、同じ運命を持つ母は施設に居る。たった一人で世間に放り出され生きる術を失うが時を経る内に僅かながら息を潜め生息す

映画感想『デシベル』

原題「英 DECIBEL / 韓 데시벨」 100デシベルを超えると直ぐに爆発するという仕組みではなく、先ずは起動させその後100デシベルを超える毎に爆破までの時間が短縮されるという設定なのが意外に緊迫感を生み出していて面白かった。 愉快犯と言うわけではなく犯人がその心境に至るまでの背景に在る、政府も絡んだ過去の潜水艦事故を描くドラマに比重が置かれ物語が進むにつれ心が揺さぶられる展開に! 潜水艦と言う機密が詰まった密室で行われた生死を懸けた選択。 その選択を迫られた指揮

映画感想『マーベルズ』

原題「THE MARVELS」 “三つ巴アクション”どうなるかな?って思ってたけど『THE MARVELS』ってタイトル(原題)も理にかなってるし、彼女たち3人が入れ替わるスイッチのスピード感がすっごく楽しかった。 それぞれが抱えたものへの向き合い方やそれに伴って個人&チームとしての成長と言うテーマも感じる。 【入れ替わりスイッチ練習シーン】がなかなか楽しそうだったな。 徐々に入れ替わりの技が成就していく様がなんとも可愛い(*^-^*) キャプテン・マーベルの過去の”

映画感想『ゴジラ-1.0』

英題「GODZILLA MINUS ONE」 【THE山崎貴版ゴジラ】だった。 ドラマ性重視の王道ストーリー。 ド直球で捻りなどは一切皆無だ。 ゴジラ70周年だから戦後と言うシチュエイションも納得。 直球王道過ぎて特別書きたいと思う事もほぼ無い。 ゴジラの咆哮と放射能と人間のネバーギブアップが余す事無く描かれてる。 恐らく涙する場面も用意されてた(と思う)。 ある程度の年齢だとグッとくる演出は割と含まれてるんじゃないかな? 深読みすれば唯一の被爆国で在りながら方向を

映画感想『SISU/シス 不死身の男』

原題「SISU」 大好きだよ~~~ヾ(≧▽≦)ノ 『ドミノ』を観た後にちょっとパンチが足りなくて(何の?ww)『マチェーテ』を見返したいななんて思ってたから丁度良かった・・・アドレナリン炸裂な超過激アクションが!ww。 影響を受けた映画はあれだなって明確に解る。 え~っと誰もが影響を受けとる『Django (続・荒野の用心棒)』ね。 タランティーノが登場した時も思ったものだよ。 生きる事を諦めない老兵vs残虐非道ナチスと言う構図が物語の展開に準じてナチスの怯えに変化す

映画感想『ドミノ』

原題「HYPNOTIC」 『催眠』と言う原題の意味知ってたら設定や内容はおのずと想像出来るけどそこはR・ロドリゲス、狙ってんのかヴィジュアル的に【クリストファー・ノーランのB級版】てな感じを醸す。 だから既視感はかなりある。 てかパクった?くらいの意識にはなるww かと言って面白く無いか?と言うとそうでもなくてずっと飽きずには観られるし俳優達のチカラが牽引して描き出される“催眠のシステム”に没頭は出来る。 途中から相棒となる占い師のダイアナだが彼女の設定になかなか旨味

映画感想『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

原題「KILLERS OF THE FLOWER MOON」 いやぁ、こんなお馬鹿ちゃん居る? てか、ディカプリオは壮大なお馬鹿演じさせたら右に出る者は居ないってくらいの地位を確立したな。 1920年代初頭のオクラホマ州、インディアンオセージ族の土地で石油資源が発見された後に起きた連続殺人事件を描いた実録ものだ。 冒頭から引き込まれる映像の作り込みにグッと来た。 特に石油が噴き出たシーンへの切り替わり!スローで表現される躍動感は美しかった。 80歳の御大が全精力を注いだ