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【音楽レビュー】 LUNA SEA / [ MOTHER ](新録)(セルフカバーアルバム)

Track List
01. LOVELESS
02. ROSIER
03. FACE TO FACE
04. CIVILIZE
05. GENESIS OF MIND 〜夢の彼方へ〜
06. AURORA
07. IN FUTURE
08. FAKE
09. TRUE BLUE
10. MOTHER

同時期に新版「 STYLE 」も発売されたわけですが、日本の全ジャンルのロックバンドに多大な影響をもたらしたであろう2枚の超大作名盤を、30年の時を経て再構築&再解釈をするなんてどうかしている(褒めてる)。

SLAVEほどのファンではありませんが、新盤は音像の広がりがエゲツないのと重厚さ濃密があり、なんと言うか熟成されたワインあるいはウィスキーのような出来上がりというか。 熟成=五人の人生の経験やミュージシャンの技量プラス、スティーヴ・リリーホワイトの技量をブレンドしたとんでもない仕上がり。それは全曲共通なのですが「FACE TO FACE」が一番如実に現れている。

旧版MOTHERも、当時の年齢であのクオリティでの完成度も素晴らしいのですが、旧版は若さゆえの勢いというか力を張っている感じも全然悪くないし、今作の新盤も円熟味を増した感も全然悪くない。


正直新録ロージアは初見では気に入らなかったんですが、他のメタル系の曲を聞いた後にもう一度聞いたら輪郭がハッキリして気に入りましたw 旧盤ロージアはジェット機のような感じで、新録ロージアはデッカい飛行要塞ですね。ただ、普段LUNA SEAを聴いていない人が両方のロージアを聴かせた場合、初聴で気にいってもらえるのは旧作の割合が高そう。軽いし聞きやすくてキャッチーなんですよね。そして集中して聴くよりもイージーリスニングに最適でもある。

新録は旧版を聴き込んだ人や耳の肥えたリスナーのような玄人向けだなと思いました。曲の構成はほぼ変わってないんだけど、音自体の輪郭や濃度が増してるので聴いた時に「重っ!」ってなるんですよ。その重たさはハードロックやメタル系の重さとは別次元の重たさがある。こっちは集中して聴いたほうがええし。

先行配信曲としてリリースされ30年の時を経てPV化された「LOVELESS」は、アルバム内の曲たちのなかで、そこまで再構築&再解釈をされていない感じなので、新録されたシングル曲よりもこっちを出したほうがリスナーにもわかりやすかっただろう。ベースがより前に主張している他に、ドラムの音色が和太鼓ライクな感じもあるが、ギター隊の音色はそこまで変わっていないのだが響き方が尋常じゃない。VRのサウンド版のように上下左右全方位360度に響き渡る音世界は、低価格帯のイヤホン/ヘッドホンでも十分響き渡るし、高品質のイヤホン/ヘッドホンだとその先へ行ってしまいそうで飛びそうになる。まさに「聴いてみな。飛ぶぞ!」って感じだし、音の快楽主義だとメンバーの誰かが言ってたのにも納得する。


締めの曲である「 Mother ( 曲 ) 」は壮大すぎて普通に泣きそうになるぐらいの深化をしています。この曲はヤバすぎた。「やっと会えましたね」感があるんですよね。神々しさと偉大なる母が人間たちを浄化するために地上に降りてきた感がありますね。

「 Mother ( 曲 ) 」 の旧録は偉大なる母が降りてきてない状況で彷徨っていて嘆いてるし、それでも祈り続けている。旅は続く。だからフェードアウト。 新録の場合は、祈りの果てにやっと偉大なる母が自分に降りてきてくれた状況。そして自分と同じように苦しんでる者を救ってくれというMotherからのメッセージ。

「長い間彷徨いMOTHERにたどり着いた。そして今度は自分及びMOTHERと一緒に自分と同じように彷徨っている者に与える側になる」という解釈になるのかと

だからフェードアウトせずにちゃんと終わったのもそういう解釈なのかなと。同じ歌詞でもサウンドがこうも変化したら意味が変わってきそうですね。

というのもその解釈自体は手前の曲「TRUE BLUE」が関係してくるのもある。特にアウトローの箇所。旧作「TRUE BLUE」のアウトローはノイズまみれでフェードアウトしラスト曲へつながるんですが、新作はノイズは後ろに抑えられてギターのアルペジオが目立ってアウトローせずに終わったので、特に旧作「TRUE BLUE」→「 Mother ( 曲 ) 」のどちらもフェードアウトのパターンと、新作「TRUE BLUE」→「 Mother ( 曲 ) 」のちゃんと終わらせたパターンではアルバムの世界観の結末の意味が変わってくる。歌詞は同じなのに。

というわけで聴き比べた結果をなるべく簡潔にまとめると…

・レシピはそのままだが、そのレシピの再解釈および再構築を行なった。
・材料は全く変わらないが「質の良いもの」または「最適解のもの」を使った。
・そのレシピによっては若干の付け足したり省いたり、6人の熟練された技量と経験を生かしたら、見た目そのままのはずなのに全く違うのが完成した。

ということになる。それは新版「 STYLE 」にも同じことが言えるのだが、それは「 STYLE 」も旧版と新版のアルバムとしての世界観の解釈が異なってくるだろう。というわけで「 STYLE 」も聴き比べてみて、時間的に余裕があればレビューします。



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