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”超・熟成日本酒”がある謎のラーメン屋さん【覇通福(ハッピー)らーめん】へ

たとえば「フレンチ”なのに”、日本酒がおいしい」のような、「なのに」があるお店が気になります。それも演出ではなく、「なのに」が行き過ぎてもう止まらなくなってしまっているくらいの”偏愛さ”があると、堪りません。

今回は、かねてより「熟成酒がすごいラーメン店がある」と噂を耳にしていた「覇通福らーめん」さんへ、念願かなってお邪魔してきました。 ※「ハッピーラーメン」と読みます

ラーメン屋さん"なのに"熟成酒と料理がすごい、摩訶不思議な「覇通福らーめん」さんをレポートします!

お店のSNSはこちら!)

一見、よくある「町のラーメン屋さん」

普通…というか、むしろ風化が進んでいます

最寄り駅は名古屋駅から電車で30分弱の距離にある「いりなか」。観光的なエリアではなく、はじめて降り立ちました。お店の開店時間18時30分に訪問。この日、名古屋から東京に新幹線で帰る予定。なので1時間程度ささっと飲んで食べようという算段でした。

黒板のメニュー

ラーメンには白湯、マー油、そして豚骨もあるのですね。

カウンターの奥に通してもらいました

店内はカウンターのみ。ここまでは、いたって普通の「町のラーメン屋さん」といった様子。しかし、ふと顔を上げると…

うおおおお!

カウンターの上には、手書きの日本酒メニューがびっしりと貼られていました。すごいです。メニューは上の行から「超 熟成」「長期熟成」「人気銘柄」という分類がされています。本来身近なはずの「人気銘柄」でも、あまり他のお店では目にしないものばかり。未知のお酒たちに、ただただ圧倒されます。

…もう、この瞬間ですでに楽しいです。

おまかせの「一品料理」は意外なつまみの連続

こちらが店主。最初に「今日は何時の新幹線ですか?」と帰りの時間を心配してくれました

【POINT】レポートの前に、注文について。覇通福らーめんさんでは、通常のラーメンメニュー(先ほどの黒板のメニュー)以外に、おまかせの「一品料理」を予約制で提供しています。この日は事前にSNSのDMで「3000〜5000円くらいでおまかせ」とお願いしていました。

豪農の館 普通酒

最初にオーダーしたお酒は「豪農の館」。今日は未知のお酒にどんどんチャレンジしていきます。おつまみとなる一品料理は…

お出汁が香る、和の2皿がやってきました。ラーメン店なので「チャーシュー」とか「メンマ」とかかなと思っていたのですが、真逆のベクトル。丁寧でしっとりやさしい料理です。

店主「僕はもともと中華飯店の出だから、作ろうと思えばいろいろな料理ができるんですよ〜」とのこと。

予想外の料理に戸惑っていると、隣に居合わせた常連さんと思われる方が「ここは『お出汁』が評判なんです!」と教えてくれました。たしかに、やさしいお出汁が、落ち着いた普通酒とよく合います。これはいいです。

壁には日本酒蔵の前掛け。お店の奥だけ急に日本酒専門店の雰囲気です

お隣の常連さん、メニューに書かれた日本酒をほぼすべて飲んだことがあるそうで、「おまかせの日本酒ください」とオーダーしていました。すると店主は「●●の銘柄は飲んだことあったっけ?」「おもしろいのあるよ」と、お酒を(どこかからガサゴソ)見つけ出してきます。

…こういうの、いいなと思います。常連さんとお店という関係の中でも、「いつもの(覚えているよね?)お願い」より、信頼関係がある上での「(わくわくして)おまかせお願い」、というコミュニケーションに、単純に憧れます。

次は「東力士 極雫」
一品料理って一皿だと思っていたのですが、次々と料理が出てくるシステムなんだ…

次の料理は小鉢。ちびちびとつまみ、お酒をしみじみと味わいます。そうしていると、自分の腰がどんどん”据えられていく”のを感じます。さっと入ってさっと食べるラーメン屋さんのカウンターなのに。

店主「うちのお客さんの半分は普通にラーメンを食べて帰る人で、半分はお酒を飲む人。飲む人は2-3時間じっくり過ごす場合が多いんですよ。先ほど新幹線のお時間を聞いたのも、ゆるされるお時間の中でゆっくり楽しんでほしいので」

ええ、さっと帰れる気がしないです。もっと色々飲みたいです。

ちなみに、お店のカウンターの奥の方は「まったり飲むゾーン」で、手前は「さくっとラーメンを食べるゾーン」なのだそうです。

いよいよハッピー自慢の「熟成酒」と対面!

