ダブり〜1限目〜C

電車の中で俺はスマホにたまっていた
未読メッセージを確認して返事をしていた。

すると、副会長が
「ねぇ会長、この学校にはどんな人がいるの?」
と聞いてきた。
エトウの家の最寄り駅まで少し時間があるので
俺は簡単に話した。

この学校には、ダブりが4人いる。

俺とゴウ。
そして、3年のミナミジョウとヤマデラコウ

ミナミとヤマデラ

この2人は、俺とゴウの1つ上だ。
実際、ウチの学校のトップは本来ならゴウなのだが今もミナミなのかもしれない。
俺達が1年の時のダブりがその2人だ。
ミナミとヤマデラは中学は違うが同じ地元と
言う事で仲がいいみたいだ。

当時の最大派閥「チームジョウ」のトップが、
そのミナミだ。
暴走族とか半グレとかでは無く、
ミナミは今もストリートダンサーだ。
チームジョーは
そのダンスチーム名なのだが、いつの間にか
この名が売れた。

そして、俺とゴウが入学し、ゴウが目立った為、
声をかけてきたのがヤマデラだった。

「チームジョウに入らないか?」って。

俺は、ややこしそうに感じたから丁重に断った。
だが、ゴウは違った。
「チームジョウ?なんだそれ!?
     おい、ダブり!!お前がその頭か?」
っておかしいだろ?
自らトラブルになる様な言い方をして、
喧嘩にでもなったらどうするつもりだ。
でも、そんな事は1mmも気にしていない。

だってゴウは馬鹿だから。

でもヤマデラはいい奴と言うか大人だった。
「悪いな、頭は俺じゃないんだ」
「俺達の頭は、別にいるんだ」
「なんなら今から会いに来ないか?」
と俺とゴウを誘った。

面倒臭い事になりそうな気がしたから、
俺はそこも丁重にお断りをしてその場を離れた。

その後、ゴウはヤマデラと一緒にミナミたちの
溜まり場へ行ったらしい。

ここから先はゴウから聞いた話だ。

ミナミの所へ行くとダンサー達が沢山集まり
ダンスをしていたらしい。

ヤマデラが
「ミナミは?」
とダンサー達に聞くと
「もうすぐ来ると思うよ」
と言って少し待たされた様だ。

その時点で少しキレかけていたゴウだったが、
珍しく待っていたらしい。

すると、ミナミが現れた
「お疲れ!」
とその場に居るダンサーに声をかけて
ヤマデラの方へ向かって来た。

「この子が噂のルーキー?」

一瞬にして空気感を変えて、ゴウに話かけた

「ウチに入らないか?」

今まで、フロントサッシのガラスに向かって
踊ってた奴等全員が動きを止めこっちに集まってきたらしい。
結構な人数だったようだ。

そして、その重い空気感の中ゴウは、
「入ってもいいが、俺が頭で良かったら」
「それが、駄目なら入らない」

ミナミは、
「別にいいよ」
と言った。

ゴウは豆鉄砲を食らった様だ。

続けてミナミがこう言った。
「言っておくがウチはダンスチームだ」
「何故か武闘派グループと言われているが、
    俺は純粋にダンスがしたいだけだ。」
「もし、お前が喧嘩では無くダンスをしたいと
言うのなら頭なんてくれてやる」
「どうだ?」

ゴウは、
「そっか、あいにくダンスは苦手なもんで」
「だから、遠慮しとくよ」
って言ったらしい。
するとミナミは、
「そう言うと思ったよ」
「気が変わったらいつでもおいでよ」
「歓迎するよ」
と言った。
ゴウは最後に
「じゃー何故俺を誘った?」
と聞いた。

ミナミは、少し間を取り話したらしいが、
ゴウはその続きは俺には話さなかった。

それから、ゴウは「ディズニー」と言うチームを
作り今では、チームジョウとディズニーの
二大派閥となっている。
ディズニーは、まさに武闘派。
完全に名前負けしてるだろ?
まぁ本人曰く「夢の国」だそうだ。

チームジョウは、ストリートダンスチームだが
末端ではミナミの知らない所で半グレみたいな事をしてる噂も聞くがミナミとヤマデラがいるから
アンチがデマを流してるんだと思う。

少し引いている感じもしたので、
後は先生達の話だったり体育祭や文化祭みたいな学校行事の話をした。

それもそうだ、これから最高の高校生活を
過ごしたいと思ってた矢先にこんなダブりの
俺から他のダブりの話をきかされて引かない奴は
いないだろう?

でも、副会長は引いてる感じもなく突然、
俺の肩を叩き車窓に指を指してこう言った。

「見て、会長あれが私の家」

ふと見ると、それはそれは立派な
タワーマンションだった。

「マジで!?ちなみに何階?」
と興味津々で聞いた。
「内緒。」
「なら、最初から言うなよ」
「やっぱり教えて?」
なぜか、必要に聞いてみた。

空気も変えたかったし、
少しは普通の高校生らしい話もしたかったから。

「だって笑うもん」
って少し恥ずかしそうな表情だ。

「笑わないって」
「約束だよ」
「わかった、笑わないって」

「・・・7階」

笑ってしまった。

顔を赤くして
「笑わないって言ったじゃん」
「じゃー会長は?マンション?一軒家?」
「俺の家は団地だ、しかも1階」

副会長は笑った。

まったく内容も無く、
羽のはえたブタがハンコなんて押さない
薄い話だけど2人で笑った。

電車は、最寄りの駅に到着した。
               
              1限目Dにつづく

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