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2022/5/21『カヤック』

逃れるために、そしてパリの街のカヤック
神秘のオード、平行するクジラたちの
実力、宝飾品のとりとめのない、遠洋へと
交わす言葉の、ノード、おしめの、強行する
本来的素直さのアイリスの乾きを
逃れようとするパリの街の船
やるせない泪とやや誇張された鼻汁とモダン建築の
大理石の階段のひんやりとつづく
屋久島のこずえの青みを帯びた鳥の声
カヤック、オールは軽く、視界は晴れ晴れと
おしとどめるものはなく、おしよせるものはなく
走る群青の、モダニズム、ヒロインの、カヤック
経験則が教えるところでは、くもりのち雨
午後からはロックンロール
五月雨(さみだれ)もさつきの雨もあるらし
この景色は靄のかかって、恋人は姿も見えない
消失した思いびとを探しに行くのだ、ややうしろめたい
気もするがキショウブの花は諦める気はないのだから
やがてはホンコンの風、ノードをかえて
サルベージは進む、ノードをかえて
標識はアクアマリンの身体の限界へと、さらに進む
惑星の大気の中へと侵入する、砂の嵐の吹きすさび
ノードは一本の壁である
少なくともわたしたちには見ることを許されていない
億単位の変化する壁の存在
そしてまた海からの隔たりを隠して、カヤック
進行する軍隊の、連隊の、ヘルメットから、鳩の声がする
ぼうぼうとした草原のやるせないヘルメットの
ハルスの紋章の爆撃の衝撃のハナイカダ
休みたいのだが部隊は進行している、乾燥した日々の
徐々にしずくが垂れて来る、もう隠しきれない
カヤックで行く
望みのうすい日々の草原の、ホエザルたちの叫び出すとき
カヤックで行く
あきらかに、わたしたちは、河の中に住んでいる
カバやアヒルのように、ミミズやヒマワリのように
そしてカヤックで行く。