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「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」

「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」汐見夏衛

親や学校、すべてにイライラした毎日を送る中2の百合。母親とケンカをして家を飛び出し、目をさますとそこは70年前、戦時中の日本だった。偶然通りかかった彰に助けられ、彼と過ごす日々の中、百合は彰の誠実さと優しさに惹かれていく。しかし、彼は特攻隊員で、ほどなく命を懸けて戦地に飛び立つ運命だった――。のちに百合は、期せずして彰の本当の想いを知る…。涙なくしては読めない、怒濤のラストは圧巻!

大好きな作家さんのひとり、汐見さんのデビュー作。ずっと読みたいと思っていて、やっと読めて満足!


当たり前のように学校に通えて、きれいな青空をのんびりと眺めることができる。お腹一杯にご飯が食べられて、たっぷりとお湯を張ったお風呂に入ることができる。冷房のきいた涼しい部屋でごろごろ漫画を読んで、夜遅くまで電気をつけていたって命の危険なんかない。空襲の恐怖に怯えながら浅い眠りについて、いつでも逃げられるように大事な荷物をまとめておく必要もない。本当に幸せだ、と実感する。私たちは、日常的に命の危機を感じながら生きたりする必要がない。こんなに満ち足りた生活をしていて、あの頃の私は、いったい何が不満だったんだろう。現代の日本は本当に幸せだ。

p320〜321

私たちはたまたま平和な時代の日本に生きているに過ぎない。家族と離れ離れにもならず、食べるものに困ったことはない。学校で勉強もできる。SNSでいろいろな人と繋がれて、発信することもできる。
ましてや、空襲など命の危険に晒されることなんてない。

もちろん戦争のことは学校で習ったし、原爆ドームだって行ったことがある。けれど自分の生活に重ねて考えたことはなかった。
だから主人公の百合と一緒に戦時中にタイムワープした気持ちで読んでいった。


たくさんの苦しみと悲しみと犠牲の上に築かれたこの新しい世界で、私たちは、これからも生きていく。
この世界をつないでくれた、数え切れない人たちの命と愛を、全身に感じながら。(略)
素晴らしい未来を私たちに残してくれてありがとう。
あなたたちのことは絶対に忘れません。あなたたちの犠牲は絶対に忘れません。
あなたたちが命を懸けて守った未来を、私は精一杯に生きます。

p352

生きてるのは自分だけじゃない、今の世代だけじゃない。
過去からずっとこの世界は繋がっているんだ。
戦争を美化するつもりはないけれど、この言葉は胸にすっと入ってきた。

なんだか、つまらないことで悩んでる自分が恥ずかしくなった。

頑張って生きよう。


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