アインホールディングスと日本調剤について考察(前編)

今回は調剤薬局業界1位と2位でどんな違いがあるのかについて考察をしたいと思います。

アインホールディングスは売上・利益率ともに業界第1位。

アインホールディングスは調剤薬局業界で売上1位の企業です。
利益率も売上トップ5の平均営業利益率が4.48%に対して5.8%と非常に高くなっています。(2019年度数値)

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売上推移を見ても、毎年平均110%成長と非常に順調ですね。

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積極的なM&Aによるトップラインの維持で好循環を作る

前提として、調剤薬局は卸から薬を仕入れる小売りモデルであるため、仕入れ量が多いと規模の経済が働き、コストを抑えることができます。

アインホールディングスの重点戦略のひとつに「トップライン」との記載があるのですが、規模の経済を働かせることによるコストカットを狙っていると考察しています。

アインホールディングスはトップラインを維持するために、自力出店と合わせた積極的なM&Aによって店舗数を増やしています。

【直近の買収】
・2015年静岡県52店舗を経営する株式会社メディオ
・2018年新潟件56店舗を経営するコム・メディカル、有限会社ABCファーマシー
・2019年長野県36店舗を展開する土屋薬品

積極的なM&Aをするうえでは、いかに「この企業に買ってもらいたい」と思ってもらうことが重要です。

まず自己資本比率。40%を超えると安定した経営をしており、つぶれない会社と言われています。アインホールディングスの自己資本比率は54.9%とかなり高い数値となっており、買い手として重要な指標の一つを満たしています。

特に調剤薬局業界は2年に1度の調剤報酬改定があり、薬価が引き下げられたり評価軸や方法が変わったりする場合もあるため、財務が安定していることの重要性は高いのです。
またアインホールディングスは譲渡企業を大事にする社風もあり、2002年に買収した今川薬品の社長をアインファーマシーズの代表取締役会長に起用したという事例もあるようです。

参考

以上のことから、M&Aで拡大する上で一貫性を持った経営をしていることが分かりますね。

調剤事業以外に小売業にも力を入れ、調剤事業のリスクを減らす

アインホールディングスは調剤事業のほかに、アインズ&トルぺというブランドを持ち、ドラッグストアやリテール事業にも力を入れた事業ポートフォリオを組んでいます。

調剤薬局業界は行政の調剤報酬改定によって売上・利益率が大幅に変化するため、アンコントローラブルな部分が大きい業界です。そのためアインホールディングスがドラッグストア事業に取り組むのは調剤事業のリスクヘッジの意味合いが大きいのではないかと考えています。

ドラッグストア市場は破竹の勢いで成長しており、今後も伸びていくと予想されているため、身を置くことで企業成長を促すことができます。

しかし市場が成長しているということはその分競争も激しくなります。加えてドラッグストア業界は上位企業が70%のシェアを誇る成熟市場であるため、状況的にはかなり厳しいはず。そんななかアインズ&トルぺが成長を続けられているのには2つの理由がありそうです。

1つ目は小売り業のノウハウがすでにあるためです。
アインホールディングスは1989年に株式会社オータニを吸収合併し、ドラッグストアを引き継いでおり、30年程のノウハウがたまっています。


2つ目はアインズ&トルぺは上位企業と競合しないような戦略をとっているためです。
上位企業はとにかく「安さ」を売りにしていますが、アインズ&トルぺは化粧品や雑貨を中心にしたファッション性の高さを売りにしています。価格帯はドラッグストアより高く、店舗のつくりも私たちがイメージする「ドラッグストア」とは違った形となっています。

(店舗写真参照)

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こうした差別化ができているため、アインズ&トルぺは競争が熾烈なドラッグストア業界でも生き残れているのではないでしょうか。

以上アインホールディングスの考察をしてきました。
後編では業界2位の日本調剤について考察していきます。

※考察について、ご意見のある方はぜひコメント欄に投稿してくださると幸いです。

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