白井健康

未来短歌会彗星集/2011年歌壇賞次席 /「オワーズから始まった。」(書肆侃侃房、ユニヴェール) /橄欖追放にも掲載されています。 http://petalismos.net/tanka/kanran/kanran210.html

井戸川射子の「川をすくう手」を読む

井戸川射子の「川をすくう手」を読む 2019.3.18

学校、うん、教室にいるとぽつんと、一つの島に一人づついる気持ちになる、それがきれいな島ならいいけれど。

「島」は喩であり、一人づつ座っている机と椅子のことで、そこに各々の孤立感がある。しかしそれが「きれいな島ならいいけど。」という表記がすぐには理解され難い。孤独感や孤立感もきれいならばいい、視覚的、表面的なきれいさを井戸川は求めている

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ライナースリップ

詰所と宿舎を往復するバイクが無免許、アクセルが切り裂く快感にアメリカは、と。

カーブするのって、牧草地のたまてばこだってこと右手しか配列されてない。詩歌だって隙間を埋められたがっているんだし、かくかくの保定枠が暴れだした。仕方なく放してやったのがいけなかった。縫合のあと武蔵境まですぐに帰らなかったわけで、飛行機の窓や座席の見取り図は切れ切れの記憶のよう、壁があるかないかのところで削ぎ落す。時計台

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気づかれるために

底辺が天井変わる喪失と横の、まるごとプリオンになる
それは海、から始まった贈り物みたいに覚悟していたはず
会話とか水に溶けないものは消え殻だけになった風景である
どうなのか あなたを見分けられるのか追い越してしまったわたしは
たまごから孵化する途中悲しみのひとつひとつは括られてゆく
岸からも沖合からも輝きの、漏れてるのが目視できない
半分の半分の半分の半分が半分/立入禁止
体は宇宙だからまだわずか

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井戸川射子の「テンダー」を読む

井戸川射子の「テンダー」を読む 2019.3.8

井戸川射子は31歳の女性、兵庫県在住、国語教師をしているらしいということくらいしか私は知らない。従って、この詩集に書かれているテキストだけをたよりに読んでみた。(私は基本的にロランバルトの作者の死の崇拝者でもある)

テンダー

題名の「テンダー」とはどういう意味か調べてみた。

tender:炭水車、はしけ、世話をする人、看護人、物が柔

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剥がれない川

指先で手羽先を分け離すとき風を含んだ骨はそらいろ
そちらへと橋を渡して手をとれば年齢不詳の子どもでいられる
遠いもの大きくなるのがもう嫌で砂浜みたいに簡単がいい
鍋底に並びきれない醜態を煮詰める所作のうつくしいことよ
懸命に懸命にってコンビニの灯りの辺りで頼りなくなる
すぐ横で触れていたかった心臓に創った魚の詩を聞かせてる
暗誦できる言葉と湯冷ましの水をふたりのようにそのままにする
日常のふりをし

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岬まで行かなかった

詰所と宿舎を往復するバイクが無免許
アクセルを、切り裂く快感にアメリカは、と
カーブは牧草地のたまてばこへ、知らない
保定枠は軽く、暴れたりして仕方なかった
縫合のあと武蔵境まで一気に帰らなかったわけで
飛行機の中の窓や座席の記憶だけが軽い
壁があるかないかの違いだけで削ぎ落とした
時計台は改装工事中で
窓二重で、北国ならではと新鮮だ
抜糸は江島さんにしてもらった
体温を足指にかざせば崇教真光

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