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水滸噺 12月・1月【発足シシハラ被害者の会】

あらすじ
養生所好漢安道全 遂に人を殺め
青面獣宝剣吹毛剣 遂に三奇還る
子午山勢モノマネ 神箭的を得ず
遊撃隊副官御竜子 九紋竜に堕つ 

すいこばなし 注意書き
北方謙三先生水滸伝,楊令伝何でもありな二次創作です。
・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、スマホにPCなど電子機器も飛び交うし、あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界からお届けします。
・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。
楊令伝編で出てくる好漢は、すなわち水滸伝を生き残った者ということですので、未読の方はその点ご留意いただいた上でお読みください。
・作者のtwitterにて連載しています。 
・今月号、バックナンバーのご意見ご感想、リクエスト等々、こちらまで
 お寄せいただけると、とても嬉しいです!いつも助かっています!
・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません。

久しぶりの日常編まとめ投稿です!
それでは行ってみましょう! 

梁山泊

梁山泊…久しぶりに帰ってくると、ここに暮らす者誰しもが、心からホッとするらしい。

騎馬隊

騎馬隊…頻繁にやらかす騎馬隊隊長のせいで、指揮権を奥方に譲ったほうがよいのではないか、と聚義庁の議題になった。

人物
林冲(りんちゅう)…どうすれば記念日を忘れずに済むだろうか…
索超(さくちょう)…忘れない所に書いておくのは?
扈三娘(こさんじょう)…身体中に記載しておけば忘れないのでは?
馬麟(ばりん)…予め指に紐を巻いて、忘れないように念じておくのは?
郁保四(いくほうし)…煩わしくて引きちぎってました、馬麟殿。

1.
林冲「…」
張藍「」

索超「またやらかしたぞ、林冲殿」
郁保四「聖夜の生誕の夜に…」

?「♪〜鉄笛〜♪」

林「!」
張「?」

「」

林「この箱は」
張「もしかして私の?」
林「…おめでとう、張藍」
張「愛してます、林冲様!」

索「見事」
郁「流石」
扈三娘「やれやれ」
馬麟「興味ない」

林冲…一体誰が…
張藍…彼女は彼女でやっぱりチョロい。

索超…じゃあ飲みに行くか。
馬麟…悪くない。
扈三娘…いいですね。
郁保四…王英は、扈三娘殿?

二竜山 

二竜山…またとんでもない新商品が生まれてしまった…

人物
楊志(ようし)…新商品とソーセージで嫁の済仁美がえげつない遊びをし始め、楊令と戦々恐々。
秦明(しんめい)…ここ数日仕事が手につかなかった結果、部下に頭を下げて休ませてもらっていた。
解珍(かいちん)…貸しだぞ、といいつつ、育児用品の発注は完璧かどうかの再確認を何回もしていた。
郝思文(かくしぶん)…この二人を組み合わせた呉用の人を見る目に感服していた。
石秀(せきしゅう)…曹正を地獄の釜で揚げる夢を見た。
周通(しゅうとう)…ソーセージに良い付け合わせはないかな、蔣敬?
曹正(そうせい)…石秀に切り刻まれる夢を見て、厳しい稽古を始めた。
蔣敬(しょうけい)…野菜を食べたくなるよな、周通。
李立(りりつ)…魚肉ソーセージは兵が手軽にタンパク質補給出来る利点を買われ、兵糧に重宝されている。
黄信(こうしん)…秦明の息子が生まれた知らせに驚愕。引き出物を何にすれば良いか兵に相談中。
燕順(えんじゅん)…狼みたいな眼をしてますな。
鄭天寿(ていてんじゅ)…彼の託した銀細工を託す日はいつになるだろう。
郭盛(かくせい)…楊令に秦容誕生の手紙を書いたが、これまた末恐ろしい男になりそうだ…
楊春(ようしゅん)…解珍が今回の件に立ち会うため、旅先でしばらく放ったらかしにされていた。
鄒潤(すうじゅん)…ずっと心配してたもんな、解珍殿…
龔旺(きょうおう)…秦明殿は張清殿と違う意味で鈍臭そうだな。

2.
曹正「ソーセージの売上がチキンに奪われてしまった…」
石秀「確かに、お前に粉をまぶして油で揚げたところで、犬もカラスも寄り付かんだろうからな」
曹「揚げるな」
石「釜でボイルは?」
曹「茹でるな」
石「煙で燻製」
曹「燻すな」
石「鉄板に油を敷く」
曹「炒めるな」

曹正…なぜこうもロクでもないことしか言えんのだ。
石秀…粉をまぶす、か…

3.
石秀「公孫勝!」
白嵐「!!」
石「だいぶ身体も戻ってきた」
白「!」
石「…あれか」
白「!!」
石「なぜあの豚のソーセージなど食べたがるのだ、公孫勝ほどの犬が…」
楊雄「…おい」
石「!?」
楊「…」
石「…聞いたか?」
楊「聞いたのが俺でよかったな、石秀」
石「お前が劉唐殿なら死んでた」

楊「これがあの有名な?」
石「豚が豚を料理した、成れの果てさ」
楊「…」
石「公孫勝までもが豚ごときに飼い慣らされてしまった」
楊「…」
石「公孫勝が豚に媚び諂っているかのような姿は目に余る」
楊「…」
石「公孫勝が豚を食い殺してはくれないものか…」
楊「その前にお前が殺されるぞ、石秀」

石「いかん。名の由来が公孫勝殿であった事を完全に忘れていた」
楊「致死軍にいたんだよな、お前?」
石「幸い身体は元どおり動くようになった」
楊「マイナスをゼロに戻しただけだ」
石「それを言われると堪える…」
楊「楊志殿の吹毛剣も酷い有様だった」
石「まさか吹いた毛が斬れなくなるとはな」

石秀…公孫勝殿に会ったらうっかり呼び捨てしてしまいそうだよ。
楊雄…美味いな、曹正のソーセージ。
白嵐…ペット用の販売も検討するよう、楊令に嘆願書を書いてもらった。

4.
石秀「たまには二竜山の外に出るのも悪くないな」
蔣敬「だろう?」
石「あれは?」
蔣「祭りかな」
石「見てみるか」
蔣「珍しい」

石「…」
蔣「石秀?」
店主「らっしゃい!」
石「これはなんだ、親父?」
主「人形焼さ!」
石「…親父」
主「お買い上げだね?」
石「鉄板を売ってくれ」
蔣「!?」

蔣「どうするのだ、そんな物を仕入れて」
石「閃いたのだ」
蔣「なにを?」
石「これを湯隆に作ってもらいに梁山泊まで行ってくる」
蔣「…今から?」

楊志「石秀が?」
曹正「なにを考えてやがる?」
蔣「わざわざ人形焼の鉄板を持って梁山泊に行くとは…」

石「この通りに作ってくれ」
湯隆「…」

石「帰還いたしました」
楊「なにをしてきたのだ?」
石「二竜山の財政をさらに潤わせます」
蔣「例の鉄板で?」
石「これを見てくれ」
楊「人型の揚げ物?」
蔣「どことなく、顔が誰かに似ているような」
楊「ポーズも色々あるな」
蔣「これはなんだ、石秀?」
石「フライド曹正だ」
楊「油っこいな」

石秀…斬首や磔に凌遅といった、様々な食べ方が楽しめる芋の軽食だ。
蔣敬…またロクでもないものを、と言いつつ少し楽しそう。
楊志…曹正のソーセージの付け合わせにピッタリだな、石秀!

