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日本酒の「熟成酒」は、シルクのように上品!地酒屋こだま日本酒の会(大塚・きの字)

日本酒の「熟成酒」というと、「クセが強い」「飲みにくい」「濃そう」という印象がありました。

しかし、きちんとした環境で保管された熟成酒は、それはそれは「まろやか」で「綺麗」。「シルク」を連想する上品なおいしさが楽しめるものもあるのです!

そんな、熟成酒の概念が変わる「熟成酒の会」に参加してきました!
※枯れた紹興酒っぽい熟成酒も個人的には好きです

「こだま熟成酒で深まりゆく秋を堪能する会」

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東京は南大塚の「きの字」さんにやってきました。今回の会は、大塚にある地酒専門店「地酒屋こだま」さん主催のイベントです。

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(こういう趣旨です)

今回の会は「地酒屋こだま」の開店10周年イベント。児玉さんは毎年様々な「日本酒の会」を行なっていたのですが、今年は感染症対策など様々な要因があり、大規模イベントは困難に。

そこで、さまざまなお店とコラボして、少人数でのお酒の会を複数回行うというサーキットタイプのイベントとして実施。各回でテーマを設定し、児玉さんの秘蔵の熟成酒と料理を楽しむ会となりました(今回は「福島のお酒!」)。

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(乾杯の挨拶をする児玉さん。フェイスシールドなのは「お酒の解説をたくさんしゃべりたいから!」とのこと)

もうひとつ、このイベントにはコロナ禍で売り上げが激減している「飲食店」「酒蔵」応援、という側面があります。児玉さんが飲食店さんにとっておきの日本酒を持ち込んで提供することで、お店に足を運んでもらうきっかけにしようとされているのです。

感染対策しつつ、会話は控えめで、だけど堪能させていただきます。

10年熟成も!貴重な熟成酒をいただきます!

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この日の熟成酒のラインナップ。みてください、新しくても2014年、古いものだと2011年。なにしてたっけ当時、と思うほど。これらを順番に、児玉さんの解説を聞きながら楽しみます。

※お酒の情報などは、基本的にお話をメモした内容です。
内容違っていたら私の聞き取りミスです!

①花泉 一口万 純米吟醸 無濾過生原酒 2014/26BY

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1杯目は、一ロ万の無濾過生原酒(一般的に変化しやすく早飲み向き)。

花泉のお酒はすべて『熱掛四段仕込』という手法(仕込みの最後に餅米を投入する方法)。酒米自体は45%まで削っているので大吟醸クラス!(もちごめは60%だけど削ってもあまり意味がないそう)。

飲んでみると…おお、しっかりあまみがあって、なんというか「エレガント」。6年前の感じが全然しません。

児玉さんは「たくさん説明します」という宣言の通り、蔵の紹介から当時の造りの状況、味と今との変化、地酒屋こだまで取り扱うに至った経緯などなど、想像の10倍くらいたくさん(すごい勢いで)話してくれます。

「6年の熟成でやわらかくなっていますね。そう、これが熟成の会の楽しみ。当時の新酒の味を知っているのは僕だけなので、僕が一番楽しいんです」(児玉さん)

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(豚ネギしゃぶ。写真ではわかりませんが柚子がはいっていて香りがとてもいいです)

②廣戸川 純米 にごり生酒 2014/26BY

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(あまりの「にごり」具合を見せてまわる児玉さん)

続いては人気の廣戸川、それも新酒などでみられる「にごり」です。瓶の半分くらいにおり(にごりの白いやつ)が溜まっています。6年前の新酒の時期、このお酒はふたをあけるのが難しいほどしゅわしゅわしていたそう。

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(まっしろ!)

熟成酒って茶色とかそういうイメージですが真っ白。「今年の新酒」といわれても全然気づきません。

味はというと…熟成=濃いイメージとはまったくべつ、むしろ酸っぱいくらい。そして苦味もあり、なんだかフレッシュです。6年も眠っていたとは到底思えません。(熟成酒は味が硬いことがあるので、児玉さんが昨夜から開栓して空気にふれさせて「お酒を起こす」ことをしていただいていたそう)

実は、児玉さんは「廣戸川」の現蔵元(まだ30代と若い!)が酒造りを始めた頃からの付き合い(つまり当時20代)だそうで、東京で取扱をはじめた最初の酒販店さんなのです。

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(サンマの玉ねぎ煮込みと一緒に。あまみのある料理とぴったりでした)

③弥右衛門 本醸造 超辛口 生酒 2011/23BY

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2011年、震災の起きた年です。今回は「福島のお酒」とあり、どのお酒もその影響は受けています。

本醸造で「超辛口」とあり、さぞかしガツンとしているかと思いきや…全然優しい!ミルキーです!

