マガジンのカバー画像

ES(初稿)

15
小説
運営しているクリエイター

記事一覧

ES 15

 男は、スーパーマーケットでウイスキーをひと瓶買うと、それを抱えて ー やや千鳥足になり…

5

ES 14

 女は薄暗い地下室の、冷たい地面に座り込んでいた。その向かいには、まだ幼い面影を残した少…

7

ES 13

 十六時だった。空がネイビー色をさらに淀ませたような、寒々とした暗い色を見せている中、ミ…

3

ES 12

 ロベルトは左足を前にして足を組み直した。そして椅子を少し手前に引き、やや背筋を伸ばしな…

6

ES 11

「ロベルト。じゃあ、あなたは」  ミタクエ・オヤシンは、何かを言いかけたが、言葉をつぐん…

5

ES 10

<第二章 小さな町>  ピーター・オヤシンが、件の女児強姦・殺害の容疑で逮捕され、そのこ…

5

ES ⑨

 モーテルのドアーは少しだけ開いていて、隙間から鈍い光が漏れていた。  時刻はすでに深夜であった。私は携帯を耳から離し、あたりの静けさを肌で感じながら、そろり、そろりと光が漏れる方向に向けて、少しずつ近づいていった。 「ああッ」  突然、チカの声が聞こえた。それは、叫び声と表現するには弱弱しく、どこか力が抜けた感じの、か細い女性の声であった。声は建物の少し奥のほうから聞こえ、私は声を聞いて思わず ー 入り口の眼前まで来ているのに ー 少したじろいで、立ち止まってしまった。

ES ⑧

 私は幸運なことに、ドリンク・ホルダーに引っ掛けてあった、車のキーをすぐに見つけることが…

6

ES ⑦

 私はゲイリーからの着信を取り、声をかけてみたが、返事はなかった。 「ゲイリーじゃないの…

4

ES ⑥

 なんだか暖かい陽だまりのような、『やさしくも息苦しく薄い何か』に包まれていた。私は目が…

4

ES ⑤

 機体が上昇し、安定した頃。ふと窓を眺めてみると、外はもう暗くなってしまっていた。はるか…

4

ES ④

 私がサンディエゴ国際空港に到着したのは、拘置所を出所してから数えて二十日ほど経過してい…

3

ES ③

 私とジハがウィンズローの外れにあるバス停にたどり着いたのは、十八時を少し過ぎた頃であっ…

1

ES ②

 ウィンズローの拘置所を後にした私は、ゲイリー・ヨシダとと別れを言うタイミングが得られないまま、その地を立ち去ることとなった。まず私は、返却された自分の荷物 ー バックパックの中から、衣類の隙間に挟み込んでいた ー 20ドル札をポケットにねじ込むと、通りかかったスーパーマーケットに入り、コーラとサンドイッチ、ポテトチップスを買い、空腹を満たすことにした。このウィンズローという土地はもともと通りかかった場所に過ぎず、土地勘もなく、知り合いもいない。とりあえず私はバス停に向かい、