アインホールディングスと日本調剤について考察(後編)

さて後編では日本調剤の戦略について考察していきます。

業界2位の売上を誇る日本調剤

日本調剤は業界第2位の調剤薬局です。

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高単価の処方箋に対応し、売上の増加を狙う

日本調剤の戦略を一言でいうと、「高単価の処方箋に対応することで売上をあげる」ことにあります。

日本調剤は大学病院や総合病院を中心とした門前薬局に集中して出店をしており、全国の大学病院総数に対する出店割合は45.6%と約半数を占めています。

大学病院から処方される処方箋は高度な調剤技術を必要とする場合が多く、処方箋単価も高くなる傾向にあります。実際に日本調剤の平均処方箋単価は14.355円(2018年9月)と平均処方箋単価の9,187円(2017年度厚生労働省より)を大きく上回っています。

(参考)

日本調剤の特徴の一つに、店舗数が少ないことがあります。下記のグラフを見てもらえればわかる通り、日本調剤の店舗数は業界4位です。
高単価な処方箋に対応できる店舗という一貫性を保っているため、むやみに店舗を増やさないのです。

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高度な技術を持つ人材の採用と育成

高単価の処方箋に対応するためにはそれだけの技術を持った薬剤師がいることが前提となります。そのため日本調剤は採用や育成にも力を入れており、様々な研修制度を取り揃えています。

【研修一覧】(日本調剤の公式HPより)
・新人集合研修
・オーベン・ネーベン制(1年間のマンツーマン指導)
・15ステップアップ研修
・病院実務研修
・在宅医療研修
・メーカー勉強会
・学会発表
・検収認定薬剤師サポート制度
・疾患別社内認定


中でも日本調剤独特なのが、2014年から取り組んでいる「病院実習研修」。日本調剤は一定期間病院での実務研修を行い、薬局薬剤師の職能の向上を目指しています。

病院と薬局では、業務レベルがかなり違うらしく、病院から薬局に転職された方の中には「薬局のレベルが低くてがっかりした」と感じる方もいらっしゃるようです。

日本調剤は研修を通して病院薬剤師の同じくらい高いレベルでの業務を調剤薬局の薬剤師にも求めており、育成に力を入れていることが分かります。

参考:https://www.nicho.co.jp/career/educational/hospitaltraining.html


まとめ

企業の価値を高めるためには、以下2点の方法があります。

・ユーザーへの価値を高める
・コストをおさえて売上を伸ばす

アインホールディングスはトップラインを守ることでコストカットを主軸とした後者の戦略をとっています。
一方の日本調剤は高単価の処方箋に絞り、ユーザーへの価値を高める前者の戦略を取っています。

上記を踏まえたうえで私はアインホールディングスのほうが有利になるのではないかと考えています。

調剤薬局業界は調剤報酬改定が2年に一度あり、行政の意向によって売上や利益率が大きく変動してしまうリスクがあります。よってそのリスクにどれだけ上手に対処できるかが重要になります。

日本調剤は門前薬局を主軸としていますが、昨今の調剤報酬改定では門前薬局の評価が下がりる傾向にあるため、日本調剤が得られる利益もどんどん減っていく可能性が高いです。

その点アインホールディングスは自己資本比率高く、変化に柔軟に対応できる体制を整えられており、日本調剤よりも有利に動けます。

あくまで予想でしかないので、今後も定期的にチェックしていく必要がありそうです。


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