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「そういうのも含まれとる、給料みたいなもん」

「好きな番組」
と言われて、真っ先に浮かんだのがこの言葉だった。

2023年3月、私の大好きだった番組が1つ終わった。
「家、ついて行ってイイですか?」「72時間」「YOUは何しに日本へ」といったドキュメンタリーが好きな私だが、そのなかでも1番好きだったのは「セブンルール」だ。

女性たちが、自分のルールを7つあげる。
その番組を見ると、自分の生き方を考えさせられ、輝く女性の苦悩を知り、明日への活力が湧いてくるような番組だった。

そのなかでも忘れられないのが、三重県紀北町で移動販売を続ける東真央さんの回だ。

高齢化が進み、移動ができないご家庭に向けて、移動販売で野菜やお惣菜を運ぶ彼女。仕事のことを考える時、必ず最後に見せた、彼女の顔が浮かぶ。


毎朝5時起きで仕入れをし、トラックに食べ物を詰め、時に町民の用事を済ませ、常連さんの家で朝ごはんを食べる。
お客さんたちを名前で呼び、肩を組み、そしてまた次の場所へ移動をする。

高齢化が進む紀北町の町民たちにとって、彼女は「頼らないと生きていけない」存在。
とはいえ、給料がいい仕事ではなく、代わりもいないので、彼女が休むこともできなかった。
そして彼女がいなくなることで、「生きていけなくなる」家族のようなお客さんたちの姿を思うと、とても辞めることなどできないだろう。

だけど最後に、トラックの前で彼女が言うのだ。

「お客さんがおるからこの仕事が続いとるし、頑張れるし、楽しいし。
大好きで、大事な人ら。
人から必要とされて、「まおちゃんおったら助かるんや」とか言われて、その辺ももう含まれとる。給料みたいなもん。」

休みもなければ給料も低い、その仕事は人から見たら「大変な仕事」になるだろう。だけど彼女にとっては、休みやお金は二の次なのだ。
人から頼りにされること、そして自分の力で大事な人たちを支えられることが、彼女にとっては何よりのお給料だ。

本来ならば行政がやるべき仕事だろう、というコメントも見た。
確かに、行政がやるべき仕事ではあるけれど、ただやればいいってものでもない。
人と人との関わりが、町の文化や歴史を作っていくのだ。

この回の録画を何度も何度も見た。
そして毎回、彼女の凄さに心を鷲掴みにされる。
私が仕事をするとき、彼女のような働き方ができているだろうか。
自分のためだけの仕事になっていないだろうか。
人の幸せを願えているだろうか。

難しい。
いつ振り返っても、「できていないな」と思う。

だからこそ、何回も何回も見る。
私のセブンルールを選ぶとしたら、「まおちゃんのおつかい便の回を見る」ことだ。


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