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小説 人蟲・新説四谷怪談〜六


田宮伊右衛門は雪の中、四ツ谷の左門町に向かっていた。



伊東忠兵衛が最期に残した言葉。



「蛇山に岩はいる。」



伊右衛門は岩を求めていた。


伊東忠兵衛と梅は自分から岩を奪った。




いや。



伊右衛門自身を奪ったのだ。





伊東忠兵衛の妹、梅と祝言を挙げ、伊東家に婿入りしたのはひとえに岩を取り返すためであった。



刃を突き立てる前、梅は言った。



岩自らが身を引いたのだと。



そして、岩と伊右衛門は所詮結ばれることのない運命なのだと。



むしろ岩を救うために伊右衛門と自分は結ばれたのだと。




そう梅は言った。




今一度、伊右衛門と岩が会うことは終わりのない地獄の業火に身を委ねることになる。



そうとも梅は言った。




その梅の心臓に伊右衛門は刃を突き立てた。



それでもいい。


伊右衛門は思った。


岩と共にいることが地獄であるならば、それが自分の運命なのだと。





雪は深くなっていた。




闇が白の世界に変わっていた。





伊右衛門もまた白い世界に絡めとられていく。







伊右衛門の視界に雪に埋れた庵室が映っていた。





まもなく







岩に逢える。










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