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写真も錦(にしき)も飾れぬオフィス。

 最近気づいたんすよ。
 自分の職場、デスクに写真飾ってる人が多いなあって。

 いざしげしげと眺めてみると、けっこうバラエティに富んでいる。職場のデスクとかいう不毛の大地を耕さんという情熱のもと、みんなして創意工夫を凝らしてる。家族やペットの写真のようなド鉄板チョイスの方もいれば、旅行先の風景だとか夜景だとかのオシャンティ寄りな方もいる。
 何より目を引いたのは男性K-POPアイドルのブロマイド。しかも同じ職場の三人が揃いも揃って同一人物のそれを飾ってる。おそらくは符牒ふちょうの一種だと思われます。たぶんカルテルとかが組まれてる(偏見)。 

 自由。割と自由。秩序を乱さない範疇ではあるけれど、めいめい好き勝手にやっている。「デスクここは俺の領土だ文句あっか」と無言のうちに主張しまくってる。
 デスクこそが我が城。我が国。我が領土。誰も彼もが独立独歩の体現者。全員勤め人なのに。

 
かく言う私は、そんな目にも眩しいインディペンデンスな志はビタイチ持ち合わせておりません。デスクにあるのは仕事用の端末、そして金属製のブックエンドに挟まれた書類のファイル。そんだけ。

 That's味気無し。
 無味乾燥のサップーケイ。
 夢も希望もありゃしない。
 我が行く道は荒涼の、ともは引きずる影ばかり(by 装甲騎兵ボトムズ)。

 職場は自己表現の場じゃなくておしごとするところだと割り切ってるんで、別に不足はありません。何ならサップーケイくらいが丁度いい。
 だけどやっぱり、あり得ぬifルートを妄想するのが人のサガ

 もし自分がオフィスに写真を飾るなら、どんな写真を飾りたいかなあ。と言うか、そもそもどのラインまでなら許されるのかなあ。
 働いても働いても終わらねえどころか増殖しまくるタスクを前に、やる気が雲散霧消しきった昼下がりのオフィスでつらつら考えました。以下に候補を列挙します。
(※そもそもオフィスに写真を飾る事自体論外という声もあるかと思いますが、その辺の議論は置いといてください。全編ただのヨタ話です)




①家族

 ド鉄板その1。本人のモチベアップはもちろんの事、世間体的にも(たぶん)よろしい。オフィスに飾る写真としては安牌中の安牌なんでしょうね。
 ただ、これ書いてる奴はカミさんも子どもも持たない独り者なんすよ。基本的にこのカードは切れません。実家の家族写真くらいは飾ろうと思えば飾れるけど、それって見た目的にどうなんかなあ。
 と言うかですね、そもそも実家の写真なんて職場に飾ろうもんなら、里心がついて仕事どころじゃなくなるんですよ。世間体とか見た目以前に己のモチベが荼毘に付す。いずれにせよ私にとっては除外対象です。
 それでも強いて言うなら、102歳で大往生を遂げた祖父の写真は飾りたいですね。一族で最も勤勉で、しかも環境への不満をただの一度も口にしなかった人でした。仕事場に飾る写真としては真面目に良い刺激になると思います。職場に遺影を飾るとかいう行為が社会的にアリなのかは別にして。

②ペット

 ド鉄板その2。飼い主の癒やしペットちゃん。柴犬なんかいいですよね、モフモフしてて元気いっぱいで超癒やされる。
 でも個人的には無理っす。何でって、癒やしの度が過ぎる。ペットの可愛さに魂ブッコ抜かれた直後に職場とかいう現実に戻れって、何すかその気圧差で苦しめる系の拷問は。そのまま直帰させてくれ。そんで猫カフェ行かせろ。
 
 あともう一つ言うと、ペットの写真を職場で見ようもんなら絶対思ってしまうんすよ。「ああ~こいつらって良いよなあ~!! 仕事の責任なんて一生知らずに済むんだもんなあ~~~!!!!!」って。
 いやまあね、実際にはわからんですよ。人界には人界の、獣界には獣界の大変さがあるでしょうから。それでもやっぱり、実家で飼ってる猫とか見たら上記のような事を思わずにはいられない。
 実際、ずいぶん昔に自分の親父が似たような事を言っていたのを書きながら思い出しました。庭先で放し飼いにしてた矮鶏チャボを眺めながら「ニワトリになりてえ」とか呟いてんの。
 小学生当時の自分はそれを聞いて爆笑してましたが、今になって少しだけあの時の親父の気持ちがわかるようになりました。おとなになるって、かなしいことなの……(by バハムートラグーン)。

③風景

 ド鉄板その3。思想とかその人の背景が見えない分、一番カドが立たないチョイスと思われます。
 それでいてリラクゼーション効果もバッチリ。その効果のほどは、故・水木しげる先生のエピソードからも伺い知れます。聞くところによると、水木先生が人生で一番忙しかった時期の息抜きは庭の柿の木を眺めることだったそうですから。ただし数秒間だけ。さすが妖怪の水木先生は格が違った。

 真面目に話すと、よくある旅行先の写真とかはあまり興味が湧かないですね。職場に飾る写真としては現実逃避の色が強くてモチベが下がっちゃう。
 個人的には、昔住んでいたところの写真とかを飾りたいですね。具体的に言うと、昔世話になってた東京のボロアパート周辺の写真とかを飾りたい。家賃の安さと築半世紀という年季が相まってか、軒並み世捨て人しか住んでいないようなトコでした(もちろん自分を含めて)。
 あの頃の生活を懐かしむと同時に、明日をも知れない境遇からここまで来れた過程を思い返して奮起したい。これはガチでやってみたいですね。今度東京に行くことがあれば、世話になった大家さんへの挨拶がてら写真を撮らせてもらおうと思います。

