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百八の煩悩 七煩悩目

経験に勝るものは無し
百聞は一見にしかず
行ってやってみることが大事
例えそこが地獄でも

上阪した時に
住む所を決めずにカバンひとつで飛び出したので
一週間ほど、友達のバイトの寮にお世話になった
バイト先の寮なので部外者立ち入り禁止
なので、バイト終わりの友達と合流して
一緒に寮に入り、1時間ほどしたら
友達は彼女の家に行く、自分は朝まで眠る
たまに見回り的なのがあるから
ノックされても絶対に開けない事が約束だった

そんな3日目ぐらい
いつものように友達は彼女の家へ
出て行ってすぐ、コンコンとノックしたので
あれ?忘れ物か?と開けたら
関ジャニの横山の目をめちゃくちゃ細くした知らない人が立っていた
「あれ?誰?」
うわーバレたーやべーと思って咄嗟に
「あ、今、友達買い物行ってて」
と言ったら
「いや、ここ部外者立ち入り禁止やで」
と言うので
「あ、すいませんちょっと寄っただけなんで」
と出て行こうとしたら、腕をガッと掴まれ
「うそやでー冗談やん」と言ってきた
「あれか?君も沖縄の子やろ?すぐわかるわ、顔がもう沖縄やもん」と横山っぽい奴が言う
初対面だが、本能でわかる

ウザイ

すると、横山はズカズカと中に入ってきて
タバコをプカプカ吸いながら
「あれか?自分も沖縄から来たん?」
「あ、はい・・」
「あーそれで、ここで寝泊まりしてんねや」
「いや、今日だけなんですけど」
しまった!思わず寝泊まりしてるって言ってしまった・・
「あーそうなんや、ほんならまだ仕事とか決まってないやろー」
「そうすっね・・」
「めっちゃいいわ!丁度な俺と一緒に仕事してくれる人探しててん」
「そうなんですか・・」
「あのな、人をな紹介してな・・・・・

ペラペラと横山はしゃべるが
どう聞いても、ねずみ講
どっからどう聞いても、ねずみ講
沖縄でいったら、ハイハイ学校

そうか、こいつはバイト先の寮の部屋をまわって
ねずみ講の人を探してるのか

「どうなん?やってみぃひん?」
「いや、すいません、まだ来たばっかりで友達も知り合いもいないんで辞めておきます」
「ほな、来週説明会があんねん、説明だけでも聞いてくれへん?やる、やらんは任せるから」
「いや、説明会も大丈夫です」
「あーほんまかーほんなら社員さんに言わなあかんわー・・」

うぜぇ
マジでうぜぇ横山
脅しじゃねぇか

「わかりました、説明だけ行きます」
「おーほんま!ありがとう、また近くなったら連絡するわー」と帰って行った
すぐ友達に連絡したら
その横山は地方から出てきた奴を勧誘するので要注意人物でバイト先からはほぼクビ状態という
だから、行かなくてもいいよと、、

まぁでも何事も経験
経験に勝るもの無し
あえて、行ってみることにした

夕方の5時ごろ
指定された場所に行ってみると
自分を合わせて五人ほどいた
皆気の弱そうなオドオドした感じ
そこに横山が颯爽と現れて
全員と反吐が出る絡みとスキンシップしながら
説明会の場所に向かった
会社のビルが立ち並ぶ間に挟まれた
4階だての小さいビル
エレベーターで3階に上がったら
ワンフロアで扉を開けて部屋に入ると
パイプ椅子が並んでて100名ぐらい座っている
正面にはホワイトボードに登壇
もういかにもなねずみ講スタイル
キッチリと座らせて説明会スタート
真っ黒に日焼けした顔に真っ白な歯
短髪でピチピチのセットアップに尖り革靴で登場
おもむろにマイク握るやいなや
開口一番「皆さん夢ありますか?」

うぜぇ・・

話しのクライマックスで涙する始末

キッツイ、キッツイなぁー

で、ようやく終わったと思ったら
まさかの起業した社長の登場

マジかよーまだあるのかよー

金金のネックレスした社長が
「皆さんはお金持ちにはなれません」
うぜぇー
「何故なら、お金持ちになる方法を知らないからです。」
うぜぇーうぜぇー
「皆さんは今日ここに来てくれました、私達と一緒にやってくれたら今日から金持ちです」
MAXうぜぇー
あとは、手に汗握る畳み掛け
右に左に動きながら身振り手振りで勧誘勧誘
「それでは今から契約書がありますのでやりたい奴は来て下さい!」

