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小説 続ける女〜session5


「脅迫状?」


「そうです。吉良に宛てられた脅迫状がいまなお送り続けられいるのです。」

岩村は唇が乾くのであろう。何度も紅茶で唇を湿らす。



「吉良の葬式が終わって、吉良の家族が私にその脅迫状を持ってきたのです。吉良の死後も毎日欠かさず脅迫状は送り続けられているのです。内容もその文字も・・私が吉良に見せてもらったものと同じものです。」



「それじゃ、すぐに警察に届ければいいじゃない。」

玲子は至極あたりまえの質問を投げかけた。


その質問に岩村は激しくうなずく。



「もちろん、届けました。吉良の幽霊騒動を調査してくれた警察の方にすぐに届けたのです。しかし・・。」



「しかし?」



「なぜかとりあってくれないのです。」



「とりあってくれない?」



「きっと質の悪いいたずらだろうと。笑って真面目にとりあってくれないのです。」



「ふーん。。」

玲子は少し首を捻った。




「警察も不親切ね。。」




「吉良の件は、省庁のみならず政府の中でもとかく噂が尽きない一件です。吉良が何か国家の機密を知っていたとか、なんらかの不正の事実を掴んでいたとか。そういうきな臭い噂が絶えない中、これ以上騒ぎを大きくしたくないとの判断があるのでしょう。もう、この件は終わりにしたいと。。」




「それでもあなたは気になるということなのね。」




「気になるというか、眠れないのです。」

岩村は苦悩に満ちた顔になった。





「最後にあった吉良はこの世のものとは思えぬ姿でした。骨と皮だけで目だけがギラギラして、髪の毛は抜け落ち・・どうしたら人間があんなに壊れてしまうのか。。そこまで吉良を追いつめたものはなんだったのか・・今も送られてくるあの脅迫状が悪戯だとどうしても思えないのです。。」


岩村はため息をつき、親指の爪を噛んだ。

行儀の良い行動ではないが、おそらく不安になったときのこの男の癖なのだろう。



「そんなこと考えていると神経が逆立って一睡もできないのです。私も吉良のようになってしまいそうで・・。」



「それで古川さんに相談したということね。」



「はい・・。」

岩村は頷いた。




「警察が動いてくれない以上、相談できるのは中津川玲子さんだけだと古川さんが仰って。。」



「買いかぶりだと思うけど。」

玲子は苦笑した。




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