曹正…風呂の設定温度を間違えて、全身真っ赤になったところを石秀に見られて赤面。

湯隆…悪趣味すぎるぜ…

5.
曹正「なんだ?」

石秀「その食べ方は酷いぞ、蔣敬」
蔣敬「お前もいちいち研ぎたての包丁でつま先から寸刻みにしなくても良いだろう」
周通「美味い!」

曹「なにを盛り上がっている?」
楊志「見ろ、曹正!」
曹「!?」
楊「石秀考案の、フライド曹正だ!」
石「今、凌遅の食べ方を試しているのだ」

曹「待て」
蔣「ケチャップを上手に使うのがコツだ」
曹「そういうことではない」
石「CM撮影の時には、ぜひとも身体を粉まみれにして、油の鍋に飛び込んでくれよ」
楊「名案だ、石秀!」
曹「だから」
周「ソーセージを用意してくれ、曹正」
曹「話を聞いてくれ」
蔣「酒を持ってきます」
曹「おい」

楊「なんの話だ、曹正」
曹「なにから話していいか分からんが」
周「冷めちまうから早くしろ」
石「冷めたらすり潰して、サラダにするのもありだな」
曹「このフライド曹正とやらは、誰がモデルなんだ?」
石「モデルなどいない」
曹「明らかにこの顔と体型は…」
石「元ネタが芋に似ているのが悪い」

石秀…芋だけでなく、饅頭や甘味でもできないか、試作してみるよ。
蔣敬…近隣の芋農家から仕入れる話を進めてきます。
周通…なぜか分からんが、食べたり刻んだりするのが妙に面白いな。
楊志…令の土産に一袋持って帰ろう。

曹正…なぜ誰も突っ込まないんだ?

6.
楊志「もう一度だ、令」
楊令「〜〜毛」
吹毛剣「」毛
志「やはり駄目か…」
令「父上…」
志「…」
令「吹いた毛も断てなくなったら、この剣をなんと呼べばよいのですか?」
志「…楊家の宝剣?」
令「このままでは、役人に取り上げられてしまいそうです」
志「私もそんな気がする」
済仁美「旦那様」

孔明「よう、楊志殿!」
志「げーっ!孔明!」
孔「楊志殿…」
令「こんにちは!孔明殿」
孔亮「俺もいるぞ」
志「貴様!どの面さげて!」
明「もういいでしょう…」
志「何の用だ!」
亮(当たりがキツいな?)
明「亮が吹毛剣の毛を断つ所を見たいと」
志「!」
亮「吹毛剣の三奇とやらを拝見したく」

明「毛頭星の毛髪を使ってください」
志「待て、孔明」
亮「楊志殿?」
志「…気分が悪いのだ」
明「大丈夫か?」
亮(怪しい…)
志「だから今日は帰ってくれ」
明「そんな!」
令「お酒をどうぞ、孔明殿、孔亮殿」
明「ありがとう、楊令」
亮「…」
令「…」
明「」
亮「」
志「…その酒は」
令「…」

楊志…やり返すつもりなど、毛頭なかったのだが…
楊令…もしもの時のために、曹正の痺れソーセージを持ってる。
済仁美…よく効くのね。魯智深殿からもらった、母夜叉の割り材は。

孔明…孔明が罠にかけられるとは…
孔亮…おのれ、楊志殿…

7.
楊雄「楊志殿に?」
孔亮「この俺が一服盛られるとは」
楊「日頃の行いだ」
白嵐「!!」
孔「?」
楊(この犬は!)
石秀「待て!公孫勝!」
孔亮「!?」
石「孔亮!?」
楊「…」
孔「…」
石「…聞いたか?」
孔「この耳に、刻み付けておくほどに」
石「…」
楊(厄介な奴に聞かれたな、石秀)
白「!!」

孔「質問だ、石秀」
石「…」
孔「この犬の名は?」
石「…白嵐だ」
孔「さっきお前の口から発せられた名と違うが?」
石「…」
孔「お前まさか、致死軍の隊長を俺と変えられたことを根に持って…」
石「それは断じて違う」
孔「ならばなぜ、公孫勝という致死軍が嫌というほどに聞く名を?」
石「…」

石「目だ、孔亮」
孔「目?」
石「この目はどう見ても公孫勝殿だ」
孔「どれ…」
白「!!!」
孔「!?」
石「公孫勝!?」
楊「強い…」
孔「くそっ!」
白「!!!」
孔「卑怯な!」
楊「お前に言われたくない」
石「…」
白「!!!」

孔「」

楊「強いな、公孫勝」
石「で、どうする?」
白「!!」

白嵐…あいつは嫌な奴だ。
石秀…野晒しにしていいのか?
楊雄…火星が綺麗だから、その光に当ててやるのさ。

孔亮…おのれ、二竜山…

8.
石秀「…大丈夫か、孔亮」
孔亮「この傷では今回の任務に支障が出るからと、公孫勝のおかげで外されたよ」
石「…どちらの?」
孔「両方」
石「…詫びと言っては難だが」
孔「なんだ?」
石「これを一緒に食わないか?」
孔「…何だこの嫌な顔した肥満男の形の揚げ物は」
石「フライド曹正だ」
孔「…」

孔「どうやって食うのだ?」
石「食い方リストだ」
孔「…これは古今東西の処刑法リストではないのか?」
石「食い方リストだ」
孔「…では、凌遅を」
石「さすが孔亮!始めから極刑を選ぶとは、俺に代わって致死軍に選ばれたことはある!」
孔「やはり根に持ってないか、石秀?」

曹正「あの野郎…」

石「研ぎに研いだ致死軍の剣を使う」
孔「未練がすごい」
石「凌遅!」
「!」
孔「www」
石「愉快だろ?」
孔「俺にもやらせろ!」
石「無論だ」
「!」
孔「www」
曹「…ソーセージはいらんか、致死軍隊長と元致死軍」
石「よう、元ネタ」
孔「よこせ!」
曹「…」
孔「」
石「孔亮!」
曹「馬鹿め」

石秀…卑猥な位置にソーセージを置くな!下品な豚め!
曹正…お前の食い方だって悪趣味にも程がある!

