風の(強い)日

2018年のフジロックは風(と雨)が強かった。

社会人になってから、財力を武器に体力を犠牲にしてフジロックフェスティバルに行くようになった。2015年から参加し今年は4年目。毎年共にテントで過ごしていた会社の同期S氏に加え、今年は更にS氏と仲の良い同期が1人加わる予定だった。3回経験し、ステージ間の移動や装備、事前準備にも慣れてきて、問題なく楽しめる……はずだった。

4年目の細々とした買い出しをそろそろ始めようかとしていたフジロック3週間前、S氏から突然の連絡が来た。
「フジロックに行けなくなった」
どうしようも出来ない理由で、私もきっと同じ立場だったら諦めるだろう理由だったから、受け入れる以外の選択肢は無かった。S氏の連絡はとても嬉しいものだった。おめでたい。そして、当然の流れでS氏と仲の良い同期の不参加も決まった。

S氏からの連絡により問題が発生した。3度のフジロックでは、S氏の3人用のテントをお借りして2人でのびのび過ごしていたが、いくら貸してあげるよと言って頂いても私1人には広すぎるし、1人で建てるのは非常に大変だろう。このタイミングで一緒に行こうよ休み取れよと言える友人はさすがにおらず、私は慌ててモンベルの一人用テントを購入したのだった。行き帰りの車は異動前の部署の皆様にお世話になった。わざわざ寄り道してもらうという図々しさを発揮したので、車内では喋り倒すという技を発揮しておいた。

こうしてテント問題と車問題を解決した2018年のフジロックは、数日前から台風がど真ん中に突っ込んでくる予報だった。第1回のフジロックのブログや記事を読み、震えながらも、新潟出身者の「苗場に来る前の山々で台風なんて大したことなくなるから」という言葉を信じていた。前日には台風の進路は西に逸れていたが、万全の雨対策をして挑んだ。

1日目の一人テント設営は事前に自宅で準備したおかげで難なく達成した。
大問題だったのは2日目の深夜であった。

風の強い夜だったが珍しく深夜も元気だったので、ルーキーでも観ようと裸体を観始めた私であった。しかし、その後慌ててテントに戻ることとなる。ルーキーのステージがぶっ壊れそうな暴風雨になったのである。女性テントエリアに戻った私は目を丸くした。

テントが倒壊している。

幸いにもそれはペグダウンの甘かった他のテントであった。私のモンベルちゃんはびくともしておらずほっとした。テントに強い風で叩きつけられる雨の轟音を聞きながら何とか寝ようとしたのだが、風が強く吹く度に、至るところから女性の悲鳴とペグ打ちの音が聞こえる地獄絵図で、私のテントも飛ぶのではないかと不安で仕方なく、午前3時ごろまでほぼ眠れなかった。

今回急遽テントを購入することになったので、私はネット検索をしまくり、高いものから安いものまで数時間かけて調べまくった。結果、今後数回レンタルすることになるなら買った方が良いということと、昨年S氏のテントで張りが甘かったせいで浸水したことを考慮し耐水性が良いものを選ぶ、と決めた。そして購入したのはモンベルのクロノスドームだった。

眠れなかった私はテントを買うまでの経緯を思い返し、モンベルちゃんが他のテントがぐわんぐわんになっている中、びくともしていなかったことを思い出した。そして心に決めた。『私はモンベルを信じる』

その後、私はようやく眠れたのであった。信じる者は救われる。

翌朝、倒壊したテントやびりびりに破れたテントをいくつも見た。私は思った。この風と雨を乗り越えられたのだから、今後のフジロックは絶対に大丈夫と。リスナーとしてだけではなくキャンパーとしても成長させてくれたフジロックフェスティバルには頭が上がらない。

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