推しは恋愛対象になり得るか

2~2.5次元を愛して早24年と少し。これからもそう生きていくと思っていたら、最近精神の4分の1のみ置いて活動している3次元において「おや?」と思う出来事があった。ちょっとかなり混乱しているため自分なりに整理していきたい。

①転職先の先輩との出会い

新卒で営業職として入社した前の職場で精神的に参り、体調に支障をきたすようになった為、三ヶ月のニート期間を経てハローワークを活用して転職。(この経緯もいつか自分用に記したい。)
週4のパートで働くことになった会社(緩いルート営業のような形)は約三ヶ月ほどの研修期間を経てから独り立ちするらしく、それまでは他の先輩方に同行して学びながら引き継ぎをする仕組みとのこと。主に4人の方と同行するけれど、メインは同い年の男の先輩だった。
紹介された時の率直な感想は『なぜflumpoolの山村さんが目の前に居るんだ?』(flumpoolという4人組アーティストについてはGoogle先生が誰よりも詳しく教えてくれるぜ!!)
目算で身長180cm、マッシュっぽい黒髪、少し垂れ下がった瞳。
兎にも角にも、あまりにも自分の性癖どストライクの見た目をしていたわけだ。基本的に二次元を愛するが故にリアルのイケメンに耐性がないし接触機会も皆無。そんな自分が仕事を教わるにはちょっと眩しすぎやしないか社長、とマスクから見える部分だけ100点の笑顔を貼り付けた。(ここまで0.0003秒) 

②初めて遭遇した人種

この山村さん(山村さんではない)は恐ろしい人だった。まず未経験の業種であり、上下左右全方位においてド素人のド新人でド緊張している私に車内で気さくに話してくれた。
山村さんは正社員で入社4年目だけれど、「年齢が同じだからフランクに話してください。なんならタメ口でも良いですよ」と笑い、私の出身地や学生時代の話、山村さん自身の話で会話がぽんぽん弾んだ。
前の職場で、口が軽い人の見極めを誤ったせいで悲惨なことになったことを伝えたら、私に辛い想いをして欲しくないからと、今後関わるであろう会社の社員さんやパートさんの名前、特徴、注意点を教えてくれた。雰囲気を掴みやすかったし、会話する時の心構えもできてすごく安心した。
私が必死にメモしていると、「すごい真面目ですね!僕なんて最初全くメモ取らんくって色々忘れてお客さんに散々迷惑かけましたよ~」と自身を茶化しながら私を評価してくれたり、対お客様での色々な体験談を共感できたり、同じ目線で優しく接してくれた。これはきっと同い年だからこそ為せる事だと思うし、山村さんが他人への思い遣りに溢れた人だという証明だ。
共通の趣味があることも嬉しい誤算だった。山村さんは学生時代から野球部に所属していて、今もたまに誘われて地元の友達や先輩達と野球をするらしい。私も昔から祖父と父の影響で野球観戦が好きなので、実況席で解説を聞いている感覚で球種についてだったり球場の雰囲気だったりを聞くことができた。あとダイヤのAトークが成り立ったのまじで感動した…。ダイヤを人と共有したの初めてだぞ…。
また、広く浅く漫画やアニメを観ていて、結界師やらダレン・シャンやらケロロ軍曹やら、まさに俺たちの青春アニメを懐古し、「懐かし~!!ってえ、もうそんな年経った!?」と己の年齢に衝撃を受けたり。
また、同行している日は他の社員さんに誘われて外で昼食を頂いたり、公園でコーヒーと煙草片手に仲良い先輩達と話したりするけれど、昼食を毎回必ずご馳走になってしまう。社会人の先輩としての義務感なのかもしれないが、喫煙・トイレ休憩で立ち寄ったコンビニでも飲み物を買ってくれるので、さすがに申し訳ないと断っても聞き入れてもらえない。
「同行している期間だけはこれくらいさせてください!」
「私スマホのPayPayで買えるので本当に気にしないでください!大丈夫です!」
「もうはと海さんは財布もスマホも持って来ちゃダメです」
といった具合に引いてくれないのだ。感謝と申し訳なさの狭間でメトロノームのごとく揺れる日々。
山村さんは基本的に人を下げない。相手を否定しない。自分と合わない人でも良い意味で「まあいっか」と受け流し、引き摺る事はあっても大体は楽観的だ。そして人の長所を見つけるのが上手で、褒め言葉を誰にでもすっと差し出せる。しかしあまりにも理不尽な事に直面すれば、直属の上司である部長にもきっちり意見を伝えるらしい。その辺りの匙加減が上手いから、うっかりミスしてもルーズでも周囲に愛されている。とあるベテランのマダム先輩曰く『無害の天然ちゃん』。まさに言い得て妙である。たまに出る「次の所重くて面倒臭いからちょっとドライブして戦闘態勢整えます」「部長のお腹、あれ三週間目だな」「はーーあのお客さんクセ強いんだよなーあーやだ」などという年相応の人間らしい素の言葉さえ微笑ましい。
今まで優しい人にはたくさん出会えてきたけれど、こんなに全方位に優しい人と出会ったのは初めてである。

③『推し』なのか?

