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ヴィヴィアンウエストウッドな彼女

つるりとしたキューティクルの髪が
視界に飛び込んできた。

混み合う乗換駅でゆっくりと
私の目の前を歩くその女性は
控えめな紺色のトレンチコートを着ていた。

私は疲れた足をなんとか階段に乗せ
一段ずつ登っていく。
身体中がびっくりするくらい重い。
病欠で休んだあの子の分も
働いた所為に違いない。

足元に目をやると、
彼女のコートからはみ出たタイツに
釘付けになった。

十字架と土星のようなものを
組み合わせたモチーフが
バキバキの赤で浮き出ている。
黒地に赤のド派手な柄タイツ。

お出かけ帰りだろうか。
普通のOLではなさそうだ。

軽やかに階段を登り終えた彼女を
なんとなくじっと見つめていた。

パスケースを取り出した指先には
意外にも物騒なものはついていなかった。

きっとその小さなポーチには
煙草の一つも入っていないだろう。

ピッとタッチして改札をすり抜けていく。
背筋をしゃんとして歩く彼女のうしろで
なんとなく、明日はヒールを履こうと思った。

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