④食べ物

 いや実際見たことないですけどね、デスクに料理だの食材だのの写真を飾ってる人なんて。
 でもよくあるじゃないですか。『自分へのごほうび』と銘打って、その仕事を乗り越えたらなんか美味いものを食べようと考えるのは。それを写真でやってみるのはどうかなあって思いつきです。

 ひとしきり考えてみました。
 やっぱダメです。どんな豪勢な食い物でもダメ。特上寿司だろうがA5ランクのステーキだろうが絶対ダメ。カワハギの肝付き薄造り&日本酒の最強タッグですら危ない。
 見た目がどうのの問題じゃないんですよ。つらい仕事の最中でそんなもん眺めていたら「その食い物=仕事」として脳に刷り込まれる気しかしない。いざ実物を前にしたときには仕事が頭をよぎって食欲が失せること請け合い。よってダメ。
 ハレの日の食事じゃなくてケ(=日常)の日の食事ならいいかって? いやいやなお悪いっすよ。魅力あるハレの日の食事ですらダメなんだから、普段づかいのメシなんてなおさら太刀打ちできる気がしない。
 例えばサバ味噌の写真なんかデスクマットの下に貼り付けるじゃないですか。カチャカチャ書類作成している時でも案件処理にウンウン頭を悩ませている時でも四六時中サバ味噌が目に入ってくるんすよ。そんな生活を一週間も続けたら、私ァ未来永劫サバ味噌を食えなくなる自信がありますね。グッバイマルハニチロの月花缶詰め。いやこれただの狂人だな。

 
あーでもどうなんだろう。食事じゃなくてティーブレイクの写真ならアリなのかな。ホットコーヒーとチョコレートのスナップとか、モノによってはシャレオツで良さそうだなあ。一目見ればホッと一息つけそうだし、これはアリかもしれませんよ奥さん!! あ、普通にコーヒー淹れればいいのか。

⑤書

 『書』とか言われると何じゃそらと思われるでしょうが、要は名言とか格言です。己のガッツを奮い立たせる類いの言葉。

 ある意味では一番飾りたい。だけど絶対に飾りたくない。
 実際、職場の中休みとかにスマホで読み返したり思い出したりしてるんですよ。自分が感銘を受けた言葉とかを。やっぱり言葉や文章が好きな────と言うより、人生に欠かせない糧だと思っている────人間なので、そういう言葉たちが一番のエネルギー源なんです。
 でも、得てしてそういう言葉ってのは人格のコア中の核なもんで、おいそれとは人目に見せられません。仮にその言葉を飾っているのを職場で見られて「それってどういう意味?」と聞かれたとしたら、うまく説明できないだろうし、そもそも説明したくもないなと。
 職場の人たちを信頼していないわけじゃないんですよ。ただ、多少のつながり程度では語れないものなどいくらでもあるという話です。その言葉に対して思うところ────自分の思い入れや抱いている熱量────をそのまま伝えたら聞かされた方は困惑するし、かと言って世間話のレベルに落としたら、その言葉に対して自分が持っている熱量が一気に冷める。陳腐化する。極端な物言いをすると、人生の支えを一つ失う事にすら繋がりかねない。
 多分に感覚的な話ですので、何言ってんだかわかんねえと思われる方も多いと思われます。ただ、伝わる人にはかなり伝わる話でもあるんじゃないかなと。
 要するに、情熱は胸に秘めておきたいという話です。ニュアンスの不足に目をつぶれば、これが一番近い表現でしょうか。


 まーでもアレですね。そういうナイーブな話から離れて言うと、文字通りの『書』も飾ってみたいですね。よくわからんけどスゴそうな言葉が、太字かつ達筆な筆捌きでデカデカと大書されてんの。
 例えば至誠通天とか。寂滅為楽なんてのも良い。
 うーんいかめしい。よくわからんけど見る者すべてを威圧する。これはヤ◯ザの事務所ですね間違いない。あらぬ疑いをかけられる前に即刻額縁を外しましょう。




 えー、オフィスに飾る写真にかこつけて取り留めもないコトを喋ってきましたが、いい加減とっ散らかってきたんで〆にしたいと思います。

 縷縷るる書いてみて思いましたが、オフィスに写真を飾るってのは、詰まるところ自分のセンスを社会に開陳することに他ならない行為ですね。
 私個人としては、決してそれが悪いとは思いません。むしろやれる人は全然やっていいと思う。だけど自分のような慮外者、明らかに世間からズレた人間がそれをやるのはリスクがデカすぎるように思います。周りも自分も得しない。
 マイノリティがそういう事をやるのはパブリックの場じゃないの。こういうnoteとかの日陰なの。石の下は暗くてひんやりしているから居心地が良いの。みんなちがってみんないい。

 そういうわけで、私がオフィスに写真を飾ることは今後も(おそらく)ないと思われます。職場のコミュニケーションは今のところ円滑なんで、このまま過ごせればそれでいいなと。
 職場はあくまで仕事の場。自己表現はnoteその他の文筆活動。そういう感じでメリハリを効かせて日々過ごしたいもんです。








 ただ、一つだけやってみたい事がありまして。







 まずこの写真を飾るんスよ。

画像出典:高校鉄拳伝タフ

 

 そして、この写真を見た奴からこう言われるんスよ。

画像出典:高校鉄拳伝タフ

 このコンボが成立する職場なら写真を飾ってみたいスね。

 忌憚のない意見ってやつッス。

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