孔亮…もう許さん、二竜山。

9.
楊志「何事だ?」
周通「近くの白虎山に孔亮が孔明を巻き込み、立て篭りました」
石秀「豚のソーセージのせいで、孔亮が!」
曹正「所詮その程度の男だ」
楊「…実は、私も孔兄弟に痺れ薬入りの酒を飲ませてしまった」
曹「…」
石「あとあいつ、公孫勝に深傷を負わされました」
楊「白嵐に?」
曹「…」

孔亮「ここを俺たちの山にするぞ、兄貴!」
孔明「良いのか?」
亮「拠点は多いにこした事ねえだろ!」
明「まあな」
牛二「火星の兄貴、二竜山の連中が!」
明「誰だこのハゲは」
牛「没毛大虫の牛二だ」
明「毛頭星と相入れなさそうなあだ名だ」
牛「そう言うな、天才軍師殿!」
明(馴れ馴れしい…)

楊「無駄な抵抗はやめろ、孔亮!」
石「ヤケを起こすな!」
亮「ここは、俺の山だ。忘れるなよ。独火星孔亮の山だ」

王英「向こうの山が騒がしいな」
鄭天寿「兄貴?」
燕順「…なんでもねえ」

牛「引っ込め!二竜山!」
楊「誰だ、あいつは?」
周「あいつは、桃花山を永久追放された、没毛大虫!」

楊志…お前たちも孔亮に?
石秀…公孫勝殿に連絡を取りますか?
曹正…俺たちにも原因があるから、まだ待とう。
周通…近場の妓楼荒らしや賭場でツケをしこたま拵えてる下郎だ。

孔明…牛二は生理的に無理。
孔亮…ここで兵を集めて二竜山にとって変わるぞ!

牛二…あだ名は没毛大虫。ハゲ虎のこと。ださっ。

王英…あの方角は、二竜山と白虎山か?
鄭天寿…どうした兄貴、そんなおっかねえ顔して…
燕順…大事な何かを盗まれちまった気分なのさ…

10.
孔亮「俺たちで兵を徴募し、二竜山にとって変わるのだ、楊志殿!」
牛二「そうだ!」
楊志「!」
楊雄「愉快なことになっているな、楊志殿」
石秀「楊雄」
志「私たちが酷いことをしたばかりに…」
雄「案ずるな、楊志殿」
志「?」
雄「楊志殿に有り、孔亮に致命的なまでに無いものを、一つ教えよう」

志「それは?」
雄「人望」
周通「分かる、と言う気がするぜ」
曹正「なんか肌が合わねえよな」
亮「野郎!」
牛「攻めようぜ!火星の兄貴!」
亮「話しかけるな、ハゲ牛」
牛「!?」
亮「さっさと二竜山を攻めに行かないか!」
牛「…一人で?」
亮「兄貴と俺以外に、人はいない」
明「さっさと行け」

周「没毛大虫が一人で逆落としをかけてきたぜ」
曹「気の毒な…」
周「因果応報だ」
楊「そんなに酷い奴なのか?」
周「最低な野郎だ」
牛「!」
石「具体的に言うと?」
周「…あまり言いたくねえんだが」
楊「なんだ」
周「昔、済仁美殿に…」
楊「」
牛「!?」
石「吹毛剣が!」
曹「鎧ごと斬った」

楊「…」
曹「三奇の検証だ!お前たち!」
石「刃こぼれは?」
周「無い!」
石「刃に血は?」
周「残ってない!」
曹「あと一つ!」
石「孔明!頼む!」
亮「兄貴!」
明「〜〜毛」

毛\吹毛剣\毛

石「やった!」
曹「吹毛剣の輝きが…」
楊「…」
周(俺と同じく横恋慕してたとは、言えなくなった…)

楊志…あまりに斬れなさすぎたから、三千貫で売ろうとしてたなんて二度と言えない。
石秀…公孫勝のおかげで、前よりも強くなったぞ。
曹正…形を変えるなら、ソーセージを芋の付け合わせにしてやってもいいぜ。
周通…やっぱりきちんと生きてかないとこうなるんだな。
楊雄…これで二竜山も元どおりか。

孔明…優しすぎる性格から、つい孔亮についてきてしまった。
孔亮…後日、公孫勝と劉唐に罰を受けた。

牛二…原典からこんにちは。楊志に喧嘩売って、宝剣を頂こうとするも、返り討ちに遭う愚か者。ちなみに「吹毛剣」の銘は原典にはなくて、吉川英治先生の「水滸伝」からなんだよ!テストに出るよ!

11.
秦明「…」
解珍「秦明」
秦「…」
解「信じろ」
秦「…」
解「…全くお前は将の器はでかいのに、亭主の器は小さいにも程がある」
秦「…」
解「…」
?「!」
白勝「秦明殿」
秦「…」
白「男だ」
秦「公淑は?」
白「問題ない」
秦「容、だな」
白「?」
秦「名前だよ」
解「先に公淑殿に言わんか」

秦明…なんと声をかけたらよいだろう、解珍。
解珍…わしに聞くな、野暮め!
白勝…早く会いに行ってあげてくださいよ、秦明殿。

公淑…夫のように元気な声ね。
秦容…超有望第二世、ここに誕生。

双頭山 

双頭山…風流喪叫仙解散の危機!?

人物
朱仝(しゅどう)…髭を伸ばしに伸ばした結果、兵が大縄跳び出来るくらい伸びた。
雷横(らいおう)…麓の柏世くんのプロポーズが上手くいかず、1日酒に付き合った。
董平(とうへい)…俺らに有無を言わさぬ理由を揃えてこられるとは…
宋清(そうせい)…これはやむを得ないぞ、董平殿。
孟康(もうこう)…風流喪叫仙の楽曲を聴きながら勘定すると、テンポよく進むという。
李忠(りちゅう)…鮑旭の楽器はかっこいいな。
孫立(そんりつ)…楽大娘子のバンドのCDをこれでもかと言うほど買わされ、握手会に足繁く参加している。お前の嫁だろ。
鮑旭(ほうきょく)…楽曲でオリジナリティを追求していたら、調練にも幅が出てきた。
単廷珪(たんていけい)…魏定国の瓢箪矢と並ぶ兵器を鋭意開発中。
楽和(がくわ)…苦渋の決断を下した。

12.
董平「楽和がしばらく風流喪叫仙を脱退する事になった」
鮑旭「そんな」
馬麟「何事だ、楽和」
楽和「実は、北京に潜入中の姉さんもバンドを結成したらしく…」
鮑「やりかねませんな」
董「俺たちでノーマークにしていたのが裏目に出た」
馬「孫立は?」
董「あいつは、嫁が絡むと知力が一桁になる」

楽「姉さんの踊りはともかく、孫新の笛は頼みになりますからね」
馬「そうなのか」
董「他のメンバーは?」
楽「送られた写真ですが…」
鮑「…怪しいなんてもんじゃない」
馬「孫新の肩身の狭さが痛々しい」
董「梁山泊に報告しておく」
楽「お願いします」
鮑「用心を」
馬「またな」
楽「必ず戻る」

楽大娘子「久しぶりね〜」
楽(また化粧が…)
孫新「…よう」
楽「久しぶりだな、孫新」
娘「お姉ちゃんにご挨拶はないの〜」
楽「…ただいま帰りました。姉上」
娘「そんな軍人みたいなんじゃなくて〜」
楽「…」
娘「昔みたいにお姉ちゃん、って呼んで〜?」
楽「…」