えー説明会じゃないじゃん勧誘会じゃん

契約書があるテーブルに綺麗なお姉さん達が座っている、そしたら1人が契約しますとお姉さんの所に
そしたらお姉さんが胸元を見せながら両手で握手する。それに舞い上がったのか契約書を書いてしまう
そしたら社長含めて黒光り集団が「おめでとー!!第一歩を踏み出した君は偉いっーー!」
「我々の仲間になってくれましたー!!」と会場のボルテージが上がり異様な雰囲気に
そしたら、ひとり、ふたりとアリ地獄にハマっていく・・それからドンドン契約していく

ヤバイなーと思って
トイレ行くふりして帰ろうと思って
扉の方に行ったら
暗証番号入れないと開かないタイプ
黒光りの男が来て「トイレ?」
「はい」と言うと
暗証番号入れて開けてくれた
よし!と思って帰ろうとしたら
黒光りがついて来る
え?と思ったら
「あ、暗証番号入れないと入れないのでトイレの前で待っておきます」

マジか・・
逃がさないパターンか・・
仕方なく戻ると
もう半数以上が契約書を書いてて並んでる状態

うわーやばいなー
すると横山が来て「どう?やってみぃひん?」
ふざけんなよ、説明会じゃないだろ
と思いながら
「タバコ吸いたいっす」と言ったら
ベランダへ
ベランダで横山とタバコ吸いながら
3階か、、飛び降りれないなー
右下に階段の踊り場
いざとなったらあそこに飛び降りて、、と
逃げ道をシュミレーションして会場に戻る
横山が「まぁ最初は俺も一緒にいるから、一緒にやらへんか?お前とやったら多分すぐ幹部クラスにいけるでー」

なんだ幹部クラスって
バカかこいつ

「いや、やらないです、帰っていいっすか」
私もいい加減イライラしてたので半ギレで言う
「なんでやねん、めっちゃチャンスやで」
「いやいや、説明だけって聞いてるんで」
「金持ちなれるんやで」
「別になりたくないんで」
「ほんなら、バイト先の寮の社員さんに言うで」
「あぁ?いいっすよ別に」
「ウソやん、冗談やん、マジなんなや」
横山の細い目がより細くなって
「わかった、ちょっと社長の話し聞いてなっなっ」と言うと横山は金金社長のとこに行く

マジかよ、こいつ、、、

すると社長とNo.2みたいな奴に呼ばれる
会場の隅の低いパーテーションで仕切られた
ソファーに座らされ横山含め3人に囲まれ説得される
私は頑なに拒み、やりませんの一点張り
すると今度は脅し
お前みたいな奴は負け犬になる
人旗揚げにきたのに何も出来ない
男としてしょーもない などなど
黒光り短髪に顔面ギリギリに積められる
しかし
その頃の私は若さも相まって意外に血気盛んでして
「や、り、ま、せ、ん」の一点張り
横山は「お前ありえへんで、社長と副社長が直々に話ししてくれるってないで」

知らねーよ!!バカかこいつ!!

今度は3人で泣き落とし
社長もカバンひとつで出てきて大変だった
副社長も荒れてた自分を拾ってくれた
人間は必死になったらなんだって出来る

必死になるにしても
ねずみ講に必死にならねーわ!!

「や、り、ま、せ、ん」

呆れた社長が「もう、ええわ、おい静かに帰せ」
とボソッと言うとどっかに行ってしまった
副社長が横山にアゴで扉の方を指して
チッと舌打ちしてどっかに行った

はぁーとため息した横山が「なんなんお前、ダルいわー」

なんだこいつ
でも、なんか勝った感がして
ダル顔してる横山をニヤニヤして見て
「お前、何も言わんと行けよ、エレベーター乗ったらすぐ帰れよ」
「は〜い」
暗証番号入れて扉開けて自分だけ出す
閉めながら「チッ」と横山が舌打ちしたので
大きい声で

「お疲れ様で〜〜す!!」

「おまっ、、」
と言って慌てて閉める横山を笑いながら帰った

それから数年後
全国放送のニュースで
大阪のとある会社が詐欺の容疑で逮捕
あの社長と副社長だった
夕飯のご飯を吹き出して笑った

あれから横山はどうなっただろう
あの説明会の後に友達が
横山は出禁になったって聞いてから知らない
取り敢えず
お前はしょーもないと言ってた奴が
逮捕されるんだから、お前らの方がしょーもない

でもその時に話術と集団心理で人は簡単に動かされるんだと思った
その時の経験がバンドに活かされるなんて思いもしなかった。
人生の伏線はどこにあるかわからない
ツライ過去も経験と思えば経験値になる
1番は話のネタになる

でも大事なのは
最後は流されず
しっかりと危険信号を持って
自分の芯を持つこと
それが出来ないなら意味がない
しょーもない人間やで

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