総合メディカルの考察

今回は調剤薬局売上第5位の総合メディカルを考察していきます。
薬局だけでなく医療施設全体に手を広げており、スケールの大きな戦い方をしているので、面白かったです。

総合メディカルの売上と事業内容

まずは総合メディカルの売り上げを見ていきましょう。

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事業ポートフォリオは大きく「医業支援」と「薬局」の2つに分けられ、2つの売上割合は1:5くらいです。

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医療モール開発を中心に、日本型ヘルスケアビジネスの完成を目指す

総合メディカルは「日本型ヘルスケアビジネス」をビジョンに掲げ、中期経営計画では重点実行項目を以下の3つに定めています。

・医療モールの開発
・病院の経営支援
・価値ある薬局の創造

この3つの戦略の中で特に取り上げたいのが、「医療モールの開発」です。診療報酬の改定や日本が目指す医療システムと深いつながりがあります。

政策への柔軟な対応で売り上げを伸ばす

2018年度の日本の医療費は42兆円程度と膨大な金額がかかっており、医療費はさらに増えていくことが予想されます。
いきなり医療費全額負担とすることはできませんので、他の方法で医療費を減らしていく必要があります。そこで国がとった方針が「地域包括ケアシステム」という制度。

地域包括ケアシステムをざっくり説明すると、「高齢者が自宅の近くで医療や介護を受けられる仕組み」のこと。
賛否両論はありますが、在宅で医療をするほうが入院するよりも医療費がかからずに済むそうです。

(地域包括ケアシステムについての細かい内容は、以下の記事を参考にしてください。)

医療モールは一つの場所に様々な医療施設が集めることで、遠くにある病院に通ったり、入院をしたりする手間がなくなり、自宅で療養をすることができるようになります。つまり、医療モールは地域包括ケアシステムそのものともいえるのです。

総合メディカルは2020年3月に200件の医療モールを目指し、医療モールの開発に力を入れています。

(「病院の経営支援」は病院の役割の明確化、「価値ある薬局の創造」はかかりつけ薬剤師・在宅薬剤師の評価向上といった、診療報酬改定に対応した戦略をとっています。)

医療分野は診療報酬改定・薬価改定によって報酬制度が変化するため、どれだけ国の政策に対応できるかが、将来的な売上高を向上させる手段と言っても過言ではありません。

他の薬局でも診療報酬や薬価の改定に合わせ、かかりつけ薬剤師や在宅ができる薬剤師を増やしていますが、その対応は薬局の範囲にとどまります。
総合メディカルでは薬局という枠を超え、医療システム全体を作るというスケールの大きなチャレンジをしている点が他の薬局とは異なる点と言えます。

医療モールは医業支援事業と薬局事業のシナジーも生む

医療モールを作ることで薬局の事業を伸ばすことにもつながっています。

現在薬局の数は飽和してきており、増加率は鈍化しています。そのため調剤薬局各社は積極的なM&Aを行って店舗数を拡大しています。

医療モールには必ず調剤薬局が必要となるため、出店のチャンスとなります。かつ医療モール自体のオーナーが総合メディカルであるため、競合の薬局に奪われることもなく、安定的に店舗数(売上含む)を増やしていくことができるのです。

上記より、総合メディカルにとって医療モール開発を含む医療支援事業を成功させることが最重要課題となります。
投資も3年間で200億円(70%は医業支援事業(医療モールの開発を含む))に充てています。

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現状は薬局の売上の20%に満たない医業支援事業ですが、この事業がどれだけ伸びるか定期的にウォッチしていきます。

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