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新海誠好きの元彼より新海誠の話をしろ

新海誠ってさ、メジャーデビューしたインディーズバンドみたいだと思うんだよ。だってさ、エロゲのOP作ってたやつが短編アニメーション作ってさ、賞取って評価されて長編作れるようになって「君の名は。」が当たったときにはもう世界中が新海誠の話をしているようだった。efで興奮して、「ほしのこえ」で応援して、「雲のむこう、約束の場所」で大きくなったなって頷いて、「秒速5センチメートル」で大騒ぎして、「星を追う子ども」で首を傾げて、「言の葉の庭」で新海誠はいいぞって周りに言いふらして、「君の名は。」を公開初日に見に行ってTwitterで訳知り顔で呟いてさ。でももう気がついちゃったんだよ。お前はもうメジャーデビューしちゃったんだなって。おめでとう。嬉しいよ。本当に嬉しい。ずっと応援してたから。でも少し寂しくもあるよ。新海誠好きの元彼が雑にまとめて馬鹿にできるくらいたくさんいて。

そもそも私は「新海誠好きの元彼」といった時点で「そんな彼と付き合っていた自分」を自虐する視線も含まれるものだと考えていました。

いやなんで追加で刺しに来たんだよ。暴力的だったね傷つけちゃってごめんねの流れで出す文章じゃないだろ。油断を誘って急所を狙うな。

だいたい新海誠好きの元彼って新海誠好き要素が全然ない。新海誠好きって一回でも言ったことあるやつを「新海誠好きの元彼」っていうレッテル貼ってサンドバッグにしてるだけだろ。もっと新海誠の作品に登場する男みたいなやつを連れてきて殴れよ。もっとよくわからない物語のエネルギーに突き動かされて弱い動機で強い行動を取れよ。かと思ったら流されるがまま主体性を失っていけよ。強いヒロインにリアクションを取るだけで生きろ。お前の重要な選択は最後だけでいい。そういうアニメを見たい。

ねえ誠、私はね。懐かしいものがたくさんあるんだ。例えば、夏の雲とか、公園で聞く雨の音とか、ネットでOPだけ話題になるエロゲとか、ほぼ一人で作ったということばかり紹介されて内容への言及があまりされない短編アニメーションとか、見下ろしでぐるぐる回るカメラとか、やたら力の入った電車の作画とか、映像がきれいなだけでシナリオが駄目って叩かれる作品とか、そういうものをね、私はずっと誠と一緒に感じていたいって思っていたよ。


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