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1杯の温かいコーヒー

彼には彼女がいた


ラインのホーム画面が彼女の後ろ姿を見た私は


やっぱりなっていう気持ちで留まるはずなのに少し気になっていた


でも分かっていた

好きにならないよう、変に距離が近くならないよう私も距離を作ってみる


そこからラインは止まった


彼とバイトで会えば笑顔で私に挨拶をして仕事に戻る


私も同様に挨拶を返してタイムカードを切ってホールに入る



それでも彼は仕事に慣れていない事に気づき私の方へ来て、手助けやアドバイスを沢山してくれた


どうしても分からないことを聞くのはやっぱり彼にしかできなかった私はまたいつの間にか彼に支えられていく事になった


社員に聞きなよって思うかもしれないけど


2ヶ月経った時には社員の言葉や態度が苦手になっていった私は彼に逃げていたんだ


社員は怒りっぽく態度が急変する人ばかりでそんな人には聞くにも聞けなかった


私がミスしないかホールで見張っているところを見つければ逆に緊張してミスも増えればその圧が怖かった


「なんで〇〇しなかったの、〇〇しなきゃ駄目じゃん」という社員


「〇〇できる時は〇〇した方がいいよ、次からは気をつけてね」という彼


はあ、どっちが大人なんだろう笑


伝え方も表情も全然違った


終われば、「何か飲む?」とキッチンに入ってる彼が私の目の前に現れた

作ってくれたコーヒーはいつもより温かくてその日の不安も緊張も全部そのコーヒーが、優しく包み込んできた


彼とシフトが被る日の帰りは清々しくなっていた


でも私は彼に恋心は抱いていなかった


彼女がいる事を知ってるから


ううん、それだけじゃないよ勿論


でも、"好きになっちゃいけない"ってもう一人の自分がそう耳で囁いて来た気がしたんだ




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