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Kendrick Lamar - Real ft. Anna Wiseから思う虚無と自己愛について

先月、Kendrick Lamarが5年ぶりの最新アルバム『Mr. Morale & The Big Steppers』をリリースした。
HIPHOPファンならず、世界中にファンがいるKendrickの楽曲にはそのコンセプチャルなアルバム、リリックにおける文学性、様々な脈絡から多くの媒体で解説記事が出ているが、専門的なことはそちらを読んでもらいたい。

僕は、Kendrickがなぜ好きになったのか。アメリカ・コンプトンという苛烈な環境で育った彼と、日本の中流家庭で生まれ育った僕がなぜそこまで彼の楽曲に惹きつけられたのか。

一言で語るには難しいのだが、そこには人間として日々の生活を営み上での悩み、苦しみが共通してあるのではないかと思う。

今回は僕がKendrickの楽曲の中でも特に好きな「good kid, m.A.A.d city」から「Real」について僕個人が刺さるリリック箇所を抜粋して触れて行きたい。
個人的に何周か考えてこういう事も当てはまるのではないのかと、書いていくので解釈違いと言った印象も受ける方もいらっしゃるかも知れないが、その点についてご了承ください。

尚、この楽曲の対訳についてはアメブロのGenius &Cortezさんに記事があります。参照までにURLを貼っておきます。
こちらは全リリックの対訳、解説が記載されており非常に分かりやすかったです。


[Hook]
I do what I wanna do, I say what I wanna say
When I feel, and I..look in the mirror and know I'm there
With my hands in the air, I'm proud to say yeah
I'm real, I'm real, I'm really really real
俺はやりたいことをやる、言いたいことを言う
そうしたいときには…そして鏡を見れば自分がそこにいる
両手を高く上げて、誇りをもってこう言うよ
俺はリアル、俺はリアル、俺は本当に本当にリアルなんだ

[Hook]の箇所について、現代に生きる我々にとってはこう感じる人は多いのではないだろうか。やりたいことをやれているだろうか、言いたいことを言えているだろうか。仕事や家庭、パートナー関係や趣味、つまること皆が幸せになりたいし、充実した人生を送りたい。しかしながら日本で生活
していると幸せそうな人はあまり多く見かけたりはしないと僕は感じてしまう。

[Verse 1]
You living in a world that come with plan B
Cause plan A never relay a guarantee
君はプランBの世界に生きてる
プランAは何の保証もしてくれないから

And plan C never could say just what it was
And your plans only can pan around love
プランCのことはとても言えないけど
君のプランはどれも愛の周りをぐるぐる回るだけ

「君つまり僕はBの世界で生きている。」
Bの世界とは会社員や公務員であるだろうか。歴史の中でそこの環境に所属して働き続ければ、大丈夫であろうという感覚。しかしながら、我々が生きる現代ではその考え自体瓦解してきている。多様な働き方をする人は自分の周りにはいないかもしれないが、ネットやSNSを除けば、数秒でAの生き方をしている人に辿りつくことができる。ただ自分がその生き方をするかとなると、足踏みが生じてしまう。
Cはどうだろうか、やりたいことだけただやり続けるのか、楽しいかもしれないが生活はどうしていくのか、お金にならないければやっても無駄ではないのだろうか。あらゆる葛藤が生じることは誰にでもあることだし、それでも平静を装いBの生活を上手くやりこなす必要がある。

You love him, you love them, you love her
You love so much, you love when love hurts
君は彼を、彼らを、彼女を愛してる
すごく愛してて、心が痛むときでさえも愛してる

You love red bottom and gold with the sequin
You love hand-bag on the waist of your jean
ルブタンやスパンコールのジュエリーが大好き
ジーンズの腰に抱えるハンドバッグが大好き

You love french tip and trip that pay for
You love bank slip that tell you we paid more
フレンチネイルやそのお金を払ってくれる男が大好き
お金を沢山使ったって分かる利用明細書も大好き

You love a good hand whenever the card dealt
But what love got to do with it when you don't love yourself
いつでも良い「手札」が大好き
でも、自分を愛してなかったら何の意味があるんだ?

ここでの「彼」、「彼ら」、「彼女」についてKendrickは地元コンプトンの友人、家族達の刹那的な生き方を指しているのではないかと思うが、僕自身も日本で生活している何とか如何しようも無い状況でも懸命に生きている人が思い浮かぶ。コロナ禍の影響で最近はあまり見なくなったが、週末の繁華街にはスーツを着たサラリーマンが酔いつぶれていたりするのは、当たりまえの光景であったし、僕もそのような人達と上手く関係性を築くのは難しいかも知れないが、誰かにとってはその人達を必要としている人がいるかも知れない。それが反社の人間であっても言えるかも知れない。法治国家に暮らす身としてはそれでも犯罪はしてはならないし、加害者がいるので許さない行為ではあるが、、、
分かりやすいハイブランドを身に付けたい。自分が良いと思うものよりも、周り、世間が羨むものが基準になってないだろうか。
そこに惜しみなくお金を使う人が、この社会で上のレイヤーの人間なのだろうか。プレミアムな『手札』=『カード』を持っている事がステータスなのか。でも自分自身を愛せているのだろうか。

But what love got to do with it when you don't love yourself

でも、自分を愛してなかったら何の意味があるんだ?

自分自身を愛するためには何をどうすれば良いのだろうか?ある種の決まった答えはない問いにぶち当り、自己啓発本やフォロワーが多くいる著名人がそっれぽい事を書いているが、誰しもに汎用性がある内容ではない。

自己肯定感、成長、やりがい、生きがい、etc.

自分を愛せる答えは自分にしかわからない。

僕はうだうだ悩みながら、このまま生きていく気がするし、仮にお金も持っていたとしても悩み苦しみながら生きていくはずだ。

仕事を数年働いてはダレてしまう。その繰り返しを何回か繰り返している。しかしながら自分で自分を殺める事なく何とか生きている事については、少し誇りを持って良いはずだ。

やりたい事をやろう。金にならなくても。自分自身を愛せるように。


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