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とつげき隣のヒトハコさん9:距離感は程よく・遊びは真剣に「ひとつなぎBooks」

今回は、読酌文庫も参加している、みつばち古書部の部員のひとり「ひとつなぎBooks」さんのお話を伺いました。
(余談ですが、拙作『はなり亭で会いましょう』シリーズを愛読いただいているようで、いつもありがとうございます)
本を売る活動や楽しみ方のスタイル、さらには部員仲間との新しい活動なども聞かせていただいています。

人と人とをつなぐ本

――まずは、屋号の由来や決められたときの経緯があれば教えてください。

ひとつなぎBooks:「ひとつなぎBooks」は、みつばち古書部への参加が決まったときに急きょ考えました。

「ひとつなぎ」の由来は、「三陸ひとつなぎ自然学校」のお名前から真似ています。その当時、大学生の娘が授業で携わっていた釜石の団体で、こちらは震災後のボランティア活動からスタートされたところです。

それで「人と本を“つなぐ”」「本と町を“つなぐ”」、その先に「人と人を“つなぐ”」と、本をきっかけにそうできたら嬉しいなーと、その時の私の気持ちと重なっていると思い、拝借させてもらいました。

そして「ひとつなぎ」に続く肩書きというか名称は、私は本屋ではないし本を扱うプロでもないから、かたい感じではなく、でも本を扱っているのが分かる言葉として「Books」を選びました。

特に深みのある由来ではないですが、何となくシュッとした屋号になったかなと思います。

――その時のインスピレーションから、ちょっと含みのあるお名前になったんですね。書肆七味への出店では「幻月書房」という屋号で活動されていますが、こちらはどのような由来ですか?

ひとつなぎBooks:「幻月書房」は一緒に活動している相方が付けた屋号で、幻月という現象に因んでいるそうです。

幻月は月と同じ高さの並んだ位置に、虹のような光が見える大気光学現象で、上空の冷たい大気の中にある氷の結晶に、月光が反射して起きるそうです。

お店番システムに惹かれてみつばち古書部へ

――みつばち古書部や書肆七味での活動を始められたきっかけは何ですか?

ひとつなぎBooks:みつばち古書部の活動は、オープンして間もない頃、文の里商店街を通りかかったときに見つけて「え? 何なに??」と気になって、お店に入ったことからです。

その日、お店番をされていたパッキン堂書店さんにお店のことをお伺いして、その足で居留守文庫さんへ行き、参加するための詳しいシステムも伺いました。

本を出品するだけでなく、お店番もできる点に魅力を感じて、その2日後ぐらいには参加を申し込んでいました。

ちなみに「ひとつなぎBooks」を名乗る前、「オカダ家(け)」という屋号で、富田林の寺内町で開催されていたイベントへ参加していたこともあります。その頃は、遊びの一環のような感じで参加していましたが、振り返ってみると古本を売る体験の始まりだったように思います。

書肆七味への参加は「ひとつなぎBooks」ではない別のテイストがほしくて、相方に声をかけ、共同での活動にしました。屋号も相方に考えてもらって、「幻月書房」は相方が主体の活動でスタートし、今は2人でいろいろ考えながら活動しています。

――「ひとつなぎBooks」として活動される以前の、「オカダ家」で参加されていた寺内町のイベントは、どのようなきっかけで開催を知ったのですか?

ひとつなぎBooks:寺内町は知り合いがイベントなどに出店していて、ちょこちょこ遊びに行くようになったのがきっかけです。そのうちに、「手仕事と雑貨 23番地.」さんとも顔見知りになって……という流れで参加になったかと思います。

――知り合いが出ているイベントへ遊びに行くうちに、出店側になったという感じなんですね。
みつばち古書部と書肆七味に参加するほかで、現在活動されている場所やよく参加されるイベントはありますか?

ひとつなぎBooks:常設の出店はその2店だけです。

イベント参加だと、古書みつづみ書房さんが伊丹で企画されている一箱古本市などへは、「ひとつなぎBooks」「幻月書房」ともに参加したことがあります。あとは「幻月書房」で和田岬一箱古本市(兵庫県神戸市)や、天神さんで一箱古本市(京都府長岡京市)にも出店しました。

他にも香川へ遠征してみたりと……毎回特に「ここで」と決めて参加しているというより、その時のタイミングと雰囲気が合えば、出店させていただいている感じです。

古本仲間と参加した印象深い遠征イベント

――今まで参加されたイベントの中で、特に印象に残っているものはありますか?

ひとつなぎBooks:どのイベントも本当に個性があって、楽しくて、甲乙付けがたいですね。ただ、遠征したイベントには、泊まりがけで参加する特別感はありました。

また、鳥取の汽水空港さんが主催されたイベントはとても印象的でした。

――確かに、イベントごとに特徴や見どころがあって、選ぶのはむずかしいですよね。印象的だったという、汽水空港さんの催しに参加されたのはいつ頃のお話ですか?

