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読書記録「天使のナイフ」

今日の1冊です。

薬丸岳さんの「天使のナイフ」を紹介します。

こちらの作品、なんと著者デビュー作となっております。

あまりに完成度が高すぎて驚きました。

小説のテーマは「少年犯罪」。

主人公桧山の妻は当時13歳の少年たちによって殺害されますが、14歳未満の彼らは刑事責任能力がないため、罪に問われることはありませんでした。

4年後、その犯人の一人が殺害されたことで、桧山が疑われるのですが…。

「少年犯罪」という非常に重いテーマですが、読み応え抜群の1冊になっています。

・読後の感想

未成年犯罪についてものすごく考えさせられる1冊でした。

14歳未満で事件を起こした少年たちは、罪に問われることはなく、「逮捕」ではなく「補導」という形になります。

被害者家族にも彼らの名前が明かされることはありません。

被害者の怒りの矛先はどこへ行くのか…自分に置き換えて考えましたが、答えが見つかりませんでした。

物語が進むと、「なぜ桧山の妻が殺害されたのか?」という理由が徐々に見えてくるのですが、そこにもまた複雑な事情がからんでいます。

殺人を犯したのに、社会から守られる加害者少年たち。

一方、社会から守られることのない被害者家族。

加害者少年たちは、未成年であることで、様々な更生プログラムをあたえられ、再び社会へ出ていくことができます。

しかし、被害者家族からしたら、たとえ未成年といえども殺人者ということに変わりはないのです。

そのあたりの矛盾がずーっと続いていて、読みながらモヤモヤしていました。

加害者、被害者の両者の目線から語られるこの物語は、読者に対して難しい答えを問いかけられているように感じました。






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