呂牛(酷いな)
文立(限度がある)

楽和…普段なら絶対話しかけない人種だぞ…
董平…俺たち三人の方向性を模索するぞ。
鮑旭…即興曲を練習しましょう。
馬麟…しかし、楽和が心配だ。

楽大娘子…いよいよ出てきた、めんどくさいに手足が生えた、楽和の姉で孫立の嫁。
孫新…楽大娘子のしくじりをこれ以上フォローしきれる気がしない。

呂牛…面白そうだと思って絡んでみたが、ここまでめんどくさい女だったとは…
文立…この仕事には、手当てがつかないのか…

聚義庁

聚義庁…宋国学力試験「科挙」を余裕でパスする連中が、夜な夜な悪巧みをしているアジトである。

人物
晁蓋(ちょうがい)…本気出せば科挙を通るポテンシャルはあるが、筋肉が首席レベルだからどうでもいい。
宋江(そうこう)…学問をするために実家を出たが、その実どうだったかというと…
盧俊義(ろしゅんぎ)…私の仕事は科挙を通る学力など最低限だが?
呉用(ごよう)…科挙を受けろと言われたこともあった、と遠い目をしながら深夜残業。
柴進(さいしん)…科挙なんてクソ食らえ!というロクデナシの親戚を反面教師にここまで来た。
阮小五(げんしょうご)…呉用に言われて解いてみた科挙の試験も悠々パス。
宣賛(せんさん)… 雄州離れの私塾から、科挙に通る者が多いという噂の源。

13.
宋江「たまには身体ばかりではなく、知恵を使う試験を行う」
林冲「…」
公孫勝「…」
史進「…」
宋「第一問」
林「…」
宋「お前たちが漢の劉邦だったとする」
公「…」
宋「部下から、諸国の領土には古来からの王族の子孫を封じるべきだ、という進言を受けた」
史「…」
宋「その策を採用するか?」

李逵「そりゃいけねえよ、宋江様」
宋「李逵?」
李「そしたらそいつら土地もらったことに気を良くして、好き勝手やりまくるぜ?」
林「…」
李「おまけに元々の王様の血を引く奴が治めるってのは、俺たち民にとっても分かりやすいからな」
公「…」
李「そんな策絶対採用したらいけねえよ」
史「…」

宋「見事だ、李逵」
李「?」
宋「李逵が私の子房になるとは…」
李「俺の腹は筋肉だぞ、宋江様」
宋「劉邦はその策を軍師の反対を受けて却下した」
李「そりゃよかった」
宋「李逵の言った通りの理由でな」
李「考えなくても分かるぜ、宋江様」
林(お前、分かったか?)
史(分からなかった…)
公「…」

宋江…李逵の直感の精度は見事だ。
李逵…お前らも分かっただろ?

林冲…普通にそれでいいと思っていた。
公孫勝…予め目付役を配置して、反乱企んだ王を暗殺すればいいと思ってた。
史進…反乱起こした王の全裸写真を流布させればいいと思ってた。

14.
宋江「第二問」
林冲「…」
公孫勝「…」
史進「…」
宋「お前たちは、相手の本拠地を攻める戦をしている」
林「…」
宋「相手は当然のことながら、堅く城を守って出てこない」
公「…」
宋「城を守る将も経験を積んだ強者で、兵の数も相手の方が多い」
史「…」
宋「さあ、どうやって城を落とす?」

宋「林冲」
林「野戦に持ち込んで、将の首を奪る」
宋「公孫勝」
公「城に潜入して、将を暗殺する」
宋「史進」
史「全裸になって将を挑発して、相手を外に誘き出す」
宋「三者三様の答えだ」
李逵「…」
宋「お前ならどうする、李逵?」
李「その将軍を追っ払っちまえばいいんじゃねえか?」
宋「…」

李「王様が賢けりゃ難しいけどよ」
林「…」
李「もしも馬鹿な王様だったら、例えば評判だけはいい頭でっかちな若造将軍と出来る将軍を交代させるように仕向けてよ」
公「…」
李「そしたらきっと、馬鹿将軍は自分から城を出てくるんじゃねえかな、宋江様?」
史「…」
宋「軍師にならないか、李逵?」

宋江…歴史を知っているのか、李逵?
李逵…文字が読めねえんだから、知ってるわけないって。

林冲…生半可な学問は身を滅ぼすな。
公孫勝…そもそもお前はもっと頭を使え。
史進…人間って学問の知識の有無じゃないんだな。

15.
宋江「最終問題」
林冲「…」
公孫勝「…」
史進「…」
宋「ある国で、有望になると言われた王が即位した」
林「…」
宋「しかしその王は、即位した途端に自堕落になり、政務を顧みなくなり」
公「…」
宋「諫言した者を死罪にする触れまで出した」
史「…」
宋「その王は一体何がしたいのだろうか?」

宋「林冲」
林「期待外れなだけでしょう」
宋「公孫勝」
公「王を暗殺します」
林「結局それか」
宋「史進」
史「私は宴やしたたか好きだけでは判断しません」
宋「ほう…」
史「宴も見せかけかもしれません」
宋「それは?」
史「酔うと人間の本性が出ますからね」
林「お前は素面で出しただろうが」

宋「どうかな、李逵先生」
李逵「俺ならそれとなく聞いてみるな」
林「諫言したら死罪だろう?」
李「だから呉用みたいに、正直に諫めるんじゃなくてよ」
公(やりそうだ)
李「例えば、飛ばないし鳴かない鳥ってどんな鳥なんですか、と聞くぜ」
宋「その鳥は一度飛べば天まで飛び、鳴けば人を驚かすな」

宋江…満点だ、李逵。
李逵…本当かよ、宋江様?

林冲…頭を使うのはもういいから、この鼎を持ち上げられるか競おう。
公孫勝…お前の鼎はでかい割に、軽くて脆そうだな。
史進…俺の鼎の方は林冲殿より重いですか、軽いですか?

16.
宋江「梁山泊三十人三十一脚隊別対抗戦の決勝だ」
呉用「まさか遊撃隊と致死軍の一騎討ちになるとは」
盧俊義「優勝候補筆頭の騎馬隊が、ここ一番で扈三娘が転んだか」
宋「番狂わせだ」
呉「まずは致死軍です」

