チリチリ微発泡の雄 「澤屋まつもと 守破離ID39-1」 (美味しかった酒)

いつもお世話になっているカメラマンの布川さんより「転職祝いに」と「澤屋まつもと 守破離 ID39-1」をいただきました。ロケハン中に。ありがとうございます。

京都・伏見区にかまえる松本酒造は、僕の中で「流行の最先鋒をいく」イメージの蔵元さんです。(HPがまずおしゃれで海外向け仕様。素敵なのでぜひ見てください。http://sawayamatsumoto.com/)。そのなかでも蔵のコンセプトである「伝統を守り、新しい感性をもって、新境地を想像する」を体現しているのが「守破離」シリーズです。

いただいたお酒は、日本酒のアイデンティティである「お米」にスポットを当て、田んぼごとに醸して独立したIDをつける(●●エリアはID001という名前で出荷)意欲的なお酒。裏ラベルをみると「(兵庫県)特A地区 中東条地域 岡本(村名)」の山田錦100%とのこと。

日本酒ではお米を生産地から輸入(国内ですが)することが多く、
契約農家のお米や地元のお米を使うと、結構それだけで売りになったりします。ワインでいうドメーヌっぽい考えが日本酒で起きているのだと思うと、ラベルを読むだけで嬉しくなります。

この守破離ですが、グラスに注ぐとガラスの接地面にかすかな泡が見られます。この「微発泡」感が特徴。
スパークリング、とまではいかなくとも、口に含めば舌の上でチリチリとなり、やさしい甘みをぐいっとドライに振ってくれます。ただお酒が発泡しているというより、刺激をふくめてはじめて完成する、といった見事な調和具合。余韻にはかすかな苦味もあり、飲みやすいだけのお酒では終わらない個性もあります。
飲み始めからラストまで計算しているのかもしれないと、勝手に想像してしまいました。それくらい、各々の味の輪郭がはっきりしている。万人受けするも決して曖昧ではなく、メリハリがあるお酒です。

日本酒「微発泡」ですが、新酒の時期多くのお酒でみることができます。新酒の場合、多くは

・生酒(酵母が生きている)ため、発酵由来のガスが感じられる

ものですが、たとえ火入れしていても丁寧に処理をすれば酒のなかのガスを損なわずに酒に含ませることができます(タンクをじゃばじゃばやってるとガスが抜けちゃうそうです。とある酒販店の店長さんより)。

それを通年商品で実現し、ブランドの個性として打ち出した酒蔵のひとつが、澤屋まつもとさんなのです(あと風の森なんかも有名ですね)。

この「発泡」「微発泡」は、冷蔵設備・冷蔵輸送設備のないころの日本では一般消費者が味わえなかった「最近の味」であり、古くからのお酒の価値にはない切り口です。実際、お酒の評価を決める「新酒鑑評会」などのコンテストでは、発泡は口の中の「ひっかかり」として減点対象になります。

しかし2018年、市販酒コンペティション「SAKE COMPETITION2018」で、澤屋まつもとは純米酒部門GOLD(TOP10)に入りました。微発泡日本酒が上位に入るのは、これまでの成績からみても驚くべき(うれしい)変化だったそうです。(中の人たちに話をききましたので、これはきっと本当ですよ)

コンテストの常識にないお酒を市場に出し、それが支持されて、ついにコンテストの審査基準を変える偉業を成し遂げた……澤屋まつもとはそれくらいすごいお酒だと思います。

もちろん、ただパチパチしていればいいというわけではないです。SAKE COMPETITIONの場合では、2018年より「発泡によるマイナス採点をしない」という審査基準ができたそう。つまり澤屋まつもと最大の個性である「発泡」はマイナスにならずとも、決してプラスになっておらず、それ以外の「酒質」が評価されたということ。微発泡ありきなお酒なのにそれがなくても評価されるなんて、なおさらすごい。


きれいめのお酒はとりあえずワイングラスで…としがちですが、香りより微炭酸のパチパチを喉越しを楽しむため、薄めのおちょこでいただきました。

このお酒、おしゃれな雰囲気まとってますが、浅漬けととかとものすごく合います! サラダみたいにバリバリ進みます!

もちろん、お酒を飲みます。