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第59回魔界を終えて。魔界はそれでも続いていく。

令和の記念すべき第一回目となった第59回魔界〜誇りPride。

世界的チェリストのMarikoさんは迎え、新キャラクターとして夕顔の娘・朧役として、根倉稜珠を起用し、新曲「孤城の鬼」を初披露と、盛り込みまくりの回であった。

その一方で、ゴールデンウィークが挟んでいたため、リハーサルがなかなかできず、事実上、本番の前々日、前日のリハーサルでつくりあげるという不安だらけの回でもあった。

終えてみると、結果としてはクオリティにおいては過去最高の部類の出来であったように思う。

ストーリーが大きく動いていることもあり、それぞれのキャラクターの立ち位置というか心情がしっかり描き出されていることが、戦いそのものの切なさや激しさをしっかり表現できたことが大きいのかもしれない。

それと、Marikoさんの存在が、魔界の音楽にさらなる力を与えたこともある。

シルク・ドゥ・ソレイユをはじめ、マドンナなど一流のステージを知り尽くした彼女の存在感は、魔界をひとつ上の世界に連れて行ってくれたように思う。

佐々木小次郎こと小林信一さん、三好清海こと青羽ひかりとのバトルシーンは、今までに感じたことのない「威圧感」と「崇高」さが会場を包んでいた。

若い青羽にとって今回の経験は得難いものになったはず。

ワタシにとってもMarikoさんとつくりあげたあの空間はこれから目指す世界を明確にしてくれた。

なによりも嬉しかったのが、世界の一流のショーに参加しているMarikoさんが「また魔界に出たい」と言ってくれたことだ。我々の目指す場所が近づいている実感が湧いた。

魔界は不思議な場所だ。

そこに関わるすべての人間がおのれのすべてを捧げないと魔界は存在しない。

まだまだ不安定であり、まだまだ足りないものもある。

しかし、確実に進化している。

まもなく出産をむかえる滝の方は、演じる浦えりかさん自身がまもなく出産を迎える。演じるキャラクターと本人が完全にシンクロしながらストーリーが進む。現在の世界と魔界がシンクロするからこそ、そこに我々が日常のような予定調和のない不確実な世界を生み出す。

それ自体が、魔界が唯一無二なものにしているのだ。

作家ですらコントロールできない世界だからこそおもしろい。

59回の連続モノなどまさに狂気の沙汰だ。はじめて見た人にはなんにもわからないだろうとよく言われる。

「もっとわかりやすい方がいい。」「一話完結がいい」

ところが。

魔界の輪は確実に新しい魔界の民を増やしている。

それは、現実という不確実で不透明でわかりにくい世界に我々は生きているからだ。そしてその世界にわれわれはしたたかに順応して生きている。59回目を始めて見ても、そこに横たわる文脈を感じることはできる。そしてもう一度触れるとその文脈をつかみ、さらにもう一度触れるとその文脈を理解する。そういうことはわれわれの日常だからだ。

現実の世界に感じる「怒り」「苦しみ」「愛」「友」「絆」「切なさ」そういった渦巻く感情を劇的に増幅して極彩色のように目の前に再現するのが魔界。

誰にでもとっつきやすく、誰にでもわかるものではないかもしれない。

だからこそ、そこに価値がある。

誰にでもわかるものは、他にたくさん素晴らしいショーでも存在する。

魔界は唯一無二の世界でなければならないのだ。

連続モノはそういった我々の日常をキャラクターに「時間」という強烈な舞台装置でもある。ミュージシャンが、タレントが、レスラーが「演じる」ことができるのはキャラクターと自分を重ね合わせる「時間」という魔法があるからだ。

そうして、次回、魔界は60回を迎える。

そして、その回の中心にいるのは魔界の初期の物語「大三島伝説」のふたり、鶴姫と越智安成である。

戦いはすでに始まっている。

次回は6月21日。

第60回魔界〜嫉妬Envy

今からでも大丈夫。

魔界の世界に足を踏み入れてほしい。


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