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小説、エッセイ、俳句etc
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記事一覧

鬼化粧 色のある風景

最近の流行にはついていけない。 若者たちの化粧が根本的に変わってしまった。 分かりやすく言うと、若者たちのほとんどの顔が鬼に変わってしまったのだ。 顔の色が、赤、黄、青、緑、白、黒etc.。 まるで12色クレヨンの見本だよ。 最近では様々な年代で、若者文化を追従する者たちが現れ始めた。 SNSは鬼たちで溢れかえっている。なんという世の中だ! うちの孫たちも赤鬼、青鬼。紫鬼になってしまった。 そして、この私にも鬼化粧を施すように勧めてくる。 「ね、おばあちゃんはピンクの鬼

小さなオルゴール 青ブラ文学部

おばあさんが小さなオルゴールを開けたのは久しぶりでした。 オルゴールは鳴りません。もうずっと前からです。 修理に出すのは嫌でした。 このオルゴールを作ってくれたのは、亡くなったおじいさんでしたから。 修理に出すと、おじいさんのオルゴールではなくなってしまう気がするのです。 オルゴールは宝石箱でもありました。 確かにおばあさんの宝物が入れてありました。それは宝石なんかではありません。 おじいさんとおばあさんの結婚式の時の写真。少しセピア色に変色していましたが、二人の愛と、二

お遊びしてみました

三羽 烏さんにお薦め頂いたので早速やってみました。 名前を入力するだけでAI君が、あなたの想像画を描いてくれますよ。 どちらも美形ですよね。 美人に描いてもらうと、とても嬉しい。女ですもの😄 AI 君、ありがとう。 三羽 烏さん、楽しませていただきました。 ありがとうございま~す🎵 #お遊び企画 #AI画像生成 #三羽烏さん

祈りの雨 青ブラ文学部

雨が降ると悲しい。 子供の頃、そう思っていた。空が泣いていると思っていたのだと思う。 だけど今は、雨の日は落ち着く。雨音を聞きながら眠るのが何より落ち着く。雨音は眠りの精だ。 いつの頃からか、雨音に紛れて祈りの声が聞こえてくることがある。 「雨よ、雨よ、叶えておくれ。雨よ雨よ、お願いだから」 いつも同じ声。 怖くは無かったが、気になる。気になるというより……。 どこかで確かに聞いたことのある声。 誰だったろうか。 いや、本当は誰の声か分かっている。認めたくないだけだ。 あ

セピア色の桜 青ブラ文学部

セピア色の桜を見たことがあるかと問われれば、Yesです。 ただし、それは写真の桜。 1950年代。 私がまだ幼い頃、父の職場の仲間の間で写真を撮る事が流行った事があり、こぞってカメラを購入したとか。 カメラといっても、現在の一眼レフでは無い。二眼レフだ。ミノルタ製だったと思う。私が二十歳ごろまでは確かに家にあったはず。 私は長子だったので、妹達より多くの写真を撮ってもらった。 父の会社の施設の隅に暗室があり、現像も焼き増しも父達が自分でやっていたそうだ。 色付けも自分た

廃屋の門 青ブラ文学部 (762文字)  

小高い丘に立派な門構えの屋敷があるが、そこはすでに廃屋と化していた。 時折、夜に明かりが漏れることがあると言う者もあるが定かではない。昼間であっても夜であってもその家に出入りする人を誰も目撃した者はいないはずなのだから。 昔からこの地に住んでいる年配者も、この屋敷は昔から廃屋だったと言うばかり。役所に聞いても要領を得ない。 子供たちはお化け屋敷だと怖がっているが、門の中の庭は手入れが行き届いているようにも見える。庭師が見かねて手入れしているのだろうか。 それにしてもなぜこ

私のイチオシ(手前味噌ですが)

三羽 烏さんの「イチオシください」に参加させて頂きます。 2022年の作品ですが、私的には気に入っているものの一つです。 410文字のSSです。 三羽 烏さん、よろしくお願いいたします。 #itioshi

