見出し画像

2022/5/19『文字への記憶』

ジョン・ケージの音楽から記憶が消されている
ホスピタルの階段で
彼の手提げカバンから
ころがり落ちる「音符」をはすかいに見る
文字に記した傾向と耐震化の数字は
わたしの昨日のほとんど理解されない文字である
バッテリーから漏れている
サナダムシの頭の部分が、何故かホタルに似ている
甘い旅客機のエンジン部分からチョコが
もれだしている、萌え出している
忽然と現れて、わたしたちに可視化される
本当の世界の事実、それは
バーナーで焼かれつつある、死体のように
元気です、わたしは今日も
ふすまの向こうから、いつものあいさつをするので
原因不明の統制下の、ぼんやりとした
不安と言うやつが原因です
星空の下のヨークシャーテリアの遠吠え
そしてわたしは見る
飛行船の窓を開けて、手をふるあなたの
マフラーはやけに何かをあおる
それは湖の回転する光のように、ここはまだ敵国です
そしてわたしは脱出するカモメです
ヒンズー教徒のような足取りで、みんな
朝餉に向かいます、手を合わせ、祈ります
モーツァルトの弾くピアノ曲を聞きながら
彼のおだやかな瞳を感じながら、フォークで
刺して、肉を、彼の肉体の、やわらかく、手も膝も
頬も、刺して、肉体は音楽を奏で、フォークで
音楽を刺して
聞き耳を刺して
血だらけの音楽は朝餉に向かう
それらのあたたかなこころを感じるわたしは
ワインのグラスから
ジョン・ケージのあらゆる可能性の音楽の地平から
溺れて、包まれて、悲しんで、満ち足りて、ほほえんで
それらの地平線から戦車部隊はやって来る
死のかなたへ、死者のかなたへ、へりくだり、わめきちらし
あなたはまだ見ぬ死者の国の香りをかぎ
へどがでる、へどがでる、悪魔のように、新しい感覚の
音楽は美しい朝の光の、食欲のままに
わたしは賛美する
そのようにして晴れ渡る空の始まり
その文字への記憶の
美の爆弾
そこから立ち上がる。