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誘いを断る

 大学時代の友人グループからの誘いを断った。

 休みの日に遊ばないかという内容で、2年以上会っていない子が連絡をくれた。
 
 実を言うと、グループの中でも、連絡くれた子のことは特にどうってことなかったのだが、そのグループの中心的な子のことがとても苦手だった。仮にその子をAとする。

 大学時代の私は、いや、大学を卒業した後も、私はAとの付き合いを続けた。

 Aは、優里の「ドライフラワー」の歌詞みたいな女子だった。自分自身を「不器用で頑張り屋さんでかわいい」と思っている、現実でも、SNSでの不特定多数に対しても、よく喋る子だった。

 Aのセンスを羨ましくなることも多々あった。けど、なぜかAに見下されているようにも感じていた。Aと私の所属するコミュニティでは、Aの方が圧倒的に顔が広く、私は脇役だった。

 問題は私の方にあるのかもしれない。
 でも、Aに拘泥して、Aを嫌うのに付き合い続ける自分が本当にいやになった。

 

 誕生日を祝われなくてほっとしていた。自然に距離を置ける時が来たと思った。

 そしたら、一週間以上遅れて、長文のお祝いメッセージがAから来た。大半は誕生日とは無関係で、結婚報告を私がAのグループにしていないことについて、憤慨しているような文面だった。

 それ以来、遊びの誘いが来るのではないかと思うと胃が重くなり、ふと思い出すと仕事が手につかなくなった。

 Aと仲のよかった、今回連絡くれた子からの通知を見た時も、眠りが浅かった。

 それでも遊びの誘いを断るかギリギリまで悩んだ。人間関係って保ったほうがいいのではとか、長期休暇に友達と会わないのは世間一般に照らすと寂しいのではないかとか、枝葉の理由を考えていた。

 しかし結局、断った。
 途端に心が軽くなった。

 結婚したことを、連絡をくれたその子にも伝えると、さらにもう少しましな気持ちになった。
 曇天の昼間にカーテンを開け続ける痩せ我慢をやめて部屋のあかりをつけた時のような。

 とりあえず、気乗りしない誘いに無理やり行くよりは、彼女達に対しても誠実だったと思う。

 断ってよかった。