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奇跡の脳 Ψ ♾ 脳科学者の脳が壊れた? No.57

脳科学者であるジル・ボルト・テイラー博士は37歳のときに脳卒中で、それまでの認知機能、身体機能を失いましたが、開頭手術の後、8年間のリハビリを経て、すべての機能を取り戻しました。

脳卒中とは、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などを含む脳の機能に障害を起こす病気です。

一か月ほど前のある日、たまたまYotube のTED で彼女が自分自身の体験を語っているのを見て、ふと思いました。


あれ〜? この話、なんだか知ってるような気がする・・・
ずいぶん昔、本で読んだことあったっけ?

と、本箱をくまなく探すと、ありました!


「奇跡の脳」─脳科学者の私の脳が壊れた─   ジル・ボルト・テイラー

もう10年以上も前?
すっかり忘れていましたが、あらためて興味深く感じるところがあり、じっくりと読み直してみることにしました。

この本には、彼女が患者の立場となって初めて知ったさまざまな困難や困惑、快復までの道のりで具体的にどんなことを味わい、何を必要とし、どんな風に接して欲しかったかなど、経験しなければ決して分からなかったであろう貴重な記録はもちろんのこと、右脳の涅槃 ニルバーナの境地と左脳の分析的な判断力が脳梁によって繋がり、絶妙にバランスを取って初めて形作られる現実世界とは? また、右脳が常に静寂の中で感じている宇宙との一体感と、左脳の言語中枢が翻訳した宇宙とは切り離されたものとして認識している、この "自分" という存在とは? といった人間の意識に関する深淵なテーマや脳の神秘について、生命の危機をくぐり抜ける過酷な体験を辿りながら、脳科学者の視点から詳しく語られています。

また博士は一般の読者はもちろんのこと、脳の外傷から快復中の方や、そういった患者さんを看護する方々にこの情報を提供することを心から望んでいると書かれています。

確かにこのような実体験のつぶさな記録を目の当たりにすることにより、人間の脳の美しさと驚異的な回復力への驚きと共に、何よりも大きな希望が生まれるのを感じて、情報は本当に大切だと、あらためて思いました。

現実世界を当たり前のように受け止め、日々生かされていることの背後に、この信じ難いほど精巧緻密な脳の働きがあることに、あらためて感謝の気持ちが湧いてきます。

一方、日本の医療の現場では、脳卒中に限らずあらゆる病気に対して最悪の可能性ばかりを懇切丁寧に説明され、まるで希望の芽をむしり取るかのような非情さも常々感じています。
もちろん、心から尊敬出来る素晴らしいお医者さんも沢山いらっしゃいます。が、大病院にありがちな、崖っぷちで必死に踏み留まろうとする人の背中から回し蹴りを喰らわすような体質に、甚だ疑問を感じることも少なくありません。

「脳卒中の後、6ヶ月以内に元にもどらなかったら、永遠に回復しないでしょう!」と耳にタコができるほど、お医者さんがこう口にするのを聞いてきました。でも、どうか、私を信じてください、これは本当じゃありません。
 私は脳卒中の後の8年と言うもの、自分の脳が学んで機能する能力が格段の進歩をとげたのを実感しました。その時点で、自分の脳とからだが完全に回復したことを確認できました。科学者の間では、脳が、入ってくる刺激に基づいて「つながり方」を変えるという、驚くべき能力を持っていることがよく知られています。この脳の「可塑性」により、私たちは失われた機能を回復することができるのです。
─中略─
 同じことがニューロンについても言えます。ニューロンは遺伝子的にプログラムされた機能を失ったら、その細胞は、刺激の不足から死んでしまうか、あるいは何か新しくやることを見つけ出すでしょう。たとえば視覚の場合を考えると、もしあなたが片目に眼帯をつけて、視覚野の細胞に入ってくる刺激を遮断すれば、役目を失った細胞は隣の細胞の所へ来て、何か新しい働き口がないか調べるでしょう。私にはこの脳の可塑性と、成長し、学び、回復する能力を信じてくれる、まわりの人たちの支えが必要だったのです。

─ 「奇跡の脳」 11章 最も必要だったこと─  より


認知機能も身体機能も失い、言葉を喋ることも理解することも出来ないまるで幼児のような白紙の状態から再出発した彼女は、自分や世界を一から再構築するに当たって、心の底から望む自分自身の思考パターンを自由に選択することが出来ることを発見し、意識的にどの感情、どの心理ループに接続したいかを選ぶ、その方法も本の中で詳しく伝授してくれています。

また巻末の付録「回復のためのオススメ」にある「最も必要だった40のこと」に書かれている内容については、「脳卒中になりうるすべての人に」と本の帯にも書かれているように、実際に脳卒中になった人や身近に脳卒中になった人を支える人だけではなく、健康な人にとっても、知っていればきっとお役に立つ貴重な情報が詰まっていて、この数ページを読むだけでも、この本を手に取る価値があるなと思いました。

このような情報を必要とする沢山の人々の目に触れることを願っています。

また博士は最後の章で「脳卒中の体験から多くのものを学んだせいか、なんだかこの旅が幸運だったと感じるようになりました。脳卒中のおかげで、普通では決して本当だなんて思えないようなたくさんのことを、じかに目撃する機会を得たのです。」と綴っています。

彼女の果敢な挑戦は、人間の脳には深い瞑想状態でなければ辿り着くことの出来ないと言われる意識の次元、宇宙と一体となった愛と平安に満たされた意識の領域が、すべての人にもともと当たり前のように備わっていたということを教えてくれました。

「神は自分の姿に似せて人間を作った」とよく言われますが、人間の右脳と左脳は、ただ一つなるものである神界の仕組みを人間界にマッピングするための精巧な二元装置 プロジェクターとして機能しているのではないでしょうか?

時のない茫漠たる宇宙空間に広がろうとする右脳と、刻々と時を刻んで組み立て突き進もうとする左脳は絶妙なバランスを取り、一瞬一瞬を繋ぎ合わせて時空連続体を構築します。

しかも私たちは未だ見ぬ明日の世界を虚空に想い描くことすら出来るのです!

人間の脳は、なんという奇跡的な働きをしているのでしょう!

その世界は今の人類にとって最も相応しい次元に展開された独創的ユニークな世界像であり、もしも人の意識が進化すれば、映し出される次元も変わり、そして脳の機能や使い方も当然変化するのでしょう。

現在私たちが経験しようとしている進化において、人は肉体を持ったまま次元を超えるのだとナムは言います。

次元上昇という言葉はどこか荒唐無稽な響きに聞こえるかもしれませんが、物質的な肉体レベルにおいては、実はこの "脳の機能と使い方の変化" という、とてもシンプルな出来事と言えるのかもしれませんね。

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木倶知のりこ 著書:●絵本『小箱のなかのビッグバン』 *・* ・*●『ナム "RNAM" 時空を超える光と水の旅』

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