ダブり〜1限目〜E

エトウの家からの帰り道俺は考えた。
ひきこもりの事を。

いや、

ひきこもる奴の事を。
今まで、そんな話は聞いた事があるが、自分の
周りにはそんな奴はいなかったから考えた事も
なかったから。

「会長、大丈夫?」
副会長が声をかけてきた。
俺は、大丈夫ではないが大丈夫と答えた。
行きとは真逆のテンションだったがとにかく少し
考えないといけないのは確かだから。

改札を過ぎ電車に乗る。

俺は、副会長に話した。
「エトウには何か訳があるのは確かだ」
「でも、ひきこもりたい奴はひきこもればいいと
思うのだが今回俺はエトウに何があったのかが知りたい」
「国語と英語も欲しいが、それとは別にだ」

副会長は、やっぱり笑顔で
「だねっ、私も知りたい」
と言った。
「でも、これからどうするの?」

俺には少し考えがあった。
「まず、エトウの過去を調べる」
「さっき、テマエとシマキに会ったろ?」
「あいつらなら地元だから何か分かるかも
              知れないからな」
「だから、帰りにルートへ行ってみる事にする」

「私も行く」
みたいな事になりそうな気がしたから、俺は、
「今日は、1人で行くから、お前はこのまま帰れ」
「その前に行かないといけないとこもあるし」
すると副会長は素直に
「わかった。帰るね」
「会長、何かわかったら連絡してよ」
と言ってスマホのQRコードを俺に見せた。
「おっ、そうだな」と言って俺はそのコードを
読み込んでスタンプを1つ送った。

タワーマンションが見える駅に到着した。

「じゃーね。また明日ね」
と、手を振りながら降りて出口の方へ歩いて行った。


俺は、ルートへ行く前にとあるスタジオへ寄った
今日はバンドの練習だ。
音楽をやってる時は何もかも忘れて本当気持ちが
いい。
だから、俺は音楽が好きだ。
スタジオへ着くと、
「ユウ、遅いな今日は?」
と、スタジオの店長が声をかけてきた。
「タケツさん、今日は色々あって….」

タケツさんはスタジオの店長だ。
もともとは俺の高校の卒業生だ。
このスタジオは、中学から使っていてタケツさんとはもう結構長い付き合いだ。
「そっか、若い時は色々悩め」
「それが青春ってやつだ」

「ルーム①なっ」と部屋の場所を言って缶ビールをあけて、新聞の続きを読みだした。

防音扉を開くと
「おつっ」※お疲れの略
とタイケが声を掛けてきた。
俺は、
「わりぃ、遅くなった」
メンバー達は、チューニングを済ませて
とりあえず俺が来るのを待っていたらしい。

これが俺の親友でバンドのメンバーだ。

タイケ。
こいつは、ホントにお調子者だ。
でも、こいつがいつもどんな時も場を和ませる。
ギターだ。
ホントこの楽器が似合う奴だ。

そして、ウエイ。
タイケとは、真逆の人間かな?
ボケたいと言う気持ちは、わかるのだが、
普通過ぎてなんとも言えない。
闇でリーダーシップはあると俺は思う。
まさに、ベース。ぴったりだ。

ナカヒロ。
リアクション芸に関しては、こいつの右に出る
奴がいないのではないか?と言うくらい、
オーバーリアクションを取る
自分の事は二の次で人の事を気遣う。
凄く優しい。ドラム。
そのせいか、みんなの事を良く見てる。

「準備はいいか?」
とイサカが言う。
カメラをパソコンに繋ぎ、俺達に合図を送る。

イサカ。
こいつは、楽器は出来ないが俺達のメンバーだ。
言うならマネージャー兼スポンサーと言うやつだ
どちらかと言うと、スポンサーがメインか?
でも、イサカが面倒事を全て引き受けてくれる。
スタジオの手配、
ライブの段取り、
そして打ち上げの段取りも。

