「半魚人」

楽園のような海の中
宝石のようなお魚も
珊瑚やイソギンチャクの花畑も
不釣り合いな「アタシ、半魚人。」

誰にも見つからないように
今日も仄暗い洞窟で
息を殺して身を屈めてる
「アタシ、半魚人。」

優雅に泳げなくて
ボッチで海底をトボトボ歩く
「アタシ、半魚人。」

水かきじゃあなくて
大きな尾ビレが欲しかった
ギョロ目じゃあなくて
大きな瞳が欲しかった

真夜中にこっそり
海面に顔を浮かべて
星空の美しさにあの子を重ね
卑屈になってゆく「アタシ、半魚人。」

岩場に腰かけて
美しい歌声で舟人を
惑わすことも知らない
「アタシ、半魚人。」

愛する王子のために
魔女と取引することも
泡になることも知らない
「アタシ、半魚人。」

人でも魚でも人魚でもない
世界を拒絶し続け 心まで醜い
「アタシ、半魚人。」

鬼歯じゃあなくて
八重歯が欲しかった
鱗肌じゃあなくて
艶肌が欲しかった

真夜中にこっそり
海面に顔を浮かべて
星空の美しさにあの子を重ね
卑屈になってゆく「アタシ、半魚人。」

どれだけ妬んでも…
どれだけ僻んでも…
どれだけ憎んでも…
どれだけ恨んでも…

何も変わらない…

「アタシ、半魚人。」

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