ダブり〜1限目〜B

俺たち2人は駅に着き
財布を改札にかざしてエスカレーターを
上がるとホームに人集りができていた。

「ねぇ会長、凄い人だよ」

「本当だなぁ」
「人身でもあったんじゃないか?」

すると副会長が
「でもあれウチの制服じゃない?」

その時
「ユウか?」
振り向くと、ゴウだった。

ゴウは俺の親友だ。

「おう!ゴウ!元気か?」
と聞くと、
「おいユウ、ゴウさんだろ?お前は俺の1コ下だろ?なら、さんを付けるのは当たり前だろ?」
と、からかいながら言ってきた。
俺は、
「はぁー??まさかお前が上下関係に厳しいとは
思いもしなかったぜ。今まで敬語を使った事の無いお前がそんな事言うとか」
「それは、そうとそれは?」
と、聞くと
「あーこれか?これは俺の仲間を集団で
            ボコった奴等の頭だ」
「今日、仕返しに行くところだったんだ」
「でも、たまたま駅で見つけたから捕まえたんだ
良かったぜ、わざわざ出向く事も無くなって」

ゴウの右手には、今にものびそうな表情の男が
胸ぐらを掴まれてた。

制服のネクタイが頸動脈を締め付けている。

俺達の後ろでは他の連中が、喧嘩をしていた。

喧嘩?
なんて言っていいのか?

もはや、一方的だ。

それもそうさ
自分達の頭があんな表情じゃ、
戦意もなくなるのは当然だ。

ふと、俺の横を見てゴウは、
「可愛らしい子じゃないか?ユウのコレか?」
と小指を立てて副会長に話した。
副会長が俺の袖を掴んで、
俺の後ろへ隠れながら首を横に振りながら、

「まだちがいます」
それを聞いたゴウは、
「まだかぁ〜そりゃ先が楽しみだな」
他のホームのアナウンスや、怒鳴り声がまざり
周りはとても騒がしいく俺の聞き間違いか、
怯えて言い間違えたのかわからなかったが、
たしかにそう言った気がする。

そして、ゴウは
「なぁユウ、俺最近ダンスにハマってるんだ」
「だから今からダンスを見せてやるよ」 
と言うのと同時に駅のアナウンスが鳴った。

「3番線に到着の列車は、、、、、、、」

オレンジ色の列車がホームへ入ってくる。

ゴウは、胸ぐらを掴んだままその男を
振り回しながら、ホームで流れるメロディーを
口ずさみ、その腕をホームの外へ出した。

まるで、社交ダンスの最後の様な形。
パートナーを海老反りにさせた形だ。

いやそんな紳士のダンスと一緒にしては
社交ダンスに失礼だ。

電車は段々近づいて警笛が鳴る。

さすがに運転士もそれに気付いたのか、
ホームには、凄いブレーキ音が響く。
聞いてると身体が痒くなるキィーって音。

袖を掴む副会長の力も強くなり俺の背中に顔を
かくした。
俺は、
「おいっゴウ、やり過ぎだ!」
と叫んだ。

電車は俺達の前を通り過ぎて停車した。

するとゴウは、笑いながらその腕を戻して
こう言った。

「ユウ、どうだった?俺達のダンス」

俺は
「何がダンスだ。」
「やり過ぎなんだ。お前はいつも。」
ゴウは笑顔で
「仲間がやられてるんだ。それを守るのが頭だ」
「じゃーなユウ、たまにはルートに顔出せよ」

駅員と警察がこちらへ向かって走ってきた。

ゴウは、最後に
「何か困った事があれば先輩の俺を頼れよ」
と言いながら他の連中達と走って逃げて行った。

先輩って、まったくあいつは何様だ。
その横では、あまりの恐怖に腰を抜かしたまま
動けない状態の男がいた。

ルートとは、ゴウ達の溜まり場のゲーセンだ。

俺と副会長はホームで停まってる電車へ乗った。
副会長は、俺の袖をまだ握りしめていた。
俺は
「大丈夫か?びっくりしたろ?」
と声をかけた。
副会長は
「大丈夫だよ」
と言った声は少し震えていた。

「とりあえず座ろうぜ」
と空いてる席に座り
「ほんと大丈夫か?」
と俺が言うと
「でも、少し怖かった。あの人会長のお友達?」

「あぁ幼馴染の親友だ」
「引いたか?」
と聞くと
「引いてないよ。」
と言って握っていたパッと袖を離した。

シワがついた俺の制服の袖。
だけど俺は何も言わなかった。

「もしかして、あの人がウチの学校の
              危険人物?」
「まーたしかに…でも違うんだ」
「噂されてる危険人物は3年にいる」
「ゴウと俺は、歳は3年だけど、実際は2年と1年」
「その噂の奴等は3年にいる1コ上だ」

察しのいい副会長は
「えっ?じゃー、、、」
と聞くと俺は
「この学校には、
     俺達以外にあと2人ダブりがいる」
と答えた。

車内アナウンスがながれ、扉が閉まり電車は
走り出した。
               
             1限目Cにつづく



























この記事が参加している募集

スキしてみて

私の作品紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?