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火曜版『午前0時の森』不安しかないリニューアル、闘う若林


毎週月曜と火曜の深夜に日テレで放送されている『午前0時の森』。月曜は劇団ひとりと村上信五、火曜はオードリー若林正恭と水卜麻美がMCを務め、月曜と火曜ではまったく異なるテイストで特に交流することもないという割と特殊な形の番組。
今回、その火曜放送版が”おかえり、こっち側の集い”というテーマのもとに先月大幅にリニューアルされた。概要は下記。

この世の人間はあっち側とこっち側のふた通り!

人生キラキラ、ザ・明るい人=あっち側
小心者で色々考えちゃう人=こっち側
華やかな芸能界もまた然りで、芸能人なんてみーんなあっち側でしょ?
と思いきや…実は、こっち側の人々が沢山いるんです。
そんな、芸能界で息を潜める「こっち側のゲスト」が続々登場。
若林&水卜にその悩みや相談を打ち明けます。

彼らと同じような悩みや愚痴がある、世の中のこっち側のみなさんも
若林&水卜に相談してみませんか?

https://www.ntv.co.jp/mori/

この報を受けてTwitterでも賛否両論、というか、否が圧倒的に多かった。ソーシャルメディアというのはそういう声が強く響く場所なので仕方ないけれど、MC2人のラジオのようなゆるいトーク、疑似生収録ならではのラフな構成、行き当たりばったりで毎週定まらない企画。そういう雰囲気を楽しみにしている一定数の視聴者を獲得していた。
しかし番組内で若林が再三「テレビはこれじゃいけない」という趣旨のことを言っており、逆にそこを楽しんでいるようでもあったので、こういう奇跡的なバランスで地上波の淵に立っている状態をいつまでも続けていってほしいな、それこそタモリ倶楽部のような番組になるまで・・・と思っていた人も少なくなかったと思う。しかしそれは叶わなかった。現実は厳しかった。

リニューアル後の放送を観る前に僕は直感的に2点のことを思った。
・もうあまり見なくなりそう
・でも視聴率は取りそう

若林本人も「人をこっち側とあっち側に分ける二元論に反発もあるでしょうけど、これで行くと決めた」という内容をコメントしており(ただ今Webで検索しても出ない。どこで読んだんだっけ。。。)その決意の裏にある葛藤を感じることができる。彼が『あちこちオードリー』で嫌われる覚悟について話していた回を思い出し、そんな彼がこうすると決めたのだからもう外野が何も言うことはないのだ。

まずは見てみないと始まらない、リニューアル後初回の放送を見た。
そこにはディテールに工夫の効いた居間風セットが組まれ、字幕テロップが付いて、細かい編集が加えられた「日テレっぽい深夜番組」が出来上がっていた。
2人がトーク内で決めた覚えにくくてダサすぎるハッシュタグ「#g0mr火」は、覚えやすくてわかりやすい「#こっち側」に変わっていた。

前までの番組が好きだった人は皆「あっ・・・」と不安がよぎったことだろう。しかしここで何かをつぶやきたくなるところをぐっとこらえ、すぐに判断を下すのは早計、まず1か月は様子を見てみようと思い、そこから毎週見た。

正直、辛かった。みんなゲストもMCも頑張っているのである。”こっち側”のエピソードを披露し、みんなで共感するのだが、時にはやや強引に”こっち側”臭を強めに漂わせてなんとかネタを捻り出しているという感じが透けて見える。
アメトーークの絵心ない芸人や人見知り芸人などにも感じる、番組のテーマに持ちネタを寄せていく無理やり感。
最近流行りの悩み打ち明け系、人生相談系の重たい話を用意しては、メンタルヘルスの不調さや当人の異常さをアピールしてます感。
それでも、若林の巧みなフォローで大きな笑いに変えたり不自然さを取り除いたり、絶妙なバランス感覚を発揮している瞬間が何度もあった。
水卜ちゃんは局アナらしいサブの立ち位置に収まってしまった感じがするが、時折強めのパスをもらったりツッコんだりもあってお飾りでは終わらない存在感があった。そこには若林との長い共演経験の中で培われた信頼があるのがよく見て取れた。

直感その1は、当たりそう。直感その2は、調べても出なかったのでどんな評価になるのかまだわからない。でも僕たちは知っている、僕たちが本当に面白いと思う番組ってすぐ終わるということを。クドカンや坂元裕二のドラマは視聴率を取らないことを。

皮肉だけれど今回のリニューアルによって「僕たちが本当に面白いと思う番組」ではなくなったことで、ひょっとしたらこのフォーマットで番組が長く続くのかもしれないね。

若林本人は1回目収録後こう言ったという。

「たくさんあるテレビの現場の中で、ようやく自分の居場所を見つけました」

彼の活動を追い続けてきた人なら、この言葉が本心ではないこと、そのまま鵜呑みにするわけにはいかないことがわかる。彼はサインを出している。俺は闘いに1度は敗れた、でも諦めないと。まだ闘っているんだぞと。
そして僕たちはそのサインを受け取らなければならない。見逃してはならない。殊更に声を荒げることも、過度に肩入れすることもなく、成り行きを見守るのみだ。
そうやって東京ドームという嘘みたいな場所に辿り着いた男なのだから。

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