ひとつなぎBooks:2019年10月13日で、この時は古本仲間と共同で参加しました。それぞれ前乗りで1泊して、現地集合です。

大型台風での雨風もあって、行けるか・行けないかのさなか、よく行って参加したなーと、今さらながら思います。もはや勢いでしたね。

イベントでは、不忍ブックストリートの代表で、『一箱古本市の歩き方』なども執筆されている南陀楼綾繁さんのトークイベントもあって、とても楽しめました。

あと、余談ですが鳥取の地酒もいただきました(笑)

好みの本を並べつつ、ときにはイベントテーマに寄せて

――出店されている棚やイベントに出るときの箱に詰められる本には、何かテーマや傾向はありますか?

ひとつなぎBooks:あまり偏らないようにしたいのですが、どうしても自分の好きなご飯や美味しい本、漫画、サブカルになりがちです(笑)

イベント出店時は来て下さるお客さんの層や土地柄、イベントのコンセプトがある場合は、寄せていくようにしています。

楽しみながらも押えるところは押えて、真剣に!

――一箱古本市に出たり、貸し棚で本屋さんをしたりといった活動の中で、気付いたことや変化したことなどがあれば教えて下さい。

ひとつなぎBooks:活動の中で気付いたことの一番は、距離感の大切さですかね。

活動していて気付いたことは、当たり前ですけど、いろんな人がいるということ。お客さんも古本仲間も主催者さんも。それぞれに踏み込んではいけない領域もあると、学んでいます。

そして「楽しむ姿勢」「欲を出さない」「多くを求めない」「感謝」が大切だと思います。

でも、押えるところはきちんと押えて、特に金銭面のやり取りはストレスがないようにして。

主催側のサポートをした経験もあるので、お店をやったりイベントを企画したりの大変さは理解していますし、少々のトラブルは許容できます。だけど、だからこそ気になることもあるので。

あと、「真剣に遊ぶ!」ってことも忘れないようにしたいですね。

変化したことは、年を取ると共に活動の中で経験を積んできて、いろんなことを穏やかに受け流せるようになり、お店番も出店も、のんびりできるようになりました。

仲間と一緒にモルックに挑戦

――本に関連したことでもそれ以外でも、今後、挑戦してみたいと思う事はありますか?

ひとつなぎBooks:最近、仲間とモルックを始めたので、上手くなって大会に出たいです!

本に関連したことだと、機会をいただければZINEへの寄稿も再チャレンジしたいです。あと、雑貨や飲食などをされている、違う職種の方との共同出店や、地方遠征もしたいですね。

モルックとは、フィンランド・カレリア地方の伝統的なゲームを元に開発されたスポーツ。下手投げで「モルック」という棒を投げ、数字の書かれた木製ピン「スキットル」を倒す。

――モルックはフィンランド発の競技だそうですが、始められたきっかけは何かあったんですか?

ひとつなぎBooks:「さらば青春の光」の森田さんがモルックをしていたのをテレビで見て、その時は「面白そう~」ぐらいに思ってました。森田さんは、モルックの日本代表になったことがある芸人さんです。

そのあと、交流のあるみつばち部員の元部員さんが「モルックしたい!」と呼びかけてくれて、「え? あの、モルック?」となり、道具も買ってみつばち古書部の元部員さんや現部員さんたちと活動する流れになりました。

余談ですがのちに、狩野英孝さんもモルック指導員の資格を持っていることも知りました。

――興味を持ったタイミングで、身近な所から話題が出ると参加しちゃいますね!
いつかは大会にも、とのことですが今の活動状況はどんな感じですか?

ひとつなぎBooks:月に1~2回は集まる予定で活動していますが、まだ始めたばかりで2回しか集合できていなくて……今のところは試合をして競技に慣れていく段階です。

――大人のサークル活動という感じで楽しそうですね。
もし、ZINEに寄稿する機会があれば、どんな内容を書いてみたいですか?

ひとつなぎBooks:モルック?(笑)

程よくやりつつ、みんなが一目置くスタイルが理想

――本関係の活動をされる中で、目標にされている方や憧れる方はいますか?

ひとつなぎBooks:あえて挙げるなら忖度なく、机屋さんですかね。本に関しても、何に関しても、すべてのことに程よくされているところが良いです。

めちゃくちゃ活発に活動されているわけではないのに、誰もが一目置いているとわかりますし、「あ、机屋さんだ!」ってなる。

今も交流のある方ですが、程よい距離感で接して下さるのがありがたいですし、私もそうでありたいなと思います。歳も近いし、初老あるあるの同志です。

後記

オープンしたばかりの頃のみつばち古書部を見つけて、今も参加されている「ひとつなぎBooks」さんは、読酌文庫からみると先輩部員さんです。
相方さんと共同でされている書肆七味の活動「幻月書房」も含め、穏やかに自分のペースで楽しまれている様子が伺えました。
イベントに参加するときや出店するときは一参加者として、守るべきルールや果たすべき責任に注意しつつ、全力で楽しみたいですね!

今回のヒトハコさん情報

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