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【褒め】塾講師時代に行っていた子どもを伸ばす指導法

 過去、私は個別指導型・補習塾で塾講師として小中学生を指導していました。個別指導型・補習塾に来る生徒はほぼ全員、学校の成績が中下位の生徒さんです。もちろん塾内には定期テストで90点を取れたり、学年上位10%位に入っている子もいましたが、私の知る限り、入塾時点では彼ら彼女らもまた中下位の成績でした。

 そんな塾で指導していた私ですが、心がけていたことがあります。それは「2指摘するなら、8褒める」ことです。

 つまり、褒め8割・指摘2割の指導を志向していたということです。というのは、私は小学生時代、母親の買っていた数多の子育て本がどうも面白くて熟読していたのですが、そこに子供に叱る割合は2で、子供を褒める割合は8にすべきと書いてあったのです。

 実際、私が働いていた塾に来る生徒は親からも先生からも「よその子の方はあれだけできるのに」とか「もう少し頑張りなさい」と指摘を受けてばかりの子が多かったです。
 人間、他からみるとダメであっても、特に自分自身ではそれなりに頑張っているつもりだと、指摘されてばかりでは、もはや、やろうとやらなかろうと結果は同じに思え、一体何をすれば良いのか分からなくなってしまいます。

 そんなわけで、大小問わず頑張りを肯定しつつ、要所要所でのみ指摘することにしたのです。

 それゆえ、どんな些細な事でも褒めるようにしました。具体的には、宿題をちゃんとやってきた、前よりも正答率が上がった、問題を解くスピードが早かった、ウトウトせずに授業を受けていた、とかです。

 ここで、ねちょねちょと褒めてはいけません。胡散臭くなります。さりげなく、「おっ!宿題ちゃんとやって偉いじゃん!」「全問正解でいいね!」といった感じです。よほどの事(例:定期テスト満点)でない限り、一つ一つの褒め方の質を上げることよりも褒める回数を増やすことが大切です。

 このように、褒めてもらえると生徒さんの自己肯定感が自然と上がってきます。言うならば、ゲームを次々とクリアできた感じです。そのような状況になって初めて生徒さんは少し難しい問題にも頑張ってみようと言ってくれます。

 ただ、そうは言っても今までのレベルでは容易には解けない問題を提示するわけですから、自己肯定感が高まっている状態とはいえ、それだけをもって毎回正答することはできません。こんな時にどうするのか。私は2択選択肢を用意していました。

 1つは、単純にここで今まで貯めてきた褒め8に対応するだけの指摘権を使用することです。それまでたくさん褒められてきたわけですから、ここで1度間違った問題に対する解説を挟んでも、そこで急にやる気がなくなることは中々ありません。

 もう1つは少しテクニカルですが、その難しい問題のキーとなるポイントをその問題を解く前に提示することです。具体的な声かけはこんな感じです。

「じゃあ、○○君、次の問10は少し難しいんだけど、頑張ってみようか。もし解き方に悩んだら、補助線を引くことができないか考えてみて~。」

 これは「補助線」という答えの核心をほのめかしているわけで、生徒さんの思考力が育たないと批判されるかもしれません。
 しかしながら、少なくとも高校までの主要科目で真に思考力が求められる問題は存在せず、難関大の問題と言えども多くの学生は過去に解いた類題の記憶を吐き出しているにすぎず、本当にその場で思考している人はいません。

 それゆえ、応用問題を生徒さんが一度間違えてから解説するよりも疑似的に自力で応用問題が解けたという感覚を味わせた方がモチベーションの維持・向上につながります。

 そういったわけで、私は個別指導塾という特徴を生かし、適時、生徒さんに合った問題のみ解くよう指示し、応用問題に出会った際には必要に応じて”踏み台”を提供することで自力で上へ上へとステップできるように指導していました。

 そうしたら、いつ指摘2を使うんだと言われるかもしれません。
 それは、宿題を忘れてきたときです。宿題をやってくるというのは基本的に誰でもできることですし、例えば大会等で今週は忙しいとなった場合、生徒さんと相談して毎度これだけなら絶対できるね、という量を柔軟に生徒さんと話して決めていました(塾のルール上、本当は禁止です)。
 また、分からなかった問題は途中までも良いし、暗記科目については解答を写してくるだけでも全然良いと伝えていました。
 つまり、本人がやる気さえあればどうにでもできる状態なわけです。

 そんなお互いの合意の下(こちらの方が立場が強いのは事実ですが)決めたことをやってこないとなると、それを指摘しないようでは生徒さんからこの先生は何をやっても褒めてくれる・叱られないと舐められ、結果、その後の授業にも支障を来します。

 そして、授業でも舐められるようになると、以前と違い、褒めてばっかりではそれに火を注ぐような状態となり、仕方なくどこかで一度本気で叱る⇒生徒からの信頼を失うといった望ましくない順路を辿ることとなっていまいます。

 かかる理由から、やればできる量の宿題をやってこなかったときについては指摘2を迷いなく使います。


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