キミハタラコスパ
「第1話 その瞬間ボクハ感じた」
その艶やかな髪の毛からはヴァニラの香りがする。ちょうど彼女の頭頂部が僕の鼻の下にあたるのだ。いつもは妬ましいだけの混み合った電車にいまは嬉しさを感じる。彼女の青のニットと僕のシャツが擦れ合う。
電車が不規則に揺れる。態勢を崩した彼女の肩を僕はとっさに抱く。
「大丈夫? 僕に掴まってて」
普段は引っ込み思案の僕がここまで積極的になれるのは、先ほどまで呑んでいたアルコールのおかげだろう。
彼女の手が遠慮がちに僕のおろしたてのシャツを掴む。
故意にではないのだろうが、彼女の華奢な指