出会って数日で三年くらい同じクラスの同級生のような感覚で話せるようになった山村さんに、日を追うごとに自分の中で『好き』という感情が積み重なるのも最早自然の摂理と言えよう。なんせ『好き』と思うポイントだらけなのだ。過去のやんちゃ話(これに関しても改めて記したい)も、喫煙も、社員さんへのいじりも、食にこだわりがなく自炊能力が限りなくゼロな点も、押しに弱いところも、ちょいちょいルーズなところも、若白髪も丸ごと愛せてしまう。
そこで、はたと気付いた。
『まるで二次元の推しではないか』と。
推しという言葉は広義的に捉えると『人に勧めること、推薦』の意だろう。そして私の中ではそこに『人に好きになってもらいたい対象』という意を付け加えている。つまり、推しには『誰かに好きになってもらいたいから勧めます』というメッセージを込めているのだ。
この理論でいくと、私にとって山村さんは推しである。
山村さんが周囲に愛されているのを実感すると真冬に外から帰ってきて炬燵に入った時のような気持ちになるし、世界中の人に山村さんを知ってもらいたいと思う。例えば山村さんがディスられたとしたら磨いてきたこのライムを鋭利なナイフに替えて菊の花を捧げる。
この感情は歴代の推しへの感情と全く一緒で、私は初めて三次元で推しと出会ったのだと衝撃を受けた。そうか、だから私は山村さんと同行する日の前後は浮かれているし、仕事中にやたらニヤける顔を必死に引き締めているんだ。こんなに山村さんのことを考えるのも全ては推しだからこそ。


④なーんて納得出来たら楽だったな人生マイライフ

Q.『いやもう山村さんは推しとして解決したんだわ。これから会いに行けるアイドルとしてその存在と同じ空気を吸えることに感謝を捧げながら生きていくんだわ。なのにお前はなぜそんな悶々としてんのよ』
A.『他の女性社員さんと会話する姿を見ると嫌だし、他の社員さんに山村さんとの会話の内容を教えたくないから』

嘘だろお前。
いや、え?嘘だろ。だって散々山村さんを色んな人に教えたいとか褒められたら嬉しいとか言ってたくせに山村さんについて共有するのが癪ってそれ推しとちゃうやん。

と、これが本当の矛盾かって思い知らされる感情の嵐がやってきたのだな。これに私は悩まされている。
同担を見つけると泣いて喜びハグを求めるのがこれまでの私のデフォルトだったのに、それが素直に出来ない時点でその存在は私にとって推しではない。もちろん、対象を推しとした上で『同担拒否』主義の人も居るが、今回の件は単純にその4文字で片付けられないと分かっている。
なぜなら、山村さんには多くの友人が居るが、その友人達との話を聞くと純粋に楽しそうだなと思うだけで、羨ましいとは思わないからだ。しかし他の女性社員さんの口から山村さんのエピソードを聞いたり、山村さんが他の女性社員さんや若い女性のお客様を褒めていると、不思議なくらい羨望とモヤモヤが先立つ。
これはつまり、
『私の知らない人と楽しい生活を送ってるのは喜ばしいけど、私の近くに居る女の人との関わりはあまり受け入れられない』
さらに言い換えると、
『実際に恋愛に発展する可能性のある話は嫌』
ということになる。

おいおいおい。これじゃあ私が山村さんに恋愛感情を抱いていることになる。付き合った人は居るが長続きせず、結局三次元は二次元に勝てないと齢20そこそこで結論付けた私が、このタイミングで恋愛を始めるだと。解釈違いも甚だしいわ。
しかも、億が一恋愛感情だとして、この恋(あたためません)はあまりにも無理ゲーである。なんせ山村さんがメインで同行して引き継ぎをしているのは、いずれ山梨へ転勤する可能性が高いからなのだ。私がこんなに山村さんと関わる時間が多く、ビタミンコラーゲンを浴びていることの裏を返せば、山村さんとの別れが迫っていることを示している。

⑤『推し』であってほしい

もう、そのまんま。この船に乗ったところで長閑で緑が美しい島には辿り着けない。見えるのはただただどこまでも続いていく水平線だ。
とかなんとか言ってもあんまイメージ沸かなかったので顕現したての初期刀まんばちゃんが池田屋に単騎出陣して完全勝利Sを収めるのと同じくらい無謀ということにしよう。うん。ものすごく分かりやすい。ものすごく無謀だ。
故に、山村さんはこれから『推し』として認識しようと思う。ただただ自分が傷付くだけの未来を避けるためには、山村さんに『推し』でいてもらうほかにない。推しならばたとえ転勤して離れ離れになっても、生きていることが私へのファンサになるわけだから、心の平穏は保たれる。

ここまで綴ってきて、少し気持ちが整理できた。今後の山村さんへの感情のやり過ごし方、そして推しに誇ってもらえるファン…後輩になるため、真面目に仕事を学びたいと思う。
温かい言葉や行動は全てファンサだと捉えて内心でキンブレを振りまくるぜ。


こんな日記とも言えん文章を読んでくださった方がいれば私はその方にもキンブレと団扇を振ります。幸あれ。




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