公孫勝「…」

盧「兵の表情も体型も全く同じだ」
呉「準備運動までシンクロしてます」

宋「用意…」

公「…」

宋「始め!」

致死軍「!!!!!!!!!!!!!!公!!!!!!!!!!!!!!!」

盧「この統率力…」
呉「速いなんてものではない…」
宋「ゴール!」

公「…」

盧「タイムは?」
呉「文句なしで今大会最速です」
宋「見事な団結力だ」

史進「行くぞ」
陳達「おう」
鄒淵「任せろ」
杜興「…」

宋「遊撃隊も速かったが…」
呉「宋江殿」
盧「史進がこの大舞台で何もしないとお思いか?」
宋「…」

史「…」

宋「用意…」

史「…」

宋「始め!」

遊撃隊「陳!!!!!!!!!!!!!!史!!!!!!!!!!!!!!鄒」

宋「さすが速いな」
呉「練習中は杜興の怒声が鳴りやまなかったとか」
盧「これは!」
宋「!」

「陳!!!!!!!!!!!!!!裸!!!!!!!!!!!!!!鄒」

宋「…」

「裸!!!!!!!!!!!!!!裸!!!!!!!!!!!!!!裸」

盧「なんと」
呉「次々に」

「裸!裸!裸!裸!裸!裸!裸裸裸裸!裸!裸!裸!裸!裸!裸!裸」

盧「乗って来た!」
呉「三十人が一頭の獣に」

「裸裸裸裸裸裸裸裸裸裸裸裸裸裸裸裸裸裸裸裸裸裸裸裸裸裸裸裸裸裸」

盧「悪夢のようだ」
宋「…」
公「…」
呉「ゴール!」
盧「タイムは?」
呉「…致死軍より速いです」
盧「…ルールブックに着物に関する規定は、書かれていないな」
呉「宋江殿?」
宋「…」
盧「あまりの馬鹿馬鹿しさに、声も出せなくなられている」
史「…」
呉(なんだこのやり切った感溢れる顔は)

宋江…実はめっちゃツボっていた。
盧俊義…実に理にかなった着脱だ。
呉用…入念に計算され尽くしたキャストオフですね。

公孫勝…表彰式を見るまでもなく任務に帰った。

史進…優勝の美酒かけで大はしゃぎ。
杜興…李応に呆れられた。
陳達…朱武に冷たくされた。
鄒淵…解宝に突っ込まれた。

扈三娘…めちゃくちゃ落ち込んでる。
馬麟…気にするな、扈三娘。

17.
盧俊義「梁山泊空を飛ぶ者選手権を開催する」

史進「!」
兵「九紋竜墜落!」
兵「竜頭蛇尾!」

呉用「…今の史進は?」
宋江「盧俊義が茶番の相手をするわけがない」

盧「重装備部隊、撲天鵰!流花寨、摩雲金翅、前へ!」
李応「…」
欧鵬「…」

呉「欧鵬が?」
宋「これは摩雲金翅の出番だろう」

盧「神機軍師設計の空を飛ぶ乗り物だな」
欧「…」

呉「鉄槍を回転させて飛ぶ仕組みですか?」
宋「なるほど」
呉「しかし…」

盧「いざ!」
欧「!」

呉「…」
宋「飛ばんな」

盧「もっとペダルを漕ぐのだ!欧鵬!」
欧「!」

呉「鉄槍が重いか、人力では限界があるのでは?」
宋「机上の策か」

宋「回転した鉄槍が飛び出して、盧俊義に直撃しかけるとは」
呉「蔡福の舌打ちが会場に響き渡りましたな」

盧「撲天鵰は?」
李「凌振の大砲で、私が飛びます」
盧「良かろう」

宋「今にも凌振が大砲を撃ちそうな顔を」
呉「間違っても撃墜するなよ」

凌振「…」
李「…」

解宝「…」
魏定国「…」

盧「点火!」
凌「!」
盧「発射!」
李「!!」

呉「五体は満足だ」
宋「大気圏を超えるのではないか?」
盧「おう、おう」

解「飛ばし過ぎだ、凌振」
凌「気合を入れすぎた」
李(何という勢い…)

宋「…星になってしまった」

李「…久しぶりだな」
李媛「父上!」
李英「本当に、飛んできた!」

盧俊義…李応のスーツを量産しよう。
宋江…他に着たいものは?
呉用…皆露骨に目を逸らしていますね。

欧鵬…燕青に鉄槍を叩き折られてしょんぼり。

李応…機動力を大幅に向上させた結果、降りるのが難しくなった。
解宝…李応殿の奥方から手紙が…
魏定国…無事でよかった…
凌振…次は俺の番だ!

蔡福…特に何も着せられず、大砲で北京まで吹き飛ばされた。

史進…急ごしらえの竜の格好で崖から飛び降りたら、突起していた岩に激突しかけた。

李媛…父上から飛んでくるってお手紙が来たけど…
李英…まさか本当に鳥の格好で来るなんて思わなかった!

養生所&薬方所

養生所&薬方所…某九紋竜がやらかした妓楼から、李巧奴が事務局入りして活躍中…だったんだけど。

人物
安道全(あんどうぜん)…やっと白勝以外に二人の仕事分担が出来る者が入ったな。
薛永(せつえい)…万が一の時に備えて、剣の稽古は欠かしてない。
白勝(はくしょう)… 二竜山は二竜山で忙しいぜ。

18.
李巧奴「安先生」
安道全「…」
白勝「書き物中だから、後で頼むよ」
李「実は…」
白「…ほう」
薛永「協力します」

薛「!」
安「なんだ!」
薛「私とした事が…」
安「…着替えてくる」
白「巧奴が変えを用意してるぜ」
安「助かるな」

李「安先生」
安「これは…」
李「お誕生日おめでとうございます」

安道全…着やすいから毎日着ているだけだぞ?
李巧奴…縫物の名手。

白勝…見事な白衣だ。
薛永…私が薬をこぼすわけないだろう?

19.
薛永「…」
白勝「…どうした、薛永」
薛「また、駄目だった…」
白「そうか」
薛「私は、何人の患者を…」
白「救ったんだ?」
薛「…」
白「お前の薬草は、梁山泊のためになったものだろう?」
薛「…」
白「記録は残っているだろう?」
薛「…」
白「これからだ、薛永」
薛「…」
白「待ってるぞ」

薛永…本当にこれからか?
白勝…これからさ。みんな一緒だ。

20.
薛永「…」
安道全「よく戻った、薛永」
馬雲「(・ω・)ノ且」
薛「…」
白勝「お前ならやるだろうとは思ったが…」
薛「…」
安「綱を持つ者も腰を抜かしたくなる崖だ」
白「そこにしか生えない薬草があるとは…」
馬「( ̄^ ̄)」
安「帰ってこれて、本当に良かった」
白「友である事を、誇りに思うぜ」

薛「薬師なら、当然のことだ」
安「その当然は、お前の当然だ」
白「お前行けるか、馬雲?」
馬「( ゚д゚)」
白「そらそうだ」
安「さて、薛永」
薛「…」
白「何して遊ぶ?」
薛「遊ぶ暇など…」
安「お前のことだ」
白「薬草が使えるかどうかは、確かめたいよな」
薛「当然だ」
白「その後の話さ」

薛「もしも使えなかったら…」
安「その時はその時だ」
白「俺はお前が崖を登り切ったのを見届けたぜ」
薛「…」
白「今は、それでいいんじゃねえか?」
安「私も最近休む事を覚えた」
薛「それは?」
安「昼に少し眠る」
白「世間じゃ、昼寝って言うんだよ」
安「知らなかった」
白「行こうぜ、薛永」

薛永…自分の煎じた薬草ドリンクが、ここで効能を発揮するとは…
安道全…ただ、寝すぎるとよくないんだ。
白勝…お前、睡眠って知ってるか?
馬雲…(( _ _ ))..zzzZZ

