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さよならはゴミと共に

気持ち良い秋晴れの今日
不動産屋さんにマスターキーを返却し、
大量のゴミと共に、タクシーに乗っている。

はじめての一人暮らしは
なんとなく始まり、なんとなく終えた。

2年前の今頃、目を輝かせながら
家具選びをしたことを今でも思い出す。

選び抜かれた家具・家電たちは
学生時代の友人達の手伝いもあり
スムーズに搬入された。

駅から徒歩3分の私の城は
通勤にも、街に出るにも便利で
我ながら良い物件を見つけたと思った。

家賃4.5万の破格アパート。
リノベーション済の白い壁と床は
部屋を少し広く感じさせた。

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約1年前、窓を開ければ
だだっ広い空き地だったその場所には、
駅に通ずる道ができた。

夜には虫の音が聞こえる静けさの代わりに
いつの間にやら飲み会帰りの人々の声が
深夜まで聞こえるようになる。

そして平成最後の夏、
ポストへ投函された立ち退き命令で
私は地域開発の存在を知った。

最近の私はというと
どこか生活にハリが無くなった気がしていて、
伸ばしていた髪を切ってみたり
お気に入りの服を捨ててみたりした。

そんな中ほぼ同時期に来た
部屋の更新案内を眺め、転居を決めた。

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引っ越してきた時と変わらず、
業者には頼まなかった。
地道に運んで終わらせることにした。

それはできるだけ安上がりに
済ませたかったからだけど、
最終日に残ったゴミは思ったより多かった。
スーツケースはすでにパンパンで
まだ新しい突っ張り棒の存在に嫌気がさす。

電車2往復は流石に面倒だ。

私はゴミ袋5袋とスーツケース、カバンを持って
タクシーを捕まえた。
約23km先の新居を目指す。

辺鄙なところからより辺鄙な街へ。

私の選択は間違えているのかも知れないが、
それはその時にならなければ気がつかない。
いまは新生活に慣れる方が先だ。

さよなら埼玉。

束の間のノスタルジーを感じてみる。

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