隠喩なのか

隠退するとか言って亡くなったのだけれど、次の日には本として生き返る、円環のなかに身を投じたのであるが、円環とは無限だろうか。
ボルヘスは「書かれたものは残り、言われた言葉は飛び去る」≠「書かれたものは持続し、口頭で言われたものは移ろいやすい」、、、、いいえ、すなわち「書かれたものは、死物だから取り残され、口頭で言われた言葉には羽のようなもの、ある種の軽やかさが備わっている」ので、自由に伝播する、とか言って、そうでしょうね。言葉になった人間は黙りこくったまま、そう、彼は本だから、自死願望も少しは魅力がある、というか、読書家は死体嗜好家が多いっていうことと通底する。皮膚を、あるいは乾涸びた粘液を、表紙として装丁した詩集を寄贈したい。羊皮紙なんてのもそういうこと、願望を内包しているのかもしれない、愛する羊だとかね、ある医師が愛人の皮膚を詩集の装丁に、と出版社に依頼したのも頷ける、栞は陰毛だったとか、デュシャンの「髭を剃ったモナ・リザ」の髭とすり替える偽装とか、多分、メビウスの輪を解剖学者は切り取った瞬間、あの輪は自ら修復する。


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