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合わせ鏡 青ブラ文学部

私の部屋にある鏡は、ひいおばあちゃんにもらったもの。アンティークな作りが気に入っているんだ。
お母さんも羨ましいって言うほど素敵なのよ。

お母さんの鏡台は三面鏡、花嫁道具の一つだったって。私はひいおばあちゃんにもらったこの一面鏡と一緒にお嫁に行くつもり。


私が14歳になった日、私の鏡が話し始めた。
合わせ鏡をして遊んでいた時だった。
とても優しい声だったから少しも怖くはなかった。
それに声の主はひいおばあちゃん。会った記憶はないけれどすぐに分かった。

「ヨウちゃん、私が分かるわね」
「ええ、ひいおばあちゃん」
「あのね、私を『ミヨちゃん』と呼んでくれるかい?」
「わかった、ミヨちゃん。ウフッ。ミヨちゃんは鏡の中に住んでいるの?」

「住んではいない。これは電話のようなものさ。私はヨウちゃんに頼みがあるんだよ」
「なに?」
「今、ヨウちゃんの家の前に黒猫がいる。大切に飼って欲しいんだよ」
「ママ達がOKしてくれたら良いのだけど」
「それは大丈夫。ヨウちゃんはどうだい?」
「私、猫大好き」

そんなわけで、私は黒猫を飼う事になり、家族も許してくれた。
私と黒猫はずっと前から仲良しだったように、すぐに意気投合した。

ミヨちゃんは鏡に突然現れたりする。
私の方からミヨちゃんに用がある時は、合わせ鏡にすると改めて教えてもらった。

黒猫は賢い猫。ちょっと普通の猫では無いのだと思う。猫なのに合わせ鏡をして、時々ミヨちゃんを呼び出してニャゴニャゴ言っている。


ミヨちゃんは魔女だと思う。間違ってないと思う。なんだかね、そう思うのはミヨちゃんと私は同じ何かを持っているってわかるから。

黒猫には、まだ名前が無いの。どんな名で呼んでも気に入らないようだし。まあ、焦らず考えよう。
いっそニャゴにしようかしら。
「ね、ニャゴ」
そう言った私に、黒猫は嬉しそうに返事をして、ミヨちゃんを合わせ鏡で呼び出した。
名前がついた事をニャゴは嬉しそうにミヨちゃんに報告していた。





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