救うものは、一筋の光の矢だけ

向かう道の先に、一筋の太陽光がある。
両腕に抱えた荷物の重さはもう感じない。

家族はとうの昔に捨て去った。
ーー失われたもの、自らの意思でなく奪われたものを
記憶からでも排除するのに、長い長い年月がかかった、それだけの話だ。
けれどこの両の肩に、両の腕に、両の足に、一本一本の指の先々に、
たまに温もりが宿り思い出が浮かぶ、
しゃぼん玉が徒に幻に、浮かんでは消えるように。

残酷だ。

道の両側には広い草原が続く。
草木は気ままにのびのびと生え、生い茂り、満足そうにしている。
別に僕だって、この道をゆく必要はない。
降りて自由に、原っぱを歩いてもいいのだ。

けれど、道は、道という道は一本しかない。
荷物を捨てることも叶わず、僕はこの道をゆくしかない。

なぜなら、この道がまっすぐ示すその先だけに、一筋の太陽光が差している。
ここ以外に道はない。これ以外に道はない。
諦めの境地が、僕の一歩を救う。進ませる。
空のグラデーションが滑らかに、舐めるように鮮やかだ。
その一番眩しい光の源が、そこから発せられる光源の矢が、
僕の精神の根底を貫き、視界を刺し、
道を照らす。
僕はただ歩く。ゆっくりと吸い込まれるように。

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