「88年」の文字と目が合いました
酒一筋 純米吟醸 山廃(1988)、酒一筋 特別純米酒 赤磐御町

いよいよ熟成酒。酒一筋1988年の熟成酒と、同じ銘柄の未熟成の2杯を飲み比べます。34年熟成の日本酒なんて、飲んだことないです。

ここで、覇通福らーめんと熟成酒の関係についてすこし説明します。

もともと、覇通福らーめんさんは「普通のラーメン屋さん」としてスタートしたそうです。ある頃から常連さんの要望を聞くかたちで「日本酒」を扱いはじめ、さまざまな酒屋さんに通うようになりました。そんなある日、店主が訪れた酒屋さんで「ちょっと(試飲で)飲んでみな」と勧められたのが「熟成酒」。これまで味わったことのない未知の味に衝撃を受け、熟成酒の取り扱いに注力することを決意したそうです。

店主はそれから全国の酒屋さんを巡って熟成酒を集め、さらには自ら日本酒の自家熟成にも挑戦。次第に覇通福らーめんは「熟成酒の品揃えがすごい店」として、日本酒好きの注目を集めるようになっていきました。

書くと数行ですが、傾倒ぶりがすごいです。

白和え。舐めると日本酒がどんどん進みます

ラベルのない超・熟成酒×和牛トマト煮のパンチ力

次は、熟成酒を「おまかせ」でお願いしてみます。

…ベッコウ色の液体
……読めない

なんだかすごい熟成酒がやってきました。外見も液体。(銘柄は覚えていないです。ただ、カラメル具合がおいしかったです)

……?

そして料理は「和牛の無水トマト煮&クリームコロッケ」。フォークとナイフでいただくタイプが出てくるとは想像すらしていなかったです。

「だから、僕は中華飯店出身だから」と店主。その中華飯店、ものすごいです。

席の横にあるラーメン屋さんセット。こういう環境で食べる&飲むものじゃないんだよなと思いながら写真をとりました

濃厚な料理と、カラメルのような極太な超熟成酒。この組み合わせはすごい。ラーメン全然関係ないけど、とにかくおいしいです。

〆はラーメン…ではなく「創作寿司」

(中華飯店出身の料理人がにぎる)寿司

お腹もいっぱいになったころ「最後にもう1皿」として「寿司」がやってきました。常連さん曰く「店主は、最近お寿司にハマってるから」とのこと。

店主「うちの寿司は、寿司職人が『これは寿司じゃない、けど美味しい』というんですよ〜」とのこと。食べてみるとシャリに味がついていて、これまで食べたことのあるお寿司とは違います。けど、たしかにおいしい。酒が進むうまさです。

食べながら笑ってました。全然わからないけどとにかくおいしいとき、人って笑ってしまうんだと知りました。

萬寿鏡 大吟醸 2009年

最後のお酒も熟成酒、13年もの。先ほどの超・熟成酒を見たからか、きれいな色に見えます。

摩訶不思議な熟成酒ワールド、それがハッピー

気がつくと、2時間以上、お酒も料理もたっぷりいただいていました。

見たことないお酒のラインナップに、数十年以上の超レアな熟成酒。料理は、お出汁香る前菜、濃厚な和牛のトマト煮、そして創作寿司…全然頭が追いつきません。後半からは考えるのを放棄し、笑って楽しんでいました。

ひとついえるのは、これまで知らなかった世界線にある、非常に楽しくおいしいお店でした。

「覇通福らーめん」さん、ごちそうさまでした。楽しかったです。また、名古屋にいく際にお邪魔させていただきます!

ラーメン、食べてないですので。


ちなみに東京にある「日本酒がおいしいラーメン屋さん」として、大島の5510さんもおすすめです。


※ラーメン店、酒販店ではなく、親しみをこめて「ラーメン屋さん」、「酒屋さん」と記載しています。



もちろん、お酒を飲みます。