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せまりくるもの

私の仕事は、少しばかり特殊で、人様の話を聞く事が多い仕事です。
具体的に何をしてるかは、後の講釈にして、本題に・・・
尚、私が書き残す話は、全て許可を得ております。
但し、聞いたお話なので、綺麗にオチが付くモノではありません。

では、始めましょう。

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私が何故この様な文章を書くのか、
それについて、少し話そうと思います。

私が幼い頃、
小学生の頃、3年か4年の頃だと思います。
我が家は両親共働きで
母は看護師の仕事をしていたので、
所謂、夜勤の夜に母を見送り、
弟と父が帰るのを待つこともありました。
その日、夏の夜でした。
夕方、夜勤の母を見送り、弟と父が帰るまで
TVを観ながら過ごしていました。
その内、父が帰宅し食事などをして、
いつもの様に就寝の時間に。
割と広い家だったので、夏と冬は寝床を変えて寝るのが
我が家では、普通の事でした。
夏場は、我が家の通称「川の部屋」と呼んでいた、
敷地内のすぐ近くを小川が流れる部屋で寝ていました。
窓の一番近くに父、その隣に私、その隣に弟という風に。
窓と言っても部屋の二面全面にあり、
それに網戸をつけており、涼しい風が通り抜けるので、
いつもすぐ寝て、朝まで起きる事はほとんどありませんでした。
その日も、「オヤスミナサイ」と言って就寝しました。
「・・・」
何故か突然、目が覚めてしまいました。

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「あれ・・・
何だろう・・・」
開いてしまった目を閉じてまた寝ようとすると、
余計に意識がハッキリして行く。
不思議な感覚でしたが、同時に嫌な感じを覚えました。
「目を開けちゃ駄目だ。」
そんな気がして、もう一度目を閉じた時、
草むらを人が歩く音がしました。
「えっ?」
聞こえ間違いかと思いましたが、目を閉じていたので
むしろ、耳は敏感になっており、
「何だろう、」
と自分が寝ている頭の上と
父親が寝ている向こう側の
二か所にある窓に意識を集中しました。
自分が寝ている頭の上の窓の方から、
ザザザ、サワサワ、
と人の歩く音が、確かに聞こえました。
「ええ?」
ザザザ、サワサワ
草を踏み、余分な草を擦る足の音。
「川の方から来てる、」
ザザザ、サワサワ
「こっちに来てる・・・」
この夜中、川の方から自分達が寝ているこの部屋に向かって
誰かが来る
もうこれだけでパニックでした。
「どうしよう・・・」
ザザザ、サワサワ
どんどんと近付いて来ている様でした。
「お父さん・・・」
すぐ横で寝ている父親が起きてくれないかと
こっそり手を伸ばしてゆすってみましたが
一向に起きる気配はありません。
ザザザ、サワサワ
「起きてるの気付かれちゃいけない」
それだけは、守らなければいけないと思いました。
そう思ってると音が、
ザザザ、サワサワ
から
カツカツカツ
と乾いたモノに変わりました。
「・・・!」
それは、寝ている頭の上の窓じゃなく
草むらから、コンクリートの敷かれた場所、
父親の方の窓からの音に変わったということでした。
「やっぱり、聞き間違いじゃない!」
震えるというより、全身に力が入っていました。

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カツカツカツ
まだ遠くに感じる音ですが、
コンクリートの敷かれた場所を革靴で歩いてる様な音でした。
カツカツカツ
近付いて来るのは間違いない、
もう、どうして良いか分からくなり、
咄嗟に
「おじいちゃん、おばあちゃん助けて、
ご先祖様助けて、神様助けて、仏様助けて、」
と誰でも良いので助けてくれそうな人にお願いしました。
何度も、同じ言葉を念じる内に、
お盆のお坊さんがお経をあげるシーンを思い出しました。
「なんまんだぶつ、なんまんだぶつ、」
と必死に念じました。
カツカツカツ・・・カツ
と足音が、今寝ている自分と父親の向こうで止まりました。
「ひい・・・なんまんだぶつ、」
兎に角、怖くて必死で念じました。
目を開けたら絶対、怖いことになる、
「なんまんだぶつ、なんまんだぶつ、」
すると、父親ではない距離から
「・・・千年(仮)」
と呼ぶではありませんか・・・
「!」
もう、パニックを通り超していました。
「なんで?僕の名前知ってるの?」
私の名前は、大人でも読めない人がいる程、少し変わった名前でした。
その私の名前を知っている、そして呼んだ・・・
「何だろう、この目を開けてちゃいけない、
返事もしてはいけない、気付かれちゃいけない、
何だろう、この感覚は・・・」
すると
「・・・千年」
また私の名前を呼んだのです。
「!!!・・・ひっ」
私は兎に角この状況を脱したかったので
「なんまんだぶつ、なんまんだぶつ、なんまんだぶつ、なんまんだぶつ、」
何度も念じました。
「千年・・・」
その何かは、私の名前をそれまでの二回とは違うニュアンスで
呼ぶ、というより、諦めた感じの声で言い、
カツッ・・・カツカツカツ
と遠ざかったのです。
「助かった・・・」
私はまだ怖く目を開けて開けられずジッとしておりました。
「何だったのだろう」
しばらくしてそんなことを考える余裕が生まれた時、
窓の外の虫の鳴き声も聞こえる様になったのです。
「大丈夫・・・か?」
そう思い、頭の上にある時計を探しました。
時間の文字だけが大きい、旧式のデジタル時計でしたが、
4:44
を示していました。
「ああ、夜が明けるなあ・・・」
と何気に父親の背中越しに窓・外に目をやると
そこには、

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真っ黒い塊と大きな目玉がこちらをジッと見ているではありませんか・・・
私は声も出せず、あまりの怖さに意識を失ってしまいました。

目が覚めると、父親は仕事に行く準備をしていました。
私は、昨夜の出来事を話すべきか迷い、結局、話ませんでした。
それから、何事もない日常が始まりました。
結局、アレが何でどういう現象なのか、
何故、私の名前を知っていたのか、
すべては、謎です。

それが、すべての始まりだったのです。

どっとはらい。

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