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祈りの雨 青ブラ文学部

雨が降ると悲しい。
子供の頃、そう思っていた。空が泣いていると思っていたのだと思う。
だけど今は、雨の日は落ち着く。雨音を聞きながら眠るのが何より落ち着く。雨音は眠りの精だ。

いつの頃からか、雨音に紛れて祈りの声が聞こえてくることがある。
「雨よ、雨よ、叶えておくれ。雨よ雨よ、お願いだから」
いつも同じ声。
怖くは無かったが、気になる。気になるというより……。
どこかで確かに聞いたことのある声。
誰だったろうか。

いや、本当は誰の声か分かっている。認めたくないだけだ。
あれは紛れもなく、私の声だ。5年前の私の声だ。

あの人は私の気持ちに応えてはくれなかった。仕方がなかった。
誰にも渡したくなかった。私をそこまで追い込んだのも、あの人。
無垢だった私。バカな私

思い出したくはないが甦るあの光景。
雨の中、崩れるように倒れたあの人がスローモーションで現れる。
何度も何度も。これでもかと。

私にできることは祈ること。
あの人の成仏ではない。
このことが発覚しないこと。
私にできるのは私のために祈ることだけ。

今日も明日も明後日も、祈りの雨が降り続く。


了  458文字


山根あきらさんの今回のお題 『祈りの雨』です。
山根さん、どうぞよろしくお願いいたします。


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#ショートストーリー