児玉さん曰く「アルコール添加の本醸造は『安いお酒』と思われがちだが、非常に綺麗で、キレがある。アルコール添加の魅力」とのこと。なるほど、確かにとっても綺麗です。飲みやすくてまろやかですっきり。「10年の熟成」って感じではありません。

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(身振り手振りで話すあまりブレる児玉さん)

実は、お酒の中でも熟成しやすいのは「甘いお酒」。お酒のなかにいろいろな「要素」がはいっているほうが変化がわかりやすいのだそう。一方「辛口」といわれるようなお酒は、味の変わる要素がすくないため、なかなか「熟成の味!」のような変化は少ないのだそうです。

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(ただのきんぴらに見えますが、実は柿とクミンが入っていてお酒にあう!)

④天明 伍号 純米大吟醸 美郷錦 おりがらみ生酒 2011/23BY

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(また、熱く話すあまりブレる児玉さんの写真)

天明は9年もの! ちょうど児玉さんがお店をはじめたころに出会ったそうです。醸造が震災の翌年(蔵はお酒が数千本割れるなどの被害があったそう)とあり、ラベルには再び酒造りができることへの感謝の言葉がびっしり書かれていました(というのを児玉さんが音読してくれました)

なんと新酒みたいに「ガス感」があります!。そして軽くて飲みやすい。天明はフレッシュな味わいが好みなのですが、その個性は9年たってしっかり保たれるのですね。

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酒粕をつかったグラタンとともに。これも地味ですが、ものすごく合います。おいしい。

⑤鶴乃江 永寳屋 備前雄町 純米吟醸生原酒 2013/25BY

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(写真は会津中将のご夫婦が来店されたさいに壁に書き込んだコメント)

こちらも人気、会津中将で知られる鶴乃江酒造さんの7年熟成。こちらの蔵はややスッキリした綺麗なお酒が特徴的。どうも水がその要因だそうで、自然と甘くなめらかな味わいになるのだとか。

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(つまみ4品と一緒にいただきます!)

うん、きれい。個人的な感想ですが、きれいかつ「すきっと消える」イメージのあった会津中将から、きれいかつ「じわじわ美味しさ残る」になった印象。これこそ、ちびちびちびちびとずっと飲んでいたいです。

⑥辰泉 京の華 純米吟醸 別誂 瓶囲い原酒 2011/23BY

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後半になるとあまり覚えていませんが、辰泉です。約10年前のお酒ですが、最初のかおりははっきりフルーティー。それだけじゃなくて、丸いというか、強いというか、「ゴムボール的な押し戻してくる弾力」があります。口のなかでしっかりうまいです。

ちなみに「京の華」というのは酒米の名前。一度は廃れたお米でしたが、蔵元さんが種籾から少しずつ増やし、今も使い続けているそうです。

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(料理は牡蠣と春菊!うまい!)

⑦会津錦 こでらんに 本醸造 無濾過生原酒 2012/24BY

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「おまたせしました、ようやく『熟成感強め』ですよ」と、ラストに児玉さんが出してくれたのがこちら(写真の一番右です)。

たしかに、香りは一瞬「紹興酒」のような香ばしさ。そして飲むとしっかり甘く、カラメルのよう。でもガチガチではなく、いい味醂というか和菓子というか、そういったしっとりとした甘みです。

こちらはもともとかなり甘く造られており、そのため熟成による変数が大きいそう。冷蔵貯蔵でも8年でしっかりしあがっています。

「熱燗」にして2周目へ!

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ひととおり飲み終わりましたが、実はここからが熟成酒の本番「熱燗」です。
①のロ万から順番にもう一周いただきます。

これが本当におもしろい。一気に香りがふくらむものもあれば(①ロ万はとても華やかに!)、味がはっきりわかりやすく(②廣戸川はホットカルピスみたいに)なったり、意外と強く個性を保つもの(③弥右衛門とかがその印象でした)もあったりと、1つ1つ全然違う変化があります。

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(つけたての熱燗の美味しさをみんなに提供すべく、走って次いでまわる児玉さん。本当に感謝です)

あらためて、10周年おめでとうございます

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(本日のお酒たち)

ごちそうさまでした。「熟成ってこういう感じ」というイメージがかわり、「きれい!」「なめらか!」と、上品さに驚く会でした。おもしろかったです。

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(左が児玉さん、右が「きの字」の店長。かれこれ13年の付き合いなのだそう)

そしてここからは完全に僕個人の感想なのですが、「地酒屋こだま」さんはやっぱりいいのです。「こだわり酒」「蔵とのつながり」を大切にされるお店のなかでも、特にすごい。

日本酒の楽しさを教えてくれるというのはもちろん、「酒蔵」を応援し、「飲食店」さんとも手を取り合っている。ポーズではなくて実際に「行動」を伴っていて(蔵に足を運び意見交換したり、イベントをひらいたりすごくしている)、その内容に嘘がまったくない。「酒屋さんのあるべき姿」というものをひしひしと感じるのです、勝手に。

だから通いたくなるし、児玉さんが応援するいろいろなもの(お酒、飲食店、人)はすべて賛同したいと思えるほど、(これも勝手に)信頼しているのです。

改めて「地酒屋こだま」10周年おめでとうございます。(きの字さんは来年20周年とのこと!)

https://ja-jp.facebook.com/kinoji4691/


もちろん、お酒を飲みます。