殺人者安道全

21.
安道全「…」
李巧奴(いつもながら、見事な治療の腕前…)
毛定「李巧奴殿のおかげで、俺たちも大助かりです」
李「そんな、毛定殿」
毛「白勝も文祥も、やっと本来の拠点で働けるようになりましたからね」
李「…ありがとうございます」
安「次の者を読んでくれ、李巧奴」
李「次の方、どうぞ」
?「」

李「!?」
?「…」
安「どうしたのかな?」
?「実は、寒気と熱っぽさがあって…」
安「風邪だな。薛永の粥を食えば即日治るだろう」
李「…」
安「李巧奴。薛永にその旨伝えてくれ」
?「…」
李「…」
安「…巧奴?」
李「…ただ今」
?「…」
安「やれやれ、この季節は似たような症状が多くて困る」

李「…」
?「おい、李巧奴」
李「…」
?「その耳は、飾りじゃ無いよな?」
李「…張旺」
張旺「久しぶりだな」
李「…」
張「ご無沙汰じゃないか。俺に再会の挨拶をしても、バチは当たらんと思うぞ?」
李「…」
張「巧奴」
李「私は、あの妓楼と縁を切ったのです」
張「俺との縁は?」
李「…」

李巧奴「なぜ、梁山泊に…」
張旺「俺も青蓮寺の手の者の端くれ。仕事をせんと、処断されるからな」
李「…」
張「九紋竜の馬鹿は取り逃したが、まさかお前が自発的に梁山泊に潜入するとは」
李「違います!」
張「違う?」
李「それは…」
張「何が違うのだ?」
李「…」
張「まさか、あの医者に?」

李「安先生を悪く言わないでください!」
張「俺は、あの医者に、しか聞いてないぞ?」
李「…」
張「…なるほどな」
李「…」
張「今はいい。俺はあの騒動の後、梁山泊で、水軍に配属されてね」
李「…」
張「今は潜水部隊の魚野郎、張順の部下だからな?」
李「…」
張「忘れるなよ、巧奴」
李「…」

李「…」
薛永「李巧奴殿?」
李「…」
薛「李巧奴殿!」
李「!?」
薛「…何事ですか?」
李「…考え事を、少し」
薛「…顔色が随分優れませんよ?」
李「寒いからです。お気になさらないでください、薛永殿」
薛「…」
李「…今日も張り切って、お手伝いします!」
薛「…水軍が」
李「!?」
薛「…」

薛永「李巧奴殿」
李巧奴「…」
薛「今の反応は、養生所の者として捨て置けません」
李「…」
薛「こちらへ、お願いします」
李「…何でもありません、薛永殿」
薛「薬師として、大病になりうる兆しを見逃すわけにはいきません」
李「…」
薛「安道全と呉用殿に内緒にすることを約束します」
李「…」

薛「話せない事ですか、李巧奴殿?」
李「…」
薛「こういう事は好きではないのですが」
李「…」
薛「あなたから話してくださらないと、私は薬師として荒療治をしなければいけなくなるのですよ」
李「…それは?」
薛「今あなたが素直に答えてくだされば、私もせずに済むから、助かります」
李「…」

薛「水軍に、お知り合いが?」
李「…」
薛「水軍に、青蓮寺の間者が?」
李「…」
薛「…あなたが口を開くまで、出来る限り待ちますが」
李「…」
薛「共に働いた身として、あなたの今までの努力と誠意を無駄にしたくないのが、正直な気持ちです」
李「…」
薛「白勝も、養生所の皆も、同じでしょう」

李巧奴「…私は、どうしたら」
薛永「李巧奴殿」
李「…」
薛「梁山泊に入るとは、こういう事です」
李「…」
薛「あなたにそのつもりがなくても、私たちはもう、宋の謀反人なのです」
李「!」
薛「白勝のことですから、きちんとそれをあなたに伝えたでしょう」
李「…」
薛「知らなかったとでも?」

李「…」
薛「知らなかったでは、許されないのです、李巧奴殿」
李「…」
薛「私は、覚悟しています」
李「…何を?」
薛「自分が謀反人として、死ぬであろうことを」
李「」
薛「自分が一生、宋の天下の日の目を浴びて、生きることができないことを」
李「…」
薛「知らなかったとは、言わせません」

李「…」
薛「…そろそろ荒療治に入らねばなりませんよ?」
李「…張旺」
薛「…」
李「張順殿の部下の張旺が、青蓮寺の間者です」
薛「あなたとの関係は?」
李「…」
薛「…誰にも言いません」
李「…」
薛「…」
李「…昔馴染み、でした」
薛「死ぬまで誰にも言わないことを、約束します」
李「…」

張旺「なんだと!?」
李巧奴「だからさっさと逃げて!」
張「水の中を浪裏白跳相手に、逃げられるわけねえだろうが!」
李「でも私はあんたに死んで欲しくないの!」
張「…ならよ、巧奴」
李「…」
張「お前は、俺のために、死んでくれるよな?」
李「!」
張「…来い」
李「助けて!」
張「逃さん!」

馬雲「(゚o゚;;」
薛永「そんな事だろうと…」
張順「どうする、病大虫?」
薛「張順殿は、最悪の時に備えて、湖畔で待機を」
順「了解」
馬「( ゚д゚)」
薛「どうしたものか…」
順「おい、あいつは!」

安道全「巧奴!」
李「安先生!」
旺「…なんだ、藪医者か」
李「安先生を悪く言わないで!」

旺「梁山泊の神医を殺せば、大手柄だ…」
李「やめて!」
安「…」

馬「∑(゚Д゚)」
順「急げ、薛永!」
薛「…」

旺「くたばれ!」
安「!!」
旺「!?」
李「張旺!」

馬「( ゚д゚)」
順「飛刀か?」

旺「…」
薛「医師を殺すものではない」
旺「」
薛「!」

李「」
安「殺人者安道全、か…」

薛永「殺したのは私だ、安道全」
安道全「…少し黙れ、薛永」
薛「なんだと」
安「巧奴が…」
李巧奴「」
張旺
薛「…」
張順「俺は呉用殿に知らせに行く」
薛永「…私も」
馬雲「ヽ( ̄д ̄;)ノ=3=3=3」
安「…」
李「」

李「」
安「巧奴…」
李「」
安「すまぬ」
李「」
安「…」
李「!」
安「」

李「あんたが謝ったら、張旺は帰ってくるの?」
安「二度と帰ってこないな」
李「それを知ってて、よくもそんな口を」
安「梁山泊の中で、私よりもそれを知っている者はいないと自負しているつもりなのだがな、巧奴?」
李「!」
安「私の飛刀は張旺の急所に深く刺さっているよ?」
李「…言わないで」

安「私も人を殺した事は何回もある」
李「言わないでよ!」
安「しかしそれは、私の力が及ばなかったせいで、死なせてしまった患者たちのことだ」
李「言わないで、安先生!」
安「…初めてなのだよ。私が、人を殺したのは」
李「言わないでったら!」
安「…少し休むぞ、巧奴」
李「安先生?」
安「」