手のひらの恋 青ブラ文学部

私には密かに憧れているお方がいる。 叶わぬ恋。幼い時に一度だけ出会った事がある。彼が迷子になった時、母と一緒にお屋敷まで道案内をしたのだ。 それからずっと、彼は私の王子様だった。彼を見かける度にときめいた。 そして今でも。一度だけでも会いたいという気持ちは変わらない。 私は禁断の方法に手を出してしまった。 村外れに住む魔女に願ったのだった。 魔女は高額な報酬を要求したが無理な話。 私はすごすごと魔女に背を向けた。 魔女は別の取引をしようと持ちかけた。 私の若さを欲しいと言

お化けの暗々 青ブラ文学部

お化けの暗々はまだ新米。暗々のお母さんは、素敵に怖い顔。暗々は羨ましくてたまらない。 お母さんを見れば、人間だけでなく動物達まで尻尾を巻いて逃げていく。いいなあ。大きくなったらお母さんみたいになれるかなあ。 暗々のお母さんはとても心配していた。暗々は人間で言うところのかわい子ちゃん。お化けの世界では大成できないだろう。 以前は美人だったが、夫のせいで有名なお化けとなったお岩さんに暗々裏に相談したお母さん。 お岩さんは、元は人間だったので可愛い暗々を可哀相にも思った。 「

合わせ鏡 青ブラ文学部

私の部屋にある鏡は、ひいおばあちゃんにもらったもの。アンティークな作りが気に入っているんだ。 お母さんも羨ましいって言うほど素敵なのよ。 お母さんの鏡台は三面鏡、花嫁道具の一つだったって。私はひいおばあちゃんにもらったこの一面鏡と一緒にお嫁に行くつもり。 私が14歳になった日、私の鏡が話し始めた。 合わせ鏡をして遊んでいた時だった。 とても優しい声だったから少しも怖くはなかった。 それに声の主はひいおばあちゃん。会った記憶はないけれどすぐに分かった。 「ヨウちゃん、私が

夕焼け小焼け 青ブラ文学部

子供たちが『夕焼け小焼け』を歌いながら遊び先から、それぞれの家に帰っていきます。 ふと見上げれば美しい夕焼け。 子供たちは歌いながら、夕焼けに向かって手を振っています。 「また明日ねー」 夕焼けも、そっと目立たないように子供たちに手を振るのでした。 『また明日、子供たち』 それを空のうんと高いところで、スタンバイしている朝焼けがその様子を見ていました。朝焼けの唱歌はありません。子供たちに歌ってもらっている夕焼けがとても羨ましくてたまらない朝焼けなのです。 でも、朝焼け

見つからない言葉 青ブラ文学部

見つからないの 探しにいかなくては 見つからないの  あなたの言葉 あの屋根に止まっているアレかしら? 違うよね 風に身を任せ飛んでいった昨日かしら? 違うはず あなたの約束の言葉 大切な言葉 どこかに消えた 思いだせない ハサミで切り落としたように キレイサッパリ無かったことに 約束の言葉を失くした私は ただの ただの 何だろう 約束の言葉なんか無かったのよ 初めから 私の思い違い 私の妄想 あなたさえ存在していない そういう事にしておこう 約束の言葉 円を描いて

雛人形 青ブラ文学部

春めいてきた。 春の足音が聞こえて来るたびに、私は思い出す。 子どもの頃のできごと。 この地では無い。私の生まれた街での。 次の誕生日がきたら、10才になる春。初めての二桁の年齢。なんだかお姉さんになるようでくすぐったいような気がしていた。 私の誕生日は三月三日。雛祭りの日だ。 小さなお雛様が、すでにテレビの隣にある低めの棚に並んでいた。 まだひと月も先なのに。 その雛人形は内裏雛だけの、母の手で生まれた木目込み人形だった。母が一生懸命作ってくれている姿を私はワクワクし

鳥に 青ブラ文学部

今度生まれ変わるなら、何がよいかとあなたは尋ねた。あれからどのくらいの時が過ぎただろう。 あの時、私は考えたこともないと返事をしたが、思い直してこう言った。 「鳥になりたい」と。 空を自由に飛ぶ。私でなくとも、誰もが一度は空高く飛びたいと願ったことがあるだろう。 あなたは大人になってから高いところが怖い人になってしまった。 だから私のこの返事を聞いた時、眉をひそめたのだ。 あれから、あなたはどこかに行ってしまった。私の前から姿を消した。その前日、あなたは私の目を見ないで