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植樹をしなくても自然は自然に回復するのでは?

「自然」は成り行きで成立するもので、植樹なんかしなくても良いのでは?という素朴な疑問、ありますよね。

植樹した場所と植樹しなかった場所の比較

実は「植樹をしなかった場所」もあり、自然に植生が回復するかどうかの答えがわかります。
知床五湖とカムイワッカ方面との分岐点、ここにしれとこ100平方メートル運動を紹介する看板があります。見晴らしがよいのであえて植樹をしていません。

1970年代後半の写真がこちら。



そして2021年の写真がこちら。


複数あった看板は寄付者様のお名前が書かれた名札で、1980年代にしれとこ100平方メートル運動ハウスが建設され、施設内に名札が移設されました。

そして背景にご注目ください! 看板より右奥が植樹されているため針葉樹が伸びていますが、左奥はササ原で、このエリアは植樹されていません。

つまり、自然復元活動をしていない場所がササ原になっています。ササ原は地表を暗くして樹木が芽生えても成長が阻害されます。

また、この地区は風が強く、木がまっすぐ立ち上がりにくく、冬には雪がたまらないので若い木が寒風にあてられて成長しません。雪が風で飛ばされて積雪が少ないと、冬に空腹のエゾシカがやってきて植物を食べる際に雪を掘らなくていいので食べられやすい、という要因もあります。

森づくりをしてない場所の成長阻害要因は、ササ、風(雪)、シカ、ということになりますね。

さて、離農から45年以上経過していまだにササ原にしかなっていないことはわかりましたが、成り行きで自然に森になるまではどれくらいかかるのでしょうか。

およそ2000年かかる

知床博物館の出版物『知床の地質』によると、知床五湖の地層から検出された植物の年代がわかっています。
そもそも知床連山は火山で、知床五湖は山が3900年前に噴火・崩壊して形成されました。(名残で今も台地に岩石が転がっています)
そのあと、草などの炭質物が堆積し始めたのが1900年前です。差し引き2000年くらい経てば植物が生えてくることになります。

もう1つ、知床連山の羅臼岳の噴火の事例も見ましょう。
羅臼岳の噴火のうち、大きな噴火は2300年前で、「弥三吉水」より上のは火砕流の堆積物でできています。焼かれた木炭の年代測定が行われており、噴火の時期が特定されました。つまり、登山道のうち、上の方は2300年前の噴火で森林が燃やされていたのです。ここから現在の私たちが見る森に至るまで2300年かかっています。

私たちが活動するしれとこ100平方メートル運動地は、耕作され、一度森林が伐採されています。樹木を焼いた跡も残っています。そこから開拓以前の森林らしくなるにはどれくらいかかるのでしょうか。仮に2000年かかるとして、

「じゃぁ2000年放っておけばいいじゃん」と思う人と、
「2000年は待てない。ヒトが壊した自然、なにかできることはないか」と思う人がそれぞれ居ていいと思いますが、わたしたちは後者です。

私たちが住む土地は、みな例外なく自然を壊して作られた場所ですので、自然破壊だー!と、とがめる資格はありません。ただ国策の開拓が、「離農した」とあっては話が変わってきます。人がいなくなれば土地だけが残ります。動物が戻ってきても、彼らが豊かな食べ物を得られないのでは困ります。

そういうわけで、自然の回復を早めるために、自然復元活動をしています。

つまり、実はこの活動は、人間の考え次第で行われているもので、文化の活動です。ニーズがあって商売により成立している経済活動ではなく、自然に発生する物理化学の性質もなく、法律で定められたから始まったものでもありません。

全国のみなさまからのご支援のおかげで、土地が保全され、自然復元活動が続けられています。人間が破壊した自然を人間が治しているのです。本来2000年かかる回復を、100年、200年かけて手助けできたらいいな、と考えています!

読んでいただきありがとうございました。

こういった取り組みはみなさまのご寄付や情報発信・拡散で成り立っております。
いつも応援ありがとうございます。



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【しれとこ100平方メートル運動の森・トラストとは】


かつて乱開発の危機にあった知床国立公園内の開拓跡地を保全し、原生の森を復元する取り組みです。 北海道斜里町は、知床国立公園内の開拓跡地の保全と原生林の再生を目指し、1977年に「しれとこ100平方メートル運動」を開始し、未来に向けて活動を続けています。 しれとこ100平方メートル運動の森・トラストは、全国の個人、団体・企業の皆さまからの寄付金によって支えられています。

しれとこ100平方メートル運動公式ホームページ
https://100m2.shiretoko.or.jp/



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