李巧奴「…」
呉用「あなたは例の妓楼との縁を切り、裴宣と孫二娘の証明書まで見せて、ここに来たのだよな?」
白勝「…」
呉「わざわざご苦労、白勝」
白「友達がぶっ倒れたなら、当然のことさ」
李「…」
呉「李巧奴殿」
李「…」
呉「この始末を、どうやってつけるつもりかな?」
白「…」
李「…」

李「…覚悟しました」
呉「なんの?」
李「私も、謀反人として死ぬ、覚悟を」
白「それは俺が一番始めに言ったよな?」
李「…申し訳ございません」
白「もう一度だけ言うぞ」
李「…」
白「分からないことがあれば、何度でも聞け。俺も何度でも答える」
李「…」
白「しかし、同じ過ちは繰り返すな」

白「同じ過ちは繰り返すな、とは言った」
李「…」
白「だが、お前の過ちは、一度たりとも犯してはいけない過ちだ」
李「…」
白「俺だけで済むならばいいさ」
李「…」
白「お前を信頼した、裴宣と孫二娘の信用は、どうなる?」
李「…」
白「熱心なお前に文字を教えた、金翠蓮の想いは?」
李「!」

白勝「…忘れてたって面してんな」
李巧奴「…私は」
呉用「お前の道は、二つに一つしかない。李巧奴」
李「…」
呉「お前の生涯を、養生所の事務局に捧げるか…」
李「…」
呉「ここで、死ぬかだ」
李「」
呉「今決めろ、李巧奴」
李「…そんな」
白「これが、梁山泊だ。李巧奴」
李「そんなの…」

白「一つだけ俺の想いを言わせてもらっていいかな、呉用殿?」
呉「…」
白「俺はあんたの骸は死ぬまで見たくねえ、李巧奴殿」
李「」
白「…またな」
李「白勝殿!」
呉「決めろ、李巧奴」
李「…私の生涯を、捧げます」
呉「嘘はないな」
李「…ありません」
呉「あった場合は?」
李「自裁します」

李「…」
薛永「…」
馬雲「(T-T)」
白「…悩んでいるぞ」
李「…」
白「かつてないほどに」
李「私が、治します」

白「林冲が、いたらな」
薛「人殺しが生業って、言ってたぞ」
白「今は俺だけじゃ、駄目だ」
薛「…」
白「友達が本気で困ってる時に限って、あの馬鹿がいないとは」
薛「らしくない」

李巧奴「…安先生?」
安道全「…」
李「…ごめんなさい」
安「…」
李「…痛かった?」
安「…かつてないほどにな」
李「…そうよね」
安「医者が自分から、人を殺してしまうとはな」
李「安先生は、何人もの人を助けたじゃない!」
安「医者ならば言うまでもないことだ。口にするのもおこがましい」

李「…」
安「李巧奴」
李「…」
安「自分の意思で、人を殺した医者は、一人もいないよ」
李「!」
安「…私の知る限りはな」
林冲「俺は知っているぞ、藪医者」
李「!?」
安「…今はお前を相手にしたくない」
林「そう言うな、藪医者」
安「触るな、馬鹿が移る」
林「今移してやってるのだ、馬鹿を」

安「ふざけてる場合ではない!」
林「俺は友の前で、ふざけた事など一度もないぞ」
安「…」
林「俺は脱獄する時、一度たりともふざけた記憶はないが?」
安「…」
林「雪の中で足をくじいて担がせるふざけた医者ならば、よく知っているが?」
安「…何が言いたい、林冲」
林「…俺も、よく分からん」

安道全「本当に馬鹿だな、林冲」
林冲「馬鹿ではないと戦はできん」
安「その戦に付き合わされる医者の身になってくれ」
林「だから安心して戦えるのだ」
安「…」
林「梁山泊にはお前がいるからな」
安「…」
林「死んでも帰ると約束しただろう?」
安「!」
林「忘れたのか?」
安「…忘れるものか」

林「おい、女」
李巧奴「!」
林「白勝がいるならまだしも、こいつ一人では医者しかできん。力になってくれ」
李「はあ…」
林「この豹子頭が、頭を下げて頼んだからな」
李「…はい」
白勝「…お前、俺たちに頭を下げた事、一度でもあったか?」
林「なぜ俺が貴様らに頭を下げる?」
白「恩知らずめ」

林「じゃあ調練があるから、またな」
白「怪我して来いよ、豹子頭」
林「笑止だ、白日鼠」
安「…林冲」
林「なんだ、藪医者」
安「元気でな」
林「おう、神医」
白「良いところで来るやつだ」
李「…」
安「あの馬鹿と話すと、なぜ悩んでいたのか分からなくなるだろう?」
李「…」
安「私もなんだ」

安道全…自分が殺人者である事は忘れないでおこう。
李巧奴…何事もなかったかのように、仕事に打ち込んでいる。何事も、なかったかのように。

薛永…人を斬るのは苦手だが、病大虫だって牙を剥くことはある。
馬雲…(-_-)
張順…あの野郎と同じ姓なのが、なんか気に食わなかった。

呉用…少し脅かしすぎたとは思うが、あれくらいがちょうどいいのさ。

裴宣…人は難しいな。
孫二娘…文字は読めるようになっても、難しいこと考えるのにむいてない顔だよ。
金翠蓮…私は本当に幸せね…

白勝…その日の夜、嫁と馬から逃げてきた馬鹿をみんなで大笑い。
林冲…豹子頭が頭を下げているでは無いか!

張旺…原典からこんにちは。あだ名は截江鬼。青蓮寺の間者で、泳ぎが得意だったから潜水部隊に配属された。李巧奴と色々あったらしい。色々。

断金亭

断金亭…宴会シーズン時、料理の得意な好漢たちには、あらかじめ文治省までシフトを提出する義務がある。

22.
晁蓋「新年隠し芸大会個人の部を行う」
宋江「…」
呉用「一番。史進による…」
宋「…」
呉「一泰山二鷲三茄子」
史進「…」
宋「…」
史「泰山!」
宋「…」
晁(…?)
史「鷲!」
呉(海東青鶻?)
晁(これは…?)
史「…」
宋「…」
史「三…」
宋「…」
晁(宋江の気が…)
呉「一際鋭く…」
宋「…」

史「三…!」
宋「…」
晁(もうこれは駄目だ)
呉(トップバッターの勢いを完全に殺されましたね)
史「…」
宋「…」
晁(しかし今更引くに引けない)
呉(戦なら全滅だ)
史「!」
宋「…?」
史「三茄子!」
宋「…」
晁(これまでか)
呉(いや、史進の眼に輝きが)
史「四面楚歌が歌われようとも」
宋「!」

史「五臓六腑を失えど」
宋「…」
史「七転八倒しようとも」
晁(これは)
呉(…!)
史「今年も、よろしく頼もう」
宋「!」
史「九紋竜!」
晁「見事!」
呉「窮地に追い込むことで、これだけの芸にするとは…」
宋「史進に宣言通りの刑を」
史「!?」
晁「許したわけではないのか」
呉「妥当ですな」

