きせき


深夜。2人の酒も回ったところ。
テレビも消して、やけにうるさい車も通り過ぎて、酔っぱらい共の平穏が訪れた。

「…うちのおじいちゃんが死んだ時さ、」

「うん。」

彼女のまつ毛の長さに目がつく。いつも上がってる口角が定位置に戻って、歯が見えない。

「お父さん、解放されたって言ったの。」

「…解放。」

「そ、辛いことからの解放。」

揺らしたグラスと氷の音がした。
遅いからと1個しかつけていない電気がスポットライトのように当たっている。

「辛いこと、って具体的には…?」

「えぇ…なんだろ、人生?わかんない。」

彼女の笑い方は、いつもより地味で、自嘲気味だった。

「人生って、辛いかな。」

「まあ〜そりゃ…辛いこともあるけど!」

思い立ったように声のボリュームを上げて、自分で口を塞いだ。この時間に大きな声を出せば隣人に迷惑なのは分かっているようだ。

「例えばほら、こうやってあんたと話すのは楽しい。
おじいちゃんにもおばあちゃんっていう恋人がいたでしょ?楽しいこともあったと思うの。」

「…そうだね、俺も…たのしい。」

ぎこちなく言葉にして、記録をとった。

「もし、もしね?人生全てが辛いことならさ、わざわざ辛いことを経験するためにご飯食べて、働いて、ベッドに入ってまた明日が来るのを望んでるって、馬鹿みたいじゃない?」

「…そう、かな。」

「うん。だって嫌じゃん。」

「…」

あんまり、同じ言葉を繰り返しちゃいけない、と思って考え込む。いや、か。


「そんな人生だったらみんな捨ててるよ。
なのにさ、なんで死んだら解放されたって言うのかなって。」


「…うン。」


「私はさ、死んで欲しくなかった。解放なんてされちゃ困っちゃう。貴方がこの人生の楽しみだったのに。」


沢山考ェると。段々errorがでテ来て、



「ね、▇▇。」


thatは、ぼクの名前デ、



「いつ、私はあなたの影を追いかけるのを辞めれるかな。」



▇▇ No.41 (応答なし)

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