そして、俺がこのバンド
「OREnoAOHARU」のボーカルだ。

バンド名は「OREnoAOHARU」で
「オレノアオハル」と読む。
そのままだ。
何故この名前かと言うと、
巷では「俺のイタリアン」や「俺のフレンチ」
など、「俺の◯◯」シリーズが流行っている。
そして、バンド名に色を付けると売れると言う
ジンクスが有名な話だ。
例えば、「ブルーハーツ」「オレンジレンジ」
「グレイ」「イエモン」「レッチリ」
そんな事で、「俺の青春」って訳だ。
色々候補は、あったのだがこれがしっくりきた。

俺は、ペットボトルの水を一口飲んで、
スタンドマイクに手をかける。
すると、イサカがカメラを回して指で合図を出す
ナカヒロがスティクでカウントを取る。
タイケがエフェクトをきかして演奏する。
そこに絶妙な重低音を重ねるウエイ。
そんな奴らが演奏するメロディーをバックに
俺は歌う。
ホントこの時が好きだ。
ずっとこのまま歌っていたい。
1曲、また1曲と。
曲が終わり、イサカが指でオッケーの合図をする
「オッケー」
「今日は、これで配信しておくよ。」
そう、俺達はこの活動をSNSで配信している。
まだ登録者数は少ないがアップしている。
そして、俺達は表へ出て一服する事にした。

タイケがタバコに火をつけて
「ユウ、今日遅かったな。何かあったのか?」
俺は、イサカに
「わりぃ、コーヒーある?」と聞いた。
「ハイ、いつもの」
と言って受け取った。
電子タバコを加熱し、コーヒーを飲みながら
今日の事を話した。

「実は俺、クラスで会長になって担任から頼まれ事を、引き受けたんだけどそれが面倒な事になりそうなんだ」
するとウエイが
「会長?」
と聞いて来たので俺は説明した。

「マ、マジ!?」
「ユウお前がクラスの代表?」
と、ナカヒロがいいリアクションをとる。

タイケが続いて
「そのクラスも終わったなっ」
そして、ウエイが
「そんな面倒な事をするってユウも変わったな」
「てか、やっぱり年上のお兄さんだなっ」
と、俺をイジってるのだがなんか中途半端だ。
やっぱりウエイは普通だ。

すると、タイケが
「で、それで何があった?」と聞いてきた。
俺は、今日の出来事とエトウがひきこもりって事を話した。

イサカがパソコンを触りながら
「ユウはどうしたいんだ?」と言った。

色々賛否はある中俺はこう言った。
「まぁエトウが来れば国語と英語はゲットできるが、何故かあいつがほっとけないんだ」
「だから、あいつの事知ってあいつ自身の力で学校へ来てもらいたいんだ」

みんな、ニヤニヤしている。

「わりぃ、引いたか?」と俺は聞いた

ウエイが
「いやぁー引いてないけど、、」

ナカヒロが
「ユウも大人になったなぁ」

イサカは笑いながら編集をしている。

タイケが
「じゃー俺らも出来る事があれば協力するから」
「なぁ!?」って

みんないい奴等だ。

俺は本当にいい友達を持った。
エトウにはこんな友達はいないのか?
いないなら、これから作ってやりたいと思った。

ナカヒロが
「で、ユウ?これからどうするんだ?」
と聞いてきた。

「だなぁ。ずっとそいつの家行って部屋の前で
話してもいつ出てくるかわからないんもんな?」
とタイケが言う。

俺は、
「帰りにルートへ寄ろうと思う」
「ゴウのグループにエトウと同じ地元の奴がいるんだそいつにエトウの事を調べるのを手伝って
もらおうかと思う」

ウエイが言う。
「ゴウは元気か?あいつ無茶苦茶だからな」
イサカが
「それはいいかも知れないな」
「同じ地元なら何かわかるかもしれないからな」

俺は今日あったゴウの話をした。
みんな笑った。
「あいつ、相変わらずだな」って。

イサカが
「完了!」
「アップはいつもと同じで22:00な
      ちゃんと見て、いいねしろよ!!」
「じゃー今日は解散っ」

俺は、
「俺、行ってくるわ」
と言ってスタジオを出てルートへ向かった。
               
              1限目Fにつづく















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