晁蓋…優勝は林冲の一日を鼠の形態模写で表現しきった白勝だ!
宋江…笑いのツボが全く分からない芸人殺し。
呉用…史進の罰について、朱武とアイコンタクトを交わした。

史進…神機を得たが、いかんせん芸の質は向上しなかった。

鉄塔

鉄塔…夜な夜なフレッシュマンの衣装を見に纏うフレッシュマンたちが、ある時はポーズの練習。またある時は絶叫して帰るので、管理人は毎日辟易しているらしい。

23.
趙安「私は、あなたを好きでした、呼延灼将軍」
呼延灼「!」
趙「!?」
呼「…」
趙「何をするのですか!」
呼「…」
趙「この高さから突き落とされて、私でなければ死んでいました!」
呼「…」
趙「童貫元帥と呉達殿に言いつけてやる」
呼「…照れだ、趙安」
趙「呼延灼将軍!」
呼(やはりしぶとい)

趙安…フレッシュマンの嗜みに落ち芸があったのを忘れていました。
呼延灼…外から這い登ってくる様は身の毛もよだつな。

楊令伝

遊撃隊

遊撃隊…新旧遊撃隊副官による綿密な話し合いや根回し等の調整業務は、気が遠くなるほど長期に渡ったという。

人物
班光(はんこう)…そしてついに彼らは決起した。

24.
班光「史進殿の不着衣による下腹部露出及び我々への理不尽な着衣の禁止、下腹部露出の強制反対!」
兵「史進殿ハラスメント反対!」
兵「シシハラと呼ぼう!」

史進「…」

呉用「あれはなんだ、楊令殿」
楊令「班光が史進に反抗しているな」
張平「プラカードの主張が痛々しいですね」

史「…」

班「シシハラ被害者の会会長のお言葉です」
杜興「…」

史「…」

杜「私は元々李家荘の執事として、李応殿に仕えておりました」
班「…」
杜「それが梁山泊人事による理不尽な配属により、遊撃隊副官に配属されたのです…」

楊「それは酷い」
呉「矛先が私に向かってきた」
張「そうなのですか?」

杜「以来私はシシハラ被害で心を穢され、李応殿人形に話しかける日が増えたのです…」
班「…」

呉「余計だ」

史「…」

楊「史進?」

史「一言だけ、言わせてくれ」

杜「…」
班「…」

史「人は自ら穢れるのであって、他人に穢されるのではない」

杜「!?」
班「!?」

宣賛「」
呉「おう、宣賛」

史進…泰然と帰っていった。

班光…膝をつき肩を震わせて泣いた。
杜興…天を仰いで放心した。

楊令…これが言葉のもつ力だ、張平。
呉用…機嫌が悪いな、宣賛。
張平…史進がちょっとかっこいいと思った自分がすごく悔しい。
宣賛…とても聞き覚えのある言葉を、妄りに汚く利用された気がしたので

洞宮山

洞宮山…序盤のラスボスステージ。初期ステータスと初期装備でうっかり迷い込んだ者には、確実な死が手ぐすね引いて待っている大魔境である。

25.
顧大嫂「おい、老いぼれ」
杜興「なんじゃ、母夜叉」
孫二娘「そりゃ私だ」
馬麟「怒るな、孫二娘」
白勝「爺だから仕方ねえ」
顧「耄碌するには遅すぎるくらいさね」
扈三娘「李家荘の頃の杜興殿が見たら、何というやら」
杜「やめろ、扈三娘」
白寿「李家荘の時の杜興殿?」
杜「食いつくな、白寿」

扈「あの頃の杜興殿は…」
杜「やめんか!」
孫「黙らせろ、馬麟」
馬「♪〜鉄笛〜♪」
杜「ZZZ」
勝(すげえものを見た)
顧「…寝たら反応がないからつまらないね」
孫「起こせ、馬麟」
馬「…起きろ、老いぼれ」
杜「もう朝か?」
顧(マズいね)
孫(ボケ防止の鍼は打てないか、白勝?)
勝(お生憎様だ)

扈「あの頃の折り目正しい杜興殿は、一体どこへ行ったのですか?」
杜「史進の馬鹿に殺されたのだ」
馬「史進か」
顧「何をしているやら…」
寿「昔の杜興殿は、どれくらい折り目正しかったの、扈三娘?」
孫「食いつくね、白寿」
杜「おやめください、お嬢様」
寿「キモっ」
杜「」
馬(これはキツい)

顧大嫂…可愛い顔してあの子わりと…
孫二娘…やるもんだね、と…
扈三娘…そういうところあるんです。
馬麟…二度と行くのやめような。
白勝…言うまでもねえや。
杜興…この日は二度と起き上がれなかった。
白寿…王英の密会相手。ぶっちゃけ王英より扈三娘が旦那になってほしかった。

子午山

子午山…この山にいた者は、誰しもかけがえのないものを心の中に秘めている。子午山の者が集まった時は、それを忌憚なく解き放てるらしい。

人物
花飛麟(かひりん)…子午山ガチ勢の宴に当然の如く招かれたのは、嬉しかったんだけど…

26.
花飛麟「…」
鮑旭「子午山の川辺の石を渡る者の身のこなしの違い!」
楊令「…」
鮑「まずは初めての旅人」
馬麟「…」
鮑「・・!」
張平「www」
史進「3歩目で滑るんだよな」
鮑「続きまして魯達殿」
武松「顔がwww」
鮑「・・・・・」
楊「見事だ、鮑旭」
張「足の配置が完璧です!」
花(覚えてない…)

馬「…」
鮑「馬麟もいくか」
馬「…麓の村にある定食屋の店員が、麺を運ぶところ」
史「あそこかw」
張「いつも頼んでました!」
花(どこ?)
馬「ノ皿」
武「また顔がw」
馬「\皿」
史「指が汁すれすれなんだよな!」
楊「客が飯を食っているところが見えたぞ」
張「腹が減ってきました!」
花「…」

楊「よし…」
張「楊令殿が!」
史「魅せろ!楊令!」
楊「武松が砕いた岩の跡を見て、いつも怪訝な顔をしていた陶芸屋」
武「あいつかw」
鮑「お世話になりました!」
花(知らない…)
楊「王進殿〜」
史「いたいたw」
鮑「声が間延びしてました!」
楊「…?」
張「wwwww」
武「そんな顔してたのかw」

楊令…鉄板ネタは子午山ガチ勢にしか通じないからウケて嬉しい。
張平…やたら早口な野菜売りのおばちゃんの完成度に磨きがかかった。
鮑旭…魯達ネタが意外に豊富。
武松…すっかり笑い上戸。
史進…里の妓楼ネタは深夜に解禁予定。
馬麟…覚えてるか覚えてないかスレスレの人物ネタの名手。

花飛麟…何も分からない…

元ネタ

水滸伝

楊令伝

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今号も、お読みいただき、誠にありがとうございました!

中学生の頃から大好きだった、北方謙三先生大水滸シリーズのなんでもあり二次創作です!