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1000回ストリートライブの季節 〜いつも路上にいた3年11ヶ月〜

【心に残るストリートライブ ベスト3】#06

1000回ストリートミュージシャンの
きたむらたかしです。

以前、
書いて欲しいテーマを
募集したところ、
いくつかお題をいただきました。

その中から、
【心に残るストリートライブ ベスト3】
を今回のテーマにして、
書いてみたいと思います。

【第3位】

ある夜、歌っていたら、
ホロ酔いの
女性2人組が来ました。

カバー曲を
2〜3曲聴いていただき、
とても喜んでもらえました。

投げ銭をくださり、
CDも買っていただきました。

話をしてみると、
お二人は母娘でした。

オリジナル曲も聞かせて、
とのリクエストがあり、
僕は『光景』と
『メイテル』を歌いました。

歌うにつれ、
だんだんと
二人のテンションが
下がっていくのがわかりました。

お気に召さなかった
のかもしれない…

場はなんとも
気まずい空気になりました。

お母さんの方から、
ねぇ、これから飲みに行かない?
いろいろ話もしたいから、
と提案されました。

いつもなら断るのですが、
トーンダウンさせてしまった
負い目もあり、
行くことにしました。

近くの居酒屋に入り、
乾杯し、
あらためて
いろいろなお話をしました。

お母さんは、
率直にものを言う方で、

歌詞の言葉がふるい、
メロディーがありきたり、
等々のご批評を
いただきました。

娘さんは、
その批評には
かならずしも
同意するふうではなく、

今後の活動方法などの
意見をくれました。

その場をご馳走になり、
またの再会を約束して、
別れました。

僕は道具を片付けに帰り、
トイレに入りました。

その途端、
自分でもビックリするくらい
号泣していました。

1000回のストリートライブで、
涙を流したのは
この一度だけです。

悔しかったのか、
情けなかったのか、
腹が立ったのか、

たぶんそのぜんぶの
涙だったと思います。

あの涙のいちばんの理由は、
自分の曲を守ってやれなかった
不甲斐なさだったと
今ならわかります。

いま僕のストリートライブの
レパートリーは、
ほぼオリジナル曲
ばかりになりました。

歌っていて、
いまがいちばん楽しいです。

【第2位】

ある夜、

オリジナル曲
【Everyday is birthday】
という誕生日の歌を
歌っていました。

すると右方向から、
明らかに足取りの
おかしい影が
近づいてきます。

視線を向けると、
スキンヘッドの男性が
こちらに
向かってきました!

険しい表情で、
ベロベロに
酔ってるようです。

男性は僕の背後に回り込み、
危険を感じたので
歌うのを中断しました。

つまらない、
ありきたりの歌を
歌いやがって!と男性。

わかりました、
行くまで歌いませんので、
どうぞ、と僕は
行き先に手のひらを向けました。

オレがプロデュースしてやるから
歌ってみろ!と男性。

いいや、歌いません、
ですから、
どうぞ行ってください
と僕。

通行人に
コイツの歌はくだらねえって、
言いふらしてやるからな!
と凄む男性。

どうぞ、
僕は行く方に手を
向け続けました。

男性は、
くだらない、つまらない歌だ
とかなんとか、
ブツクサ言いながら、

振り返ってはにらみ
振り返ってはにらみし、
去って行きました。

僕はホッとしながら、
目に涙を
こらえていました。

男性の理不尽なからみが、
本当は歌どうこうではなく、

自身の不満のはけ口に
されてることが
わかったから、
とても悔しくて悲しかった。

僕は大きく深呼吸し、
気を取り直して
『僕らの園』を
歌いはじめました。

そしたら、
ひとりの女性が
足を止めてくれました。

歌い終え、
よかったら
何か歌いましょうか?
と声をかけてみたら、

歌いたい曲を
聴かせてください、
とのことでした。

誕生日はいつですか?
と聞いてみたら、
ついこの前でした、とのこと。

お名前をお聞きして、
さっき中断させられてしまった
【Everyday is birthday】
を歌いました。

♫ハッピーバースデー・
ディア・○○さ〜ん

歌い終えると、
女性はこちらに
やってきて
投げ銭してくれました。

女性は泣いていました。

さっき、
『ありきたりな、
つまらない歌』
と罵倒された同じ歌が、

女性にとっては
意味をもつ
歌になっていました。

僕は『歌』のもつ、
両極端な価値観
のようなものを
見せつけられたような
気がしていました。

そして、けなされた歌に
また自信を取り戻せて
やれたことを
うれしく思っていました。

【第1位】

その夜は、
歌う前から
疲れていました。

なんとか歌い終わり、
道具を片付けながら、

その場に
へたり込みそうなほど、
クタクタになっていました。

そのとき、
今日は終わりですか?
との女性の声。

顔をあげると、
女性3人組が
立ち止まっていて、

いつもブルーハーツの『青空』
歌ってますよね!
と笑顔で声を
かけてくれました。

いつもなら、
よかったら
歌いましょうか?

と、さっとギターを
かまえるのですが、

その日は疲れ切っていて、
もう1フレーズすら
歌えそうに
ありませんでした。

また、今度よろしくお願いします!
とあいさつし、
せめてもの気持ちと思って、

体じゅうの力を集めて、
ニッコリと
笑顔を向けました。

すると、
ひとりの女性が
駆け寄って戻ってきて、

これ、置かせていって!
とだけ言うと、

バッグのところに
なにかを
押し込んで
走り去って行きました。

なんだろう?
と思って見てみると、
畳まれた
2枚の千円札でした。

なにが起こったのか、
すぐにはわからないくらい、
それは不思議な
出来事でした。

投げ銭は
これまでに何度も
もらってきたけれど、

まったく歌わずに、
2千円もの
お金をもらうなんて…

僕が彼女たちに
あげれたものは、

その日の
最後のちからを
ふりしぼって
差し出した、

なけなしの笑顔
だけでした。

なにが、
どんなふうに
女性のこころに
届いたのかは、
わかりません。

でも、このお金は、
僕がストリートライブ
でもらった

どんなお金よりも、
尊く、
価値あるもの
だったと思います。

そして、ひとのこころに
なにかを届ける
ということが、

どんなことなのかを
教わったような
気がしたのでした。

今回は、
【心に残るストリートライブ
ベスト3】をテーマに
書いてみました。

どれもそれぞれに
思いがあり、
実は順番は
つけられません。

また、このベスト3には
入っていない、
ささいな出来事こそが、

今でもありありと
生きた記憶に
なっています。

これからも、
一度きりの、
とびっきりの体験を

楽しんで
歌っていきたいなと
思っています。

なにかしら、
こころに響きましたら、

サポート(投げ銭)
していただけると